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宝石を創る少女

作者: 白愛若如

 取り合えず一気に書きました。

 お腹が空いた。


 何時もの日常が壊れたのは、私の宝物の入った箱が親に見つかってからだった。


 仕事の手伝いの合間、畑や川で珍しい石を見つけては箱にしまっていた。親や妹のモニー、村の人には理解してもらえなかったけど、動物っぽい形の石や透き通った石はお気に入りだ。

 毎日布で磨いていると、少しずつだけど綺麗になっていくからやり過ぎちゃう時もあった。


 親が言うには、透明な奴はガラスじゃないかって。モニーは、綺麗に光るガラスには少しだけ興味を持っていた。


 モニーの誕生日。私は、何時も笑顔で私の後ろを付いてくるモニーに贈り物をしたかった。

 だから、私の持っているガラスの中でも赤くて綺麗な奴を綺麗に磨いて渡した。


 手を切ったら危ないと思って角を砥石でちょっとずつ削った。かなり時間が掛かってしまったけど、間に合ってよかった。


 モニーは喜んでくれた。その笑顔が私は一番嬉しかった。


 その次の日。お母さんに呼ばれた。


「昨日みたいな綺麗な石って他にも持ってるの? 見てみたいわ」と。


 私は、嬉しくなった。興味を持ってくれた気がして。

 いそいそと木箱を持って来て一つ一つ手に取って見せた。


 妹の奴より少しだけ暗いけどそれでも十分に綺麗な赤いガラス。ちょっぴり黒い粒みたいなのが入ってる青いガラス。中に虫さんが入ってる黄色っぽい奴。


 お母さんは、真剣な表情で見てた。ちょっと怖いなと思った。


 お母さんに、一つ上げようと思った。

 お母さんは、ずっと真剣に選んでいたけど。最後には、青いガラスを取った。


 それから暫くして、偉い人が村に来た。年に一度だけ、麦を取りに来る。麦を渡す代わりに、魔物や盗賊が来たら助けてくれるらしい。


 そして、見てしまった。お母さんが偉い人に青いガラスを渡してるのを。

 理由を聞いてみたら、今年は麦の量が少なくてその分だと言って取られてしまったらしい。


 偉い人は狡い。そうやって全部持っていく。私はお母さんにも喜んでほしかったのに。

 しょうがないから、緑の石をお母さんに上げた。


 緑の石は、お母さんに青いガラスを渡した時よりも透明で綺麗になっていた。

 お母さんは吃驚してた。


 寒くなってきた頃。また偉い人が来た。

 今度は私に用がある様で、石を拾った所を案内して欲しいらしい。


 あ、赤いガラスだ。

 偉い人は、拾ったばかりの赤いガラスと私を何度か見比べている。

 隣にいた護衛の人とも何か話してる。


 話し終えたらこの場所からは興味を失ったみたいでどうでもいいといった感じの顔で村に戻るぞとさっさと行ってしまった。


 村に戻ると、お母さんが護衛の人と話しているのが見えた。護衛の人の手にはお母さんに渡した緑のガラス。


 お母さんまた取られちゃったんだ……。


 ぎゅっと手を握る。お母さんは、あの青いガラスを気に入っていた。また拾えるかは分からない。

 

 青いガラスをお母さんに上げたい。


 そう思ったら、何も握ってなかった方の手に違和感があった。

 手を開くと、今までとは比べ物にならないくらい綺麗な青いガラスがあった。

 それは、もう宝石みたいで光り輝いていた。


 何で? さっきまで川で拾った赤いガラスしか持ってなかったのに。


 でも、いいや。これでお母さんが喜んでくれる。

 走って行って。お母さんに渡す。


 今までとは違う輝きの青いガラス。偉い人と護衛の人はそれに食いついた。

 お母さんから奪う様に取って。何かを渡している。


 お母さんは、それを見ると目の色を変えて喜んだ。

 私が渡した時よりも嬉しそう。そんな鈍い金色の方がいいんだ。


 お母さんはちらっと私を見た後、偉い人と話し始めた。何度も頷いてる。


 護衛の人が近付いてくる。


「貴族の所で働かないか? 美味しいご飯も綺麗な服も手に入るぞ」


 突然の話だった。

 私は綺麗なガラスや石を作るだけでいいらしい。


 私は家族といたかった。

 何より妹と離れたくなかった。


「娘をよろしくお願いします!」


 お母さんは違ったみたい。


 何で? それだけが頭を埋め尽くす。

 呆然とした私を護衛の人は引っ張って行って馬車に乗せる。気が付いた時には貴族様の屋敷に着いていた。


 見たこともない風呂に入れられて全身を綺麗にされる。

 何人ものメイドが私を世話する。

 

 ドレスを着せ、髪を結い、化粧を施す。


 なんちゃってお嬢様になった私は、広すぎるお部屋に案内された。この広い部屋は私の部屋になったらしい。


 次の日からは、綺麗な石を作り続ける生活。

 作れば作る程、私も家族も幸せになれると言われたら頑張るしかない。

  

 メイドから聞いた。あれはガラスではなく、宝石だと。つまり私は、宝石を生み出せる人。

 それがどれ程の価値を持つのか、メイドは教えてくれた。羨ましそうに話すメイドの顔は、昔見た少し怖かった母の顔に似ていた。


 日が経つにつれ、作れる宝石は大きくなってくる。貴族様は、大きさと透明度を重視してきた。濁った宝石を作ると怒られる様になった。


 もうここ数日はずっと怒られてばかり。


 大きさが足りない!

 色が薄い!

 濁ってる!

 宝石が脆くて加工が出来ない!

 気泡?が入ってる!


 貴族様は手を上げる様になった。ご飯も減らされた。

 メイドの人も、ご飯の時以外は来なくなった。

 作れる宝石の質はどんどん悪くなっていった。 

 

 ある日。モニーが屋敷に来た。

 おかしい。何故かボロボロの服で痩せてる。


 私が頑張ってたのだからきっと綺麗な服を着てお腹いっぱい食べてると思ったのに。


 貴族様が嘘をついてたみたい。


 モニーは、怒ってた。


「お姉ちゃんが頑張らないから。お父さんとお母さんは死んだ。私ももうずっとまともにご飯を食べてない。お姉ちゃんのせいだ!」


 そう言って、私を打った。


「ごめんなさい。でも、私は頑張って──「うるさい! いいから早く作れ!」ヒッ!?」


 モニーの豹変ぶりに何も言えなくなってしまった。

 モニーがこうなってしまったのも、私のせいなのかな。


 それからは、モニーがずっと私を監視してた。

 手が止まると顔を打つようになった。

 顔を腫らしながら私は宝石を作り続けた。


 モニーは、屋敷に来てからは一杯ご飯を食べられている様だった。貴族様に気に入られているらしい。


 私は、未だに一日パンが一つ。

 辛い。村での暮らしの方がまだ良かった。


 あの時、私が貴族様の所に行かなければ。

 いや、私が宝石を作る事が出来なければ。


 ただの村娘として普通に生活が出来ていたかもしれない。


 その日から、私の時は止まった。

 見てくださりありがとうございます。

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