第1話『日月透』
初めて「それ」に気付いたのは、小学生の頃だった。
クラスで虐めに遭っていた男の子。相手はその男の子よりも体格の大きい坊主の男の子だった。その子は学校でも有名ないじめっ子であり、誰も止めに入ろうとはしなかった。もちろん、僕もその一人だ。見て見ぬふりをするつもりだった。だけど、僕は無意識に人差し指をいじめっ子に向け、ひょいと動かす。
「うぉっ!!」
突然床に転んだいじめっ子の悲鳴が教室内に響き渡り、その場にいた生徒たちは驚き、床に倒れるいじめっ子を見ていた。いじめられていた男の子はもっと驚いていたが、誰よりも驚いていたのは、僕自身だと思う。最初はただの偶然だと思っていたが、この日を境に僕は気付いた。
特殊な力が、体の中に宿っていることを─────。
最初は小さなものから動かし始めた。授業中に落ちた消しゴムや鉛筆、手の届かないところにあるティッシュやリモコン、念じるだけで動かすこともできるが、指や手を向けて動かすとより細かい動きができた。周りに気付かれないように隠れて特訓し続け、現在、16歳の時点で人や車は簡単に動かすことができるようになった。
使えば使うほど、この力が進化しているようだった。しかし、調子に乗って使いすぎないように常に冷静にいることを忘れないようにしていた。
この特殊な力=超人的な力「超能力」は、世間に存在が知られれば、確実に大事になる。自分自身だけでなく、家族や友人にも迷惑が掛かり、最悪、危険な目に遭うかもしれない。だから、この力を隠して人生を送らないといけない。と、僕の中で誰かが命令しているようだった。
でも、どんな秘密も、いつか必ず誰かに気付かれる時が来る。