002
(KARURA’S EYES)
私は神殿に呼ばれていた。
光が後ろから漏れるが、前には闇がどこまでも広がる神殿。
ひんやりとしていて、肌寒さを感じるこの神殿。私はそこに立っていた。
ピンク色の長い髪に、白い花柄のワンピース。
ピンクのブーツをはいた若い女の私は、神殿の中で呼び出されていた。
その神殿は、天界の中で一番大きな神殿。
「あー、もう遅いじゃない」
私の隣には、赤毛の幼女がわめいていた。
上半身は裸だけど、体をイバラが纏っている幼女。
無論、彼女は普通ではない。
「アルラネ、もう少し待ちましょう。エルムだって遅れているだけだし」
「カルラは優しすぎるのよ。
アルラネは、我慢できない妖精なの!」
アルラネ、彼女は私が呼び出した守護妖精だ。
髪の色はローズレッド、つまり彼女は薔薇の妖精。
私に付き従うアルラネは、私にいくつもの力を与えてくれる。
「寛大なる心掛けよ、カルラ」
「はい」
そんな私、カルラの目の前に闇の奥から一人の人間が姿を見せた。
それは、白く長い髭の老人。だけどタンクトップを着ていた老人だ。
タンクトップから出る体の肌は、老人以上に筋肉質だ。
顔には風格があり、その顔は渋くても威厳があった。
「ガイア様、花の女神カルラはここに」私は膝をつく。
「おぬしの親友たる妖精は素直なようだな。
最も二十四時間も待たされておるのに、か?」
「ええ、私はそこまで時間に興味はありません。
待つのも苦ではありません」
「でも異常よ、二十四時間も待たせるなんて」
アルラネは、不満をはっきり言い放った。
私は、そんな小さなアルラネの頭を撫でていた。
「そうでしょうね。普通ならばそう考えるでしょう」
「何やら興味があまりない、心ここにあらずというわけだな。
『神の運命』の時間が迫るというのにか?」
「そうかもしれませんね」
私は『神の運命』には、反対だ。
私の親友が、『神の運命』を受けておかしくなってしまったからだ。
天界に住む神としては避けては通れないことだ。
ガイアの言葉は絶対で、逆らう神はこの天界に存在できない。
だからこそ、私はガイアの前で心を失っているのかもしれない。
私自身、やる気がないのだろう。
「でも、時間は無限ではない。それは天界であっても変わらない。
今回の『神の運命』は、二つから選ぶことになるのだからな」
「二つ?」
「八亜族の話は知っているな?」
「はい、地上界に存在する八の亜族のことですね。文献で読みました」
「ならば話は早い。今その中で二つの亜族が残っている。
『オーク』と『オーガ』だ」
その二つの種族のことも、私は知っていた。
オーク、オーガいずれも地上階に住む亜族の名前だ。
オークというのは、豚のような見た目の二足歩行の亜族。
オーガというのは、角が生えた鬼のような二足歩行の亜族。
互いに山のような場所に住んでいるが、文明は大きく異なる。
どちらの種族も、実際私は見たことがない。
「さて、カルラよ。オークとオーガ、おぬしはどちらかの守護女神になってもらうのだが」
「やっと来たわよ、あたしが」
そんな中、神殿の光が射す方から一人の女が姿を見せた。
ショートカットの茶髪の女が、腕を組んで堂々と姿を見せてい