13.洞窟へと進入
ヘムリット洞窟道への道には、活き活きと木々が生い茂った林道がある。
ムシャールの人にとって、木の実を収穫したり、家畜を放牧したりする貴重な場所であった。
道の横には川があり、綺麗な水が流れていた。生活水としても使えそうである。
まだ朝早い時間ともいえるので、空気が冷たく感じた。
ウェルとティードは身体を温めるため、少し速く歩いていた。
「なんだか、リネアとミシャールの関係が良いとは見えなかったな。」
「そうですか?特に問題がありそうに感じませんでしたけど。」
「なんだか敵対意識を感じた。長く生きている感ってやつかな。」
「なるほど、僕も気配を感じれるようになりたいです。そういえば、昨日ウェルさんが見せてくれた体術は僕も出来るでしょうか?」
「まあ、ティードの努力次第だ。最初は皆同じラインに立っている。行動次第で弱いままか、強くなれるかが分かれていく。」
「確かにそうですね、自分を守れるくらいには強くなりたいです。」
「よし、毎晩少し鍛え方を教えてやる。本格的にはシェリーちゃんを助けた後だな。」
「ありがとうございます、よろしくお願いします。」
「今日はヘムリット洞窟道を抜けて、その先にある平原で一晩過ごそうと考えている。
確か休憩出来る小屋があって、少しは休めるだろう。」
「洞窟に道を作るなんて、すごい技術ですよね。」
「そうだな、人は時にすごい事をやってのける。」
ウェルは空を見上げた。空には綿のような白い雲が点々とあり、その間から太陽が林道を照らしていて、ウェルは心地いいと感じた。
「日が暮れるまでに抜けたい、夜道に出る狼は厄介だからな。」
「ヘムリット洞窟道も行った事があるのですよね。」
「当たり前だ、この国のほとんどを歩いている。」
「洞窟内は危険はないでしょうか?」
「そうだな、人が掘った洞窟だし、入り口には番人もいる。半円にくり抜かれた穴がずっと続いているだけの道だ。
こちら側からは比較的安全に王都ルードへ向かうための手段だから、しっかりとした道じゃないと国に影響が出るだろう。」
「凶暴な野生動物とかはいないんですね、ちょっとホッとしました。」
「まったく、いったいどんな想像しているのだか…」
小一時間歩くと、林道も坂道が多くなり、山が近づいてきた。
遠くにはオブラール山も含まれる険しい山々も見られる。
肌に感じる気温が少し下がったと感じた時、洞窟の入り口が見えてきた。
入り口には灰色で重たそうな鎧を身に纏った人が三人、外に置かれているテーブルを囲んで座っていた。
通行人をチェックしている国の兵士だろう。三人はウェル達に気づくと、視線を向けた。
「入り口に到着したな。もし、黒騎士が国がらみの奴だったら、俺達は要注意されている可能性がある。
その情報がここにも伝わっているかもしれないが、顔までは伝わってないだろう。まあ、警戒しながらやり過ごそう。」
「わかりました、気を付けます。」
ウェル達が兵士達に近づくと、兵士の一人が槍を手に取り立ち上がった。
「ここで通行確認をしている。君達はどのような用件でここを抜けるつもりだ?」
王都から少し離れているので、見張りも適当に見える。どうやらウェル達の顔はバレていないみたいだ。
「良い掘り出し物を手に入れたので王都に行って捌こうと思ってな。」
ウェルはそう言うと、背負っているリュックを縦に揺さぶり、ガサガサと音を鳴らした。
「行商人か?一応、中身を一つ確認させてもらってもよいか?」
兵士が怪しんでいる様子は無いが、ティードは面倒な事になりそうだと感じた。
ウェルはリュックの中から四角い箱を一つ取り出し、蓋を開けて見せる。
「これは璃光石といって、王都近辺では手に入らない鉱石だ。」
ウェルが見せた鉱石は黄色の透明で加工されてはいないが、太陽の光できらめいている。
「なるほど、貴婦人が見たら喜びそうな物だな。」
「他にも病に効く薬とかを運んでいる。」
「わかった、通っていいぞ。王都までの道程、気を付けるんだな。」
兵士はウェル達に道をあけた。
「どうも。」
ウェルとティードは、ぺこりと一礼をして洞窟へと進んでいった。
ウェル達が洞窟道に入ってから、兵士の一人が首を傾げた。
「なあ、さっき通った弓を持っていた奴って、王都からの通知がきていた例の田舎者なんじゃないか?」
「ああ、そういえばそんな連絡があったな。確か、要注意人物だったか?」
「なんか王都に国外からの奴らを守る為に、警戒対象は王都に近づけさせない話だったか?」。
「もしあいつがそうだとしても、たいした奴には見えなかったぜ。それに、面倒な事はごめんだな。」
「違いねぇな、まあ一報でも入れておくか。」
洞窟の中はランタンに火が灯っていて、少々暗めだが道を最低限照らしていた。
人工的に作られた洞窟だが、壁や天井は崩落を防ぐ為、しっかりと鉄製の板などで支えられていた。
「うわ、天井は低いし、道も狭いですね。人が交差出来るのが精一杯じゃないですか。それに明かりが暗くて、奥がはっきりと分かりません。」
「仕方がねぇだろ。ここは元々、王都とムシャールを繋いでいなくて、どこかの賊が隠し財産として掘った穴だったって話だ。それを利用して抜け道にしたんだから、通れるだけ有難いと思わねぇとな。ここがなかったら山を登るしか方法が無いんだからな。」
「それに息がしにくいですし、早く抜けましょう。」
「風の通りも悪いし、空気がうすくなっている訳だ。さっさと行きたいところだが、奥が暗いからな。しっかりと見て気を付けて歩けよ。」
「ここは光を出したいところですが、人目に付くといけないですしね。」
「魔法はさすがに駄目だな。」
二人は一列になって慎重に歩いている。二人が鳴らす足音は遠くまで響いていた。
「それにしても、特に詮索される事は無かったですね。」
「あいつらも面倒な事に巻き込まれたくないんだろう。自分達が本当に危ない時しか行動しないさ。」
「なんだか、国って全然統治されていませんね。それなのに納税させるなんてひどい話です。」
「身分の低い俺らが反乱を起こしても勝算は無いしな。でも他の国からの干渉にはまだまだ甘い所がありそうだ。」
「自分の身は自分で、ですね。ところで、先ほどは上手いことやり過ごせましたね。あんな石を持っていたなんて。」
「あれはロウから借りたんだ。珍しい物だから、いいタイミングで使ってくれってよ。」
「ロウさんは未来を予知出来るのでしょうか。そういえば、ウェルさんとロウさんはどの様に知り合ったのですか?」
「なんでいきなりそんな話を。俺とロウか?そうだな…」




