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希望光をさがして  作者: 須雄田 脩二
11/45

11.王都への疑惑と二日目の出発

「ああ、ミシャールさん。」

女性はミシャールに近づいて顔に触れる。女性の表情はどことなく落ち着きがないように見える。

「こんな時間まで起きていたのか。」

「皆様が心配で眠れませんでしたので、怖いと思いながらも様子を見にきました。」

そういう女性の姿は使用人の服のままだった。

「ミシャールさんは何をしようとしていたのでしょうか?」

「まだはっきりとしていない、意識が戻ったら詳しく聞かせてもらうつもりだ。」

「よろしければ、あなたの名前を聞いても良いですか?」

女性は目を少し見開き、手を口に当てた。

「まだ名前を言ってなかったですね、申し訳ございません。私はリネア=ハーレットといいます。」

「リネアさんですね。ミシャールさんは闇魔術を行っていたようです。」

「闇魔術ですか、そんな事をして何をしようと。」

リネアはまだ落ち着いていない様子だ。

ウェルは何か隠し事でもあるのかと思ったが、気にしない事にした。

ガタッと音がしたので三人はミシャールの方を向く。

「ようやく起きたな。」

ミシャールは目を開くと周囲を確認した。

「そうか、やられたんだな。」

ミシャールはウェルを睨みつけるが、戦う意思は無さそうだった。

「おとなしくなったな、さっきの威勢はどこにいったのやら。」

「事が失敗したんだから、今更あがいても仕方がない。」

「まあいい、ミシャールといったな。何故こんな怪しい事をやっていたんだ?」

ウェルは机上にある白い紙を指差す。

「私は願いを叶えたかっただけだ。」

「願い?」

「…父の病を治そうと。他に理由はない。」

「ミシャールさんのお父様は医者もわからない病気と聞きました。」

ミシャールはリネアの声に反応し、リネアが立っている方に顔を向けた。

「リネア…。」

ミシャールの目は憎しみをこめて睨んでいるように見える。

「なるほど、不治の病を治すために闇との契約をしようとした訳だ。こんな危険な事をして、他に方法がなかったのか?」

「それは、私の勝手だ。」

「闇魔術はどこで知ったのですか?」

「王都に居た時、怪しげな男から方法を聞いた。」

「ふ~ん、どんな姿だったんだ?」

ウェルはミシャールの言葉に嘘がないか、探りながら聞いていた。

「確か…、黒いローブを全身に纏っていて顔がはっきりと見えなかった。手に紋章みたいな印が付いていたのは覚えている。」

「紋章ですか、その紋章の形は覚えていますか?」

「いや、黄色い印だったとしか、覚えていない。」

「そいつとはどの様に会ったんだ?」

「外を歩いていたらいきなり声をかけられたんだ。「君の願いを叶えられるかもしれない。」と。」

「とても怪しい方ですね。」

「私もそう思ったが、内容を聞いているうちに試してみたくなった。」

「そいつとは何回か会ったのか?」

「いや、それっきりだ。その時に呪文の紙を渡された。」

「なるほどな、ある程度は分かった。もう暴れないな?」

ミシャールはこくりと頷く。

「じゃあ縄をほどいてやるよ。」

ウェルは素早く結んだロープを外した。

「闇魔術は自身にも危害が及ぶかもしれません。今回は契約前だったので中断したようですが…。」

「そうだな、怪しい事はしない事にするよ。」

「病気だったらいい人がいる。東洋から来た奴で、色んな治療法を知っている。治せるかはわからねぇけどな。」

ミシャールの口角が少し上がった。

「ありがとう、期待しておくよ。」

「あの、話がまとまったようなので、そろそろお部屋に戻りましょう。サグラド様のご迷惑になるといけないですから。」

サグラドという名は老人の事ではないとウェルは気づいたが、気にしない事にした。

皆で書物室を綺麗にして、それぞれの部屋に引き上げた。


「ミシャールさんが言っていた紋章ですが、僕は見たことがあると思います。」

随分と夜も更けているが、すぐには眠れそうになかった二人は少し話す事にした。

「そうか、俺はないな。」

「それと、あの闇魔術ですが、あの儀式を行う事で魔界と繋がってしまうと思われます。」

「魔法だったり魔界だったりと、この世界には恐ろしい事が多すぎる。」

「深淵の執行者との契約前で本当に良かったです。遅かったらどうなっていたか…。」

「あんな簡単に闇魔術が行えるって事は、王都はもっと危険そうだな。」

「そうですね、情報はいち早く知っておくべきですね。」

「色々と準備しておくにこした事はねぇな。さてと、ちょっと寝るとするか。明日も長い時間歩くしな。」

「はい。」

ティードはこれからどんな体験をするのだろうかと、不安や期待が入り混じっていた。


ウェルとティードが眠りについた夜明け前、洋館の一室で女性二人が向かい合って話していた。

一人はリネアで、もう一人は青い短髪が特徴的な、背が高い女性である。

「今回は失敗させる事が出来て良かった。ミシャールがどこまで知っていたかは知らないが…。」

「はい、私達で解決してもよかったですが、いいタイミングでした。

 あの二人はなかなかの腕を持っているようです。若い方は闇魔術を少しは知っています。」

「私も中庭から少年を見た。闇魔術を知っているという事は、そいつの方が気になるな。」

「アルネア様、黒騎士が村で出会った狩人は、あのウェルという方で間違いないかと。」

「そうか、少女を助けようとしているのだな。少し仕事を増やしてやるとするか。」

「王都に行かせるのですね?」

「そういう事だ。では、図書館でウェルという奴とコンタクトをとる事にする。」

「かしこまりました、準備をしておきます。」

「頼むぞ。」


翌朝、ウェル達はこの日中に洞窟道を抜けようと考えていたので、洋館を朝早くに出る事にした。

洋館の門では、昨夜食事を共にした老人と使用人が二人を見送りにきていた。

「世話になった、また何かあった時はよろしく頼む。」

「泊めて頂いて、本当にありがとうございました。」

ウェルは片手を軽く上に挙げて、ティードはペコリとお辞儀をした。

「いえいえ、困った時はお互い様です。またぜひお立ち寄り下さい。」

老人は使用人をチラッと見た使用人はウェルの方に近づく。

「ウェル様、こちらは国立図書館への行き方を書いた地図になります。」

使用人はウェルに一枚の紙を差し出した。

相手に不快感を与えない最適な動作をして手渡す使用人、ウェルは紙を受け取る。

「何から何までありがとよ、また会おう。」

「お気をつけて、旅のご武運を祈っています。」

ウェル達は洋館の人達に軽く会釈をして、広場へと歩き出した。

「そういえば、ティードが中庭で見かけた女はミシャールだったのか?」

「いえ、ミシャールさんみたいに髪は長くなかったと思います。誰だったのでしょう。」

ティードは首を少し左に傾けた。

「まあ、その女が何をしていたのか分からないが、深く考えるのはよそう。

 それよりも国立図書館だ、この国ができる前の事を調べないとな。」

ウェルは貰った地図を取り出す、そこには広場を中心とし、町全体が描かれていた。

図書館の印以外にも、所々に施設名称が記されている。

「えっと、図書館はパン屋がある道に入って二つ目の十字路だな。」

そういうとウェルは辺りを見回す。記載しているとおり、広場の角に小さなパン屋があった。

「あの道を行くんだな。よし、行くぞティード。」

「はい。」

今日の空も晴れており、青く澄み渡っていた。

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