昨日は誕生日だった。
昨日は誕生日だった。
しかし、誕生日といっても特別何かあるわけでもないただの平日だ。
ただの平日に、僕は二十歳になった。
朝起きたら、落とした記憶はないがスマホのフィルムが割れていた。
朝から腹の調子が悪くて一限の講義に遅刻をした。
食堂で昼飯を食べるときに、少し奮発してケーキをつけて一人で食べた。
出かけようとして渋滞に巻き込まれた。
気になっていた人に、彼氏がいることを知ってしまった。
なんてことはない、どこにでもあるようなただの一日。
ありふれた、少し退屈でどこか憂鬱な一日。
夕飯を食べないまま帰りの遅くなった僕は、駅前の屋台でラーメンを食べ、コンビニで缶チューハイを買った。
年齢確認はされなかった。
缶を開ける。小気味の良い音が鳴る。
一口飲んだ。パッケージを見て思ったよりも、少し苦かった。
家に向かって足を進めながら、時折チューハイを啜る。
じわじわと染み入るような寒さが心地よい。
酒を飲んでいるという事実に、自分が二十歳になったことを再確認する。
十代が終わってしまったということは、言葉では分かっていてもしっくりとはこなかった。
一口、飲む。
はたち、はたち、はたち。
来月は成人式がある。
楽しかった高校時代が、気がつけば手の届かない程に遠ざかっている。
また、一口。
寒さのせいか、あるいは僕が酒に弱くないのか。
酔いは感じないまま、寒さと、不思議な虚しさだけが心に染みた。
いつのまにか、家が見えてきていた。
電気は消えている。家族は起きていない。
シャワーを浴びて布団に入り、不意に今日のことを思い返した。
なんてことはない、ただの一日だった。
昨日も、一昨日も、なにも違わない。
そういえば明日はクリスマスだ。
僕の隣には、今年も誰もいない。
去年と、何も変わらない。
昨日とも、今日とも、何も変わらない。