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希望光をさがして  作者: 須雄田 脩二
17/45

17.小さな木箱

ヘムリット洞窟道を歩くことニ時間程度経とうとしていた。

ちょうど中間地点という看板と休憩場所があったので、ウェル達はそこで昼食を摂ることにした。

今日の昼食はムシャールを出る時に購入したハムサンドである。

「なんだかセインジュの人達はほとんどが怪しそうですね。」

ティードは片手を頬に添えて、いかにも考えていますという表情をしていた。

「どういう事だ?」

「魔法の類が使える事です。だって、僕の知る限り古代民族の血が流れている人にしか使えないはずです。

それなのに教会関係者は使えているみたいですし。でも、もしかしたら古代民族しか使えないのが偽りなのかもしれないですね。」

「まあ、俺たちにはまだまだ知らないことがあるさ。確かにあの街の人達は怪しく見えたけどな。」

「セインジュは、今もある街なんですか?」

「どうだろうな、あれから行った事がないから分からない。場所的にはルードの隣、ドゥリードの隣になる。」

「ドゥリードの隣って…領土拡大のために争いを起こして有名なジルバースですか。そういえば、ウェルさんが戦った黒騎士も、魔法みたいなのを使っていたのですよね?」

「言われてみれば、あれは魔法だったのかもしれないな。」

「もしかしたら黒騎士は、ジルバースから来たのかもしれないですね。」

ハムサンドと一緒に購入したグレープフルーツのジュースを飲むティード。さっぱりとした味で疲れを癒してくれる。

「そうだとしたら、ジルバースは魔法が使える者だらけという事か。どんどんややこしくになってきたな。」

「そうですね。そして私達は、とんでもない事に巻き込まれてしまっているのかもしれないです。」

「なるべく関わりたくなかったが…まあ、ルードに行ったら真相がはっきりするはずさ。」

「ところで、ロウさんがまだ出てきませんけど?」

「ああ、もうそろそろだ…」

昼食休憩を終え、二人はまた歩き出す事にした。


「これを俺に?」

「ああ、俺のリーダーからあんたに渡して欲しいと頼まれた。ただの箱に見えるが、あんたはこれが何か分かるのか?」

飯処の端席でウェルとヴェルクードは向かい合って座っていた。机の上にはウェルがリーダーから渡された木箱が置かれている。

ご飯の時間はまだ早いので、二人はお水だけ頼んで話している。

ヴェルクードは目の前の木箱をじっと眺めてからウェルの方を見た。

「ふむ、何らかのメッセージが封印されている気がするな。」

「メッセージ?触れないでも分かるものなのか?」

「なんとなくだ。以前似たような箱を見た事があって、そいつにはメッセージが封印されていた。これも同じような物じゃないかと思っただけだ。」

「なるほど、じゃあ詳しく調べたら内容が分かるんだな。」

「そうだな、内容が気になるのか?」

「知らないままなのはもったいない気がしただけさ、無理ならあきらめる。」

ヴェルクードは箱を手に取って、くるくると回しながら眺める。

「そうだな、一週間程度はかかる。」

「調べ終わって余裕があったら、俺に手紙で報せてもらいたい。」

ウェルは紙に住所みたいな情報を書き、ヴェルクードに渡す。

「了解、気が向いたら送るよ。しかし、こんな物を調べるのは久々だ。」

「ところで、あんたはリーダーとどういう関係なんだ?」

「腐れ縁ってやつだ、昔に色々とあった。」

ヴェルクードは窓から外を眺めながらそう話した。ウェルは自分で質問したにもかかわらず、それ以上興味が湧かなかったので詳しく聞かないことにした。

「そうか、じゃあ確かに渡したぞ。」

「気を付けて帰れよ。もし、興味があったら街の端にある門の上に行ってみるといい。良い物が見れると思うぞ。」

「他に買い物があるし、その後で思い出したら行ってみるさ。」

ウェルはヴェルクードと別れると、リーダーに頼まれた物品をそれぞれの店で購入する。

そして、軽く昼食を食べてすぐに街を出る事にした。

街を出てしばらく歩くと、遠方に大きな生物が崖の上にいるのを発見した。

「見た事ない魔物だな。簡単に迂回する場所もないし、さてどうするか…」

少し近づき木々の影に隠れて観察すると、背丈は人間の倍くらいで手には長い爪を持ち、背中に羽が生えている事が分かった。

「ガーゴイル、こんな所にはいない魔物ですね。」

「あんたは…また気配を隠して近づかれるとは。」

ウェルの後ろには、セインジュで出会った長髪の男がいた。

「まだ相手はこちらに気づいていません。ここは無理してでも迂回して、やり過ごすのが最善策でしょう。」

ガーゴイルは大きな岩の上で羽を閉じて座っている、休憩でもしているのだろうか。

「俺もあんたの案に賛成だ、あんな奴は相手に出来ない。」

「遠回りですが、戻る事にしましょうか。」

二人は歩いてきた道を引き返し、分岐路まで戻ってきた。そして、崖とは離れる方向の道を進む事にした。

ウェルは見知らぬ者が横に並び歩いているので、頭の中で色々と考えてしまい落ち着けなかった。

「お互いの素性も分からないのはなんですし、自己紹介でもしましょうか。私はロウといいます、東の国からやってきました。薬を売りながら旅をしています。」

「俺の名はウェルだ、少し西にある砂漠の街で生活している。」

「ウェルさんとおっしゃるのですね、見た所十歳ちょっとでしょうか?」

「そんな所だ、あんたは三十代か?」

「そんなに歳をとっているように見えますか。まあ見た目のせいなのでしょうかね。これでもあなたと十も変わらないと思います。」

ロウは前髪を鬱陶しそうに横にかき分ける。ウェルは話し方のせいもあるのではないかと思った。

「それで、何故あんな所にいたんだ?」

「実はあなたをつけていました。街で教会の人と会っていたでしょう、それについて話をしたいと思いまして。」

「なるほど、人の行動を覗くなんて悪い奴だな。」

ロウは少し笑ってみせた。

「あの時、あなたは教会の人に小さな箱を渡していましたね?」

「ああ、そうだな。」

「あの箱はイーナの封箱と思います。」

「イーナの封箱?何だそれは?」

「詳しく話すと長くなります。簡単に言えば災いを封じ込めた箱、それも強い魔力を秘めていると思います。」

「強い魔力、開けても良い物なのか?」

「内容次第ですが…教会に属する人達ならば見た時すぐに分かったと思います。」

「ヴェルクードは嘘をついていた可能性があると…」

「まあ、渡してしまった後なのでどうする事も出来ないですけど。」

「リーダーは知っていたんだろうか。」

ウェルは少し空を見上げる。ロウもそれにつられて顔を上げた。

「あ、あれは!」

空に黒い物体が浮かんでいるのが見える。その物体はウェル達へと近づいていた。

「さっきのガーゴイルじゃねぇか、どうやら気づかれていたようだな。」

「もう逃げ切れそうにないですね、やれやれ。」

危険な状況なのに、ロウはあせる様子もなく会話をしているので、ウェルはやっぱり只者じゃないと思った。

ガーゴイルはウェル達の数十メートル離れて地上に降りた。遠くからでも鋭い眼差しで狙っているのを感じた。

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