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愛の共鳴  作者: MV E.Satow maru
第1楽章 2016年
3/24

2016年8月20日土曜日 皆本悠二

 窓側に座っていた悠二。カーテンを少し開けて外を見てみたら太陽が攻撃的な熱量を発揮していた。バスは幸い冷房が仕事をしてくれているけど、窓際は失敗だったか。祈里が「陽に焼けたくない!」と御無体な命令を発してくれていて悠二が窓際になったのだった。


 喉が渇いたのでお茶のペットボトルを探して車内に持ち込んだバッグを見ていたら思わぬものが出てきた。隣に座っていた祈里に聞いた。


「お菓子が残っていたけど天本あまもと、食べるか」

悠二ゆうじくんが分けてくれるってめっずらしいねえ」


人聞きの悪い事を言いながら祈里は悠二の手に収まっていたプレッツェルの袋2つのうちの1つを強奪して袋を破ると一度に何本か取り出してもう食べていた。早っ。


「おまえ、袋ごとかよ」


祈里は口をポリポリ、モグモグさせながら言い返してきた。


「いいじゃん。ちゃんと悠二くんにも1袋残してるし。これぐらい私にくれておけば将来何かで帰ってくるかもよ」

「おまえはいつもそう言うけど元本保証しねえだろうが」

「金融庁が禁じてるよ、それ」


そう言って笑う祈里。せめてそう言うのは真顔で言えよ。地頭と泣く子には勝てないっていうのは事実かどうか知らないが笑う祈里には勝てないのは歴史的な事実だと知っていた。なにせ祈里とは幼稚園以来の幼馴染なのである。それぐらいの事は何回もだな、思い知らされている。


 こいつの音楽の才能は別格だ。2年生なのにクラリネット・ファーストとして演奏を牽引している。来年のパートリーダーも間違いないだろう。だいたいこいつは音大目指していて親の応援も取り付けていて個人レッスンにも通っていた。


 そんなこいつにあてられて悠二も吹奏楽部に入りトランペットを始めたけど奏者としての才能はない事はすぐ自覚した。今だってセカンドだし、来年パートリーダーにはなれるかもだけど、ファーストはおそらく1年生の演奏巧者の子が指名されるだろうと思っている。ま、それはそれでいいんだ。悠二は祈里とはやりたい事が違う。ただ祈里のやりたい事をサポートはしてやれたらなとは思っていた。この時までは。


「悠二くん、食べないなら」と手を伸ばしてくる祈里。

「やるよ」とプレッツェルの袋を渡した。

「ありがと」


 プレッツェルの袋を開ける祈里。

「ねえ、悠二くん。全国に行こうね。今の私達なら無敵だよ」

「無敵は言い過ぎだろう。だいたい審査よくわかんねーし」

「いけるよ。信じるものは救われるってね。約束して」

「分かった。約束する」


 その瞬間だった。バスが揺れて車体が傾いた。恐ろしい音が鳴り響いた。そして天地がひっくり返った瞬間、祈里の悲鳴を聞いたような気がしてーーーそして記憶が途切れた。




2016年8月20日土曜日17時25分 毎朝新聞デジタル版「バス横転事故 高校生11名死亡」

 19日午後4時20分ごろ、神奈川県相模原市津久田町の中央道上り線の相模湖インターチェンジを付近で乗用車3台とトラック2台、観光バス1台の多重事故が起きた。先に乗用車とトラックによる衝突事故があり渋滞中だったところへ観光バスが速度を落とさずに接近、運転手が気付いて急ブレーキを掛けた所、バスが姿勢を崩し高架下へ横転落下したという。乗用車とトラックで5人が負傷した他に観光バスの運転手が重傷。乗客の高校生35人のうち11名が死亡、20名が負傷、病院へ搬送された。県警は、バスを運転していた運転手の怪我の回復を待って取り調べを行う方針。(菅井圭介)


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