表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

昨日は誕生日だった。

作者: 宇奈月 凪留

昨日は誕生日だった。

しかし、誕生日といっても特別何かあるわけでもないただの平日だ。

ただの平日に、僕は二十歳になった。


朝起きたら、落とした記憶はないがスマホのフィルムが割れていた。

朝から腹の調子が悪くて一限の講義に遅刻をした。

食堂で昼飯を食べるときに、少し奮発してケーキをつけて一人で食べた。

出かけようとして渋滞に巻き込まれた。

気になっていた人に、彼氏がいることを知ってしまった。


なんてことはない、どこにでもあるようなただの一日。

ありふれた、少し退屈でどこか憂鬱な一日。


夕飯を食べないまま帰りの遅くなった僕は、駅前の屋台でラーメンを食べ、コンビニで缶チューハイを買った。

年齢確認はされなかった。


缶を開ける。小気味の良い音が鳴る。

一口飲んだ。パッケージを見て思ったよりも、少し苦かった。


家に向かって足を進めながら、時折チューハイを啜る。

じわじわと染み入るような寒さが心地よい。


酒を飲んでいるという事実に、自分が二十歳になったことを再確認する。

十代が終わってしまったということは、言葉では分かっていてもしっくりとはこなかった。


一口、飲む。

はたち、はたち、はたち。

来月は成人式がある。

楽しかった高校時代が、気がつけば手の届かない程に遠ざかっている。


また、一口。

寒さのせいか、あるいは僕が酒に弱くないのか。

酔いは感じないまま、寒さと、不思議な虚しさだけが心に染みた。


いつのまにか、家が見えてきていた。

電気は消えている。家族は起きていない。

シャワーを浴びて布団に入り、不意に今日のことを思い返した。


なんてことはない、ただの一日だった。

昨日も、一昨日も、なにも違わない。


そういえば明日はクリスマスだ。

僕の隣には、今年も誰もいない。

去年と、何も変わらない。

昨日とも、今日とも、何も変わらない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ