20.5話『銀河帝国 2』
20.5話『銀河帝国 2』
木星衛星エウロパ
銀河帝国都市
帝都クリスタルウォーター
銀河帝国作戦本部
「皇帝陛下、コウノトリ、キャベツ畑、両方の爆発を確認。焦土作戦の完了です。」
一人の少女のクローン兵が淡々と告げる。
銀河帝国軍皇帝、ヴィンセントは椅子に座り、頬杖をついてその報告を聞いていた。
「そうか。」
その声色は怒りを感じ取れた。
焦土作戦自体はヴィンセントの命令によるものだった。
しかしながら、クローンの工場を2つとも失うという事は、国自体が小さい、銀河帝国にとって大きな痛手となった。
被害の報告を淡々とクローンが告げている。ヴィンセントは嫌な顔をしてそれを聞いていた。
「その中で極めて重要な報告が上がってきています。」
クローンは別な話題を切り出す。
「地球軍の新型機のパイロットが、元我が軍の"アルファ"体のクローンではないかと言う報告です。」
「交戦したグラディエーターの高等練習機のAIの識別によるもので、定かではないのですが、接触回線の際の音声識別がアルファ体のクローンと合致したそうです。」
ヴィンセントは頬杖をつくのをやめ、向き直り、
「どう言う事だ?」
とクローン兵に問う。
「皇帝陛下、我々クローン兵、少年兵団の者から裏切り者が出たと言う事になります。」
ヴィンセントは額に手を当てる。
何故だ?裏切り者?
そんなはずあり得ない。
あの後、戦線に出る、全てのクローン兵にマインドコントロールをかけなおしたはずだ。
しかし、コウノトリ、キャベツ畑も両方とも民間コロニーに偽装したコロニーだ。
座標を正確に知るものは銀河帝国にしかいない。
しかもアルファ体のクローン……
そこでヴィンセントは一つの結論に辿り着く。
「K-201……」
恐らく、ヤツだ。
クローンで、自我を持った報告があったのはヤツしかいない。
何らかの要因で生きていて、銀河帝国への叛逆を企ている。
それも、地球軍側について。
「おい。」
ヴィンセントはクローン兵に声をかける。
「火星付近宙域に待機させている全艦隊へ通達しろ。地球軍への攻撃を開始せよ。と。」
「おそらくファクトリーを潰した連中も火星基地攻撃に加わるはずだ。」
「かしこまりました。」
クローン兵は敬礼をする。
ヴィンセントは話を続ける。
「例のブーステッドは火星基地内で待機させろ。例の新型機を誘き出す餌にする。」
「そして我が軍の総力を上げて、例の新型機を破壊する。」
「我々に叛逆した事を後悔するがいい。」
「その最中、偵察部隊を月付近宙域へと送り込む。」
「どうせ連中は火星基地を取り戻せず、撤退するだろう。」
「その後すかさず月へと攻撃を仕掛ける。」
「さて。」
そう言ってヴィンセントはモニターを見上げる。
モニターには火星付近宙域に集結している銀河帝国軍の艦隊が映し出されている。
「全艦隊、攻撃、開始!!」
*
火星基地地下
工廠
銀河帝国軍新型機『マルス』
これは、火星基地、工廠で建造中であった、ストライカー・タイプ・マーズを銀河帝国が独自に改造した機体である。
コックピット内部
「あーもう、また待機?全く、やってられないわね。これじゃスコアを伸ばせないじゃない。」
少女の声がコックピットに響き渡る。
「パイロット、大丈夫ですよ。すぐに待機は終わります。」
機体のAIが告げる。優しい男の声だ。
「アンタ、ずっとそう言い続けてるじゃないの。つまらないわねぇ。もう一度戦闘シミュレーションでも起動しようかしら。ハイスコアを更新したいし。」
少女は不満げにそう言うと、バイザーを装着する。
「まぁまぁ、そう焦らずに。それでは戦闘シミュレーションプログラムを起動しますね。」
AIはそう言うと、戦闘シミュレーションを起動する。
激戦を想定した戦闘シミュレーション。
その中で少女は、本能のままにアームドを破壊していく。
その少女はブーステッド。
所謂、戦闘に特化した強化された人間。
機体とのリンク性能も他より遥か上を行く存在。
マルスは近接戦闘を極限まで高めた機体であり、彼女の感応があってこそ最大限に力を発揮する事ができる。
戦闘シミュレーションの最中、少女はこう呟く。
「戦争というゲーム、存分に楽しませて貰うわ。」
「さぁ早くいらっしゃい。K-201。」
「アナタを倒して、ハイスコアを更新してみせるわ。」
to be continued




