さん
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「マリア」
マリアと久々に会ったセレクトは少し痩せていた。顔の右半分にある刺青のような蕀の模様も不気味な感じはなくとても似合っている。いつもなら護衛騎士のアルガンがセレクトと一緒にいるが、今日は老齢の騎士が付いている。それなら、今日はやっとゲームのエンドロールに入ったのかもしれない。アルガンは全てを呪おうとしたフローリアを退治した褒美に国王から叙勲されるため、その日はセレクトの護衛から外されるからだ。
「このノート、読めるかな?」
机の上に置かれたノートをマリアは手に取った。
フローリアの覚え書き? 悪役令嬢が断罪を避けるためにゲーム内容をノートに書き出して必死にフラグを折ろうとするのはよくある話だ。
パラ。捲ったページに書かれていたのはマリアが前世で使っていた日本語だった。
「分かりません」
攻略対象のことが書かれたページを見るふりをしながら、分からないと首を傾げる。凄く細かく書いてある。このゲームが大好きだったのだろう。
「どこの言葉なのですか?」
パラパラと読むふりをしてページを捲って最後に机の上に置く。全く読めなかったというふりをして。
可哀想に。ここまでしていたのにバッドエンドなんて。
マリアは心の中で死んだフローリアを嘲笑った。
「………、そうか。陛下との謁見の許可がおりた。行こう」
マリアは喜んだ。やっぱり今日はエンドロールの日だったんだ、と。ゲームでは国王と会ってセレクトとの仲を認めることによって逆ハーレムのハッピーエンドとなる。
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