007
次に目を覚ましたその場所は暑かった。
私は、暑さで目を覚ましていた。
私が倒れていたその場所は、焦げ茶色の地面だった。
「なんなのよ、ここ」
私は、そばにいるだろうアルラネに声をかけた。
しかし、私のそばには誰もいない。独り言のように、私の声が聞こえた。
単に蒸し暑い空気が、岩肌に見えていた。
(アルラネ。ああ、そうね。
あの子は一度、転移とともに消えたのね)
そういいながら私は目をつぶって念じる。
すると私の右手には、どこからともなく赤い薔薇の花が現れた。
そのまま、薔薇の花に声をかける。
「お願い、目を覚まして」
私が、魔力を注入する。同時に薔薇の花が、光り輝いていた。
輝く薔薇の花の中から、小さな体の女の子が姿を見せた。
それは、上半身が裸の幼女だった。
「うーん、いつみてもアルラネはかわいい」
「カルラ、呼び出すのが遅い」
相変わらず、悪態をついてくるアルラネ。
それでも私は、アルラネをなだめていた。
「まあまあ、それよりここは地上界……」
「うわー、本当に来たんだ!地上界」
アルラネは、私の話そっちのけではしゃいでいた、
周囲を見回すと、岩山だけが見えていた。
「ねえ、カルラ」
「何?」
「今は苦しくないの?」
「うん、地上界に入ってから呪いは収まっているわ」
私の体は今のところ異常はない。
むしろ、体が軽く感じられた。
「アルラネ、この辺はどこかわかるの?」
「うーん、どこだろう?わからない」
「アルラネは、地上界に住んでいた妖精でしょ」
「天界生活の方が、長いから」
アルラネは、堂々と胸を張る。
それでも私は、暑さの主を探していた。
「でも、暑くない?」
「これぐらいの暑さは、アルラネは平気だけど」
「いや、暑いって。これ」
私は汗を体や顔からかいていた。その汗が、全然止まらない。
そういえば、頭も少しクラクラしてきた。
どんどん温度が上がっている。
「アレ、じゃない?」
「あれって?」
「あの、上の赤いの」
アルラネが指さすと、岩の上の方から赤い溶岩が流れてきた。
それは、紛れもないマグマだった。
「マグマじゃない、逃げなきゃ」
私は、すぐさま走り出した。
幸いにも、ここは坂だ。
岩の斜面を下り、私は走り出す。
背中にはマグマが迫ってくる、私の足は正直早くはない。
「私は頭脳労働者なのに!」
叫んでもアルラネは、反応していない。
むしろ背後に迫るマグマをキラキラした目で見ていた。
「ちょっとアルラネ」
「あそこに崖があるね」
「え?」
私の目の前では、断崖絶壁が見えた。
私はなんとか足で止まろうとしたが、坂道の反動は止められない。
そのまま、私は崖の下に落ちていた。