009
その集落は、近づくだけで異変を感じた。
集落に見えたのは、朽ちたテントが見えた。
テントといってもボロボロのテントが見え、破壊された跡があった。
それは、紛れもなく廃墟だった。
「戦争でもあったのかしら?」
「さあ、だけど……」アルラネが指さしたのは煙だ。
その煙は、まだ夕暮れの空に向かって立ち登っていた。
「あのあたりに、何かいるかもしれない」
私は、ゆっくりと煙の方に向かっていく。
壊れたテントを抜けて、私は煙の方に近づく。
そして、テントを抜けた先に何かを感じた。
壊れかけのテントを背に、私は身を潜めた。
「あれって」
私がテント越しに、煙の後ろにいる何かを見つけた。
それは、二足歩行の魚だ。その種族のことを、私はやはり天界の文面で知っていた。
「サハギンね」
「うん」アルラネとヒソヒソと話をしていた。
サハギン、魚人とも言われている。
基本は海辺や川辺に生息することが多い亜族。
最も下位亜族と言われていて、リザードマンやマーメイドの奴隷として存在している。
「なんで、こんな所にサハギンが?」
ここは、火山のあるエムトレア山だ。
蒸し暑いこの山の中で、サハギンはそもそも種族適性がない。
だけど、この山に確かにサハギンは存在していた。
「それにしても?」
「気がついた」
私の背後には、すでにサハギンが姿を見せていた。
数は二十ほど。完全に囲まれていた。
その目は、赤く明らかに好意的な容姿はない。
「あ、いた」
「そうね、これは」
「逃げるっ!」
私はそのまま、走り出していた。
私に反応するように、サハギンは私を追いかけてきた。
「サハギンの手段って、女に対して襲うって本当なのね」
「いや、それは違う」
「違わないから」
私が必死に走ってく中、私の背中をかすめるように槍が飛んできた。
その槍を投げたのは、一人のオークだった。