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マリアは苛ついていた。あの舞踏会から十日ほど過ぎた。マリアは王宮の一廓に軟禁されていた。
全てうまくいったはずだった。
この世界がアプリゲーム『君に幸せの花を』なのは学園入学前に思い出した。そして、自分がそのゲームのヒロインであることも。
そのゲームはいわゆるユルゲーと言われるものだった。選択肢を間違えても救済アイテムやお助けイベントが必ずあり、隠しキャラのルート以外は簡単にハッピーエンドに出来るゲームだった。
攻略対象は隠しを入れて五人。
王道ルートのセレクト王太子
セレクトの護衛騎士のアルガン
神官長息子のトルタ
教師枠の王弟ネルサ
隠しで悪役令嬢の兄キハダ
悪役令嬢はたった一人公爵令嬢フローリア
物語は突然聖女に認定された平民マリアが王家の庇護を受け学園に通うことから始まる。そのマリアの世話役として同じ学園に通うセレクト王太子が選ばれ、それに嫉妬したフローリアに苛められるという王道ストーリー。
隠しのルートが難しいのはキハダだけ卒業していて学園にいないから。だから、出会える回数がとても少なく会えても側に悪役令嬢のフローリアがいる。救済アイテムやお助けイベントも他のキャラに比べ格段に少なくチャンスを逃すと攻略出来ないキャラだった。けれど、キハダと仲良くなれると逆ハーレムエンドが凄く簡単に出来るようになる。
フローリアが同じ転生者だったためか色々と妨害があった。好感度が上がるまではメインイベントがおかしかったり、イベント内容が変わっていたり。救済アイテムやお助けイベントでどうにか好感度をあげ、隠しのキハダも引っ張り出し攻略することが出来た。フローリアが苛めてこなくてもそれっぽく思えることがあって、悪役に仕立てることも出来た。
フローリアを舞踏会でアルガンが殺したことで逆ハーレムで終わることが出来たはずだった…。が、『誓約の蕀』も『戒めの蕀』もゲームにはなかった。あの後、セレクトは右半身、キハダは左半身、刺青みたいに蕀の模様が浮き出ている。あれは誓約を守れなかった罰みたいなものらしい。約束事を守れない最低な人という意味になるみたいでセレクトは王太子、キハダは公爵の後継者、そのままでいいのかと問題になっていた。
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