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愛の共鳴  作者: MV E.Satow maru
第2楽章 2017年
7/24

2017年8月20日 追悼コンサート前半 『主よ、人の望みの喜びよ』

 悠二は観客席で祈里追悼コンサートを聞いていた。そういう会なのでブレザー着用。企画段階では色々手伝ったし、今日は搬入から椅子などの設営、受付までやった。


 演奏会が始まる前に祈里のお母さんとうちのオカンが寄ってきた。


「始まる前に中に入って。あなたはちゃんと聞いてくれないと」

「いやいや、おばさん。そうはいかないですよ」

「悠二、ここは私が見てるから、行け」とオカン。


悠二は抵抗したけど、もはやこれまで。従うしかない。おばさんが「さっさと入って」と言われて悠二もコンサートホールへ入った。後方に関係者席があったのでそこに腰をかけた。おじさんとおばさんは挨拶などあるので前方に席があったのでそちらへ進んでいかれた。


 司会の人の進行の中でおばさんとおじさんが簡単な挨拶をして、最初の奏者紹介をしているのが聞こえた。そして一瞬の静粛の後に演奏が始まった。


 最初の演奏はクラリネット・アンサンブルでバッハの『主よ、人の望みの喜びよ』。4人のクラリネット奏者の息遣いが優しい音色を産みホール内を包み込んで行く。


 今日の演奏は祈里の個人レッスンの先生である名張なばり菜穂子なおこさんが知り合いの方に声をかけてやってくださっている。またこの後にはクラリネットを軸としてフルート、オーボエ、ファゴットという木管四重奏、クラリネットとフルートの二重奏もプログラムに入っている。

祈里がバッハ好きだったのでオールバッハプログラムだ。宗教音楽に隠れた音楽旋律。あいつは音楽にまつわる背景の話や歴史も好きでよく勉強もしていた。


 気付くと数曲続いたクラリネット・アンサンブルの演奏が終わり拍手がホール内に響いていた。20分間の休憩だ。受付にいるオカンの所へ手伝いに行った。


「手伝うよ」

「出来た事を言うねえ、ドラ息子。ありがとね」


 しばらくしてオカンがトイレに行くと言い出したので「ご遠慮なくどうぞ」と送り出した。


 この後から来られるお客様もいて対応していたら黒の婦人スーツ姿の女性がやって来た。祈里のお母さんだった。


「あら、悠二くん。お母さんは?」

「ちょっと休憩に行ってます」

「あ、そういうことね」


そう言いながらおばさんが缶コーヒー2本を悠二に渡してきた。悠二とオカンへの差し入れだった。


「これ、入る前にでも飲んで」

「ありがとうございます」


おばさんは悠二の顔を覗き込んだ。

「この後、祈里の音源があるけどごめんね。先に謝っておくけど必ず聞いて」


祈里の音源の演目自体はプログラムには載っていなかった。当日発表という事でシークレットとなっていた。


「えっ?」


するとホールのドアの方でおばさんを呼ぶ声がした。


「天本さん、そろそろ」

「ごめん、もどるから」


おばさんが会場に呼び戻されてその意味を聞けなかった。

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