005
エルムは、いつでも強気だ。
私によく突っかかってくる。女神になったのもほぼ同期だ。
腐れ縁というか、ライバルと彼女は私をよく言ってくる。
私にとっては、エルムは普通の同期の一人なのだが。
「エルム、いえ、オーガの守護女神がここに何しに来たの?」
「あなたの弱った顔を見に来たのよ。
弱ったライバルの」
「ライバルじゃないわ、私は」
「まだそんなことを、言っているの!」
不満そうな顔で、エルムは私をにらむ。
病床の私は、少し苦しみに解放されたのか体を起こしていた。
「エルム、知っていたんでしょ」
「ええ、オーガを選べば助かるということもね。
オークはまもなく滅びるわ、スクルド様の未来視は絶対よ」
「そうね」私はどこか他人事だ。
「バブルもそうだった、リザードマンの守護女神になって苦しんだ。
その結果、彼女は地上界に失踪した」
「わかっているわ」
それがリザードマンの守護女神になったバブルの現状だ。
今も、彼女の姿はどこにいるかわからない。
「カルラ、あなたは行かないでしょうね」
「地上界に?」
「そう、あそこは魑魅魍魎の住む世界よ。あんな所行ったら」
「それはそれで、面白いかもね」
私の言葉に、エルムは何かを理解した様子だった。
「馬鹿言っているんじゃないわよ、運命は変わらないから」
「それでも、私は女神であり続けたい。
地上界に住むオークの現状を見てみたい、そしてそれを救えるなら救いたい」
私の思う女神像は、曲げたくない。
世界のすべてを見守る女神としての憧れ。
それを実践し、地上界に失踪したバブル。
ならば、私も同じ女神としてその運命に抗いたい。
スクルドの未来視に抗うことはできなくても、その運命を少しでも変えたい。
「無理よ」
「無理じゃない!」
「あなたは、武器戦闘が苦手でしょ」
エルムの一言に、私はうつむいてしまう。
「まあ、私は魔法型の女神だから、いいの」
「その魔法だって、変な魔法を使うし」
「うるさいわね、エルムなんか魔法使えないでしょ」
私の指摘に、顔が赤くなるエルム。
「あたしは、肉体派女神なの。魔法なんか無くても、強いのよ」
「そんなの、今は流行らないわよ」
「なんですって!」
「何よ!」
私とエルムの目の前で、バチバチと火花が散る。
数秒間のにらみ合いの末に、エルムが私から目を離す。
「あんたは、愚かな女神よ」
エルムは吐き捨てるように言っていた。
そのまま、私に背を向けながら。