表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2.物書きは強い!

  財産を失ったのは、いくらか失ったことだ

  すぐ気をとりなおして、新しいものを手に入れよ


  名誉を失ったのは、多くを失ったことだ

  名声を獲得せよ。そうすれば人々は考えなおすだろう



  勇気を失ったのは、すべてを失ったことだ

  そのくらいなら、生まれなかったほうがいいだろう  



                        ――『ゲーテ』




 宵の口もとうに過ぎた私鉄の車内。私は沈みこんでいた本の世界から、土地勘に促されるままに顔を上げた。

 ボロばかりが走る中、ここ十年内に導入されたまだ新しく思う車両。座り慣れないシートから見る車内には、ほろ酔いといった様子を漂わせる者や、遊びの後の虚無感をスマートフォンの画面に落とす者達がまばらに座席を、ドアの傍を占めていた。

 私は対面に座る、乗り換え以前から位置関係を等しくしていた見知らぬ人と、目を合わさぬようにして窓の外を窺う。

 店舗の目立つ看板も、電飾も無い暗がりに、ただ流れていく木々と道路。

 時折覗く民家の明かりが、私に買ったばかりの本を閉じさせた。



 白い息が、しんと冷えた空気に舞う。

 二車線のアスファルトを断続的に走るエンジン音。古刹こさつを内包する小山から降りる、肌を固めるような冷気。ただ高く、裸眼にオリオン座を鮮明に映す冬の星空。

 小一時間ほどの遠方からの帰路。帰ってきたのだなと、同じ車両を降り、ホームの先を行く二人ほどの背中を見ながら私は安堵した。


 木造の構内、不自然に新しく見える改札へと不相応に高い切符を通し、無人の駅を出る。

 「ほろ酔いといった様子」の乗客の一人だった私に、もうそれほどの酔いはなかった。ただの付き合いであり、楽しんだわけではなくとも、呑んだ後の一人は寂しくもなる。その寂しさから立ち寄った喫茶店で、お高いハワイコナに時を溶かしたおかげもあるのだろう。

 ただ、去って行った酔いは過ぎた時間の虚しさと、再びの寂しさを、駅前に立つ私へと呼び込んでいた。


 目の前に、三センチほどの蜘蛛のミイラがぶらさがる、飲料自販機が目に付く。百三十円のコーヒー。旨いコーヒーを飲んだ後()()()、硬貨を投入した。取り出し、ぬるさを確認し、コートの胸ポケットにねじ込む。飲む気など、起きようはずもない。


 ――何をやっているのかな、私は……


 私は一人天を仰ぎ、一つ心の中で苦笑し、鞄を探った。

 使い慣れた目的の物はもちろん、そこにある。

 乱雑にしまわれた物の中から、エリカのシガーケースを取り出した私は、残り少なくなった手巻きの白い一本を抜き、口に咥えた。

 紅茶葉のような甘みを感じつつ、シガーケースを戻し、鼈甲べっこう柄の携帯灰皿を取り出す。


 ――さぁ、一本を灰にして、帰ろう。


 この灰皿をくれた友人は、くれたことを憶えているだろうか。そんな感傷をゆるい夜風に吹かれつつ、私は三度みたび鞄へと手を差し、心の灯火(ライター)、デュポン・ギャッツビーを――



 ――つるっ、ガン! だん! だだん!



「おあ”あ”っ!?」



~~



 というわけで、みなさん、あけましておめでとうございます!

 実は結構おっちょこちょい、千場センジョウ ヨウです。

 おっちょこちょいって打ち込むの難しいですね。あっ、今、手元見たでしょ?


 このエッセイに二回目は無いと思っていたのですが、とうとう勢いで書いてしまいました。

 楽しい!ヽ( ´ー`)丿


 さて冒頭、「エッセイじゃねぇのかよ!」というツッコミが聞こえそうな入り方をした第二回目ですが、これは前回がはっちゃけ過ぎていたので、まともっぽい文章で導入してみたというだけの思いつきです。


 決してですね…… よい一首が出てこなかったとか、歌を出だしにするのを恒例にすると今後厳しそうだな~ とかじゃないんですよ。じゃないと思う、じゃないんじゃないかな、まぁちょっ(以下略



 で、それでですよ、今回「なんか…… 書こう!」じゃなくて、「書こう」と思ったのは、ちょいといい話を思いつき、しまっておくより、お出ししてしまった方が助かる人もいるのでは…… と頭を捻った結果なのです。


 ※「かこうと」と入力をして、片眼を食べる人の変換予測が出て失笑しました。


 では、脱線やらなんやら、放っておくとまたしまりがないとコソコソ笑われそうなので、もう早速始めましょう。今回のテーマは――



 強いのです! 物書きは!



 「え~、強くないよ~」とか「なんだよ、俺は受け専―― 読み専門だから関係ねぇよ」とか「もう腰がヤバイんだけど……」とか、思われた方もおられるでしょうが、最後の方は整形外科へ!

 まぁ、ちょっとだけおつきあいください。


 もちろん、私も物を書くことをやっておりますので、「ヾ(*╹◡╹)ノ゛?」という皆さんの疑問の表情は理解出来ます。表情かわいいな!

 そうですよね、小説を書こうと思う人ですから、割と大人しい、内向的で真面目な人か、キョロ充が多いと思われます(失礼)。電話するのが妙に怖かったり、履歴書買うだけでストップしちゃったりなタイプの人が大半じゃないでしょうか(言いがかり)。


 が! 実は結構強いのです! 物書きだけじゃなく、創作に関わる人はみんな強い!



 「初めてやってみる!」



 ことにです。


 ――あれ? 

 

「異議あり! 『電話するのが妙に怖かったり、履歴書買うだけでストップしちゃったりなタイプの人が大半じゃないでしょうか』という証言にムジュンします!」


 と思った鋭い方、ミステリー書きましょう! 読みに行きます! イケタライクワの精神です!


 そんな方はオチまで推測出来たかもですが、とりあえずはお話を続けます♪



 創作に関わるみなさんだけに非ず、人は「初めて」のことを怖れます。当たり前ですね、世の中当たり前のことなんてありませんが、一般的にそうですね。

 そりゃ未知のことですもの。痛いかもしれないし、つらいかもしれないし、からいかもしれない。ナマコとか、初めて食べた人はきっと何かの罰ゲームか、酔った後の悪ノリだったと思います。


 危ないことはもちろん、危なくなさそうなことだって怖れるのが人間です。「初めて」というのは新たな体験、自らの世界に新しい何かを加えることですから、ひいてはこれまで整えてきた、自分の世界の一部を崩すことでもあるわけです。怖いね!



 さてさて、そんな怖くて面倒い「初めて」ですが、なんと! みなさん創作に関わる人だけは(読み専門の人ゴメンネ☆)、あっさりと乗り越えられる奥義があるのです!

 多分(>_<)




 では、みなさん、「初めて」に手を出す時、これから次のことをやってみてください。



 1.「初めて」を見据える。


 2.危なくないか事前にちょっと調べる。


 3.行こうか、戻ろうか、押すなよ押すなよ! とウダる。


 4.じーっともう一回見据える。


 5.深呼吸


 6.気合い一閃――


   ――「これ! 取材だから!」




 最後の台詞は声に出せたら…… 恥ずかしいですね、心の中でOKです。

 要するに「失敗しても芸の肥やし」程度に物事を見れば良い、というだけのポジティブシンキングなのですが、みなさん創作に関わる人というのは「言葉が心に響く」傾向をお持ちです。

 立派な感性をお持ちだからこそ使える、自分で背中を押すための心理テクニック(?)なのですです。


 「そんな簡単に行くかよ~」、「今はネガシンが主流だろ?」、「それお前がアホやからそう思うんや」とお思いのアナタ。いやいや、確かに確かに、おっしゃることはごもっともです。

 責任逃れするつもりはありますんが、何も人生の大事をこれで乗り切れと無茶を言っているわけではありません。怖いものは怖い! 私だってノーロープバンジーとか出来ませんもの!



 ただ、小さななんでもないこと、そこに「勇気」が少し欲しい時にこそ――



 初めて見る、おしゃれな喫茶店に入ってみたい時。

 虫歯が痛いけど、入ったことのない近所の歯医者が怖い時。

 実はやりたい、ヒトカラにチャレンジしてみたい時――



 使ってみてください! 意外とすんなり行けます! いっそ初めてのお店は全部、いっそこれで、いっそセレナー…… こほん。

 千場はですね、みなさんと本当に変わりません。たまにアホみたいなことをやりますが、基本的にはみなさんと一緒で、優柔不断で腰が重いタイプです。

 そんな私ですが、これを使うようになって数年、面倒な物事を随分と平気で乗り越えるようになりました。得られたものは大きくなくとも、積み重なった経験は悪くない「取材」になったと思っております。

 前述の「2~4」は一見ネタに見えますが、そうではなく、大事なことです。見える危険を回避すること、そして「迷う」ということを体験するために必要なことです。抜かさないでね?


 このような不特定多数の人が見る「なろう」に自作を投稿出来るような人になら、簡単なんじゃないかなと、思いますよ?



 ――本当に小さな、臆する必要すらないようなことでも怖がってしまう、心の優しい、感性の強い人達にこそ、この「勇気」の一押しをご活用していただきたく存じます。



 P.S.


 そしてまだ、「なろう」に初投稿することに逡巡している方。

 どうですか? 「これ、取材だから!」で、つっこんでみてはいかがでしょうか。

 少なくとも、千場はあなたの味方です。多分。




 以上、千場センジョウでした。


 では(^^)/



~~



 駅前の石畳の上を、デュポンが見た目に見合わぬ重い音を立てて転がる。


 私は目を覆いたくとも目を離せない最悪の光景に、時よ戻れとあり得るはずもない奇跡を祈りつつ、路上に伏した彼を拾いあげた。


 酷い喪失感に、醒めたはずの頭に軽い目眩を覚える。現実は無情だ。不器用に動いた指先の過ちを許してくれるほど甘くは無い。

 手に入れてまだ二週間、ようやくと手に馴染んできたそれは、銀のメッキに目に見える形で傷を負ってしまっていた。


 私は――



「いい経験になった! これが新車を傷つけた人の気持ちか!」



 高い授業料に「取材」と見切りをつけて、家路を渡った。


 閑散とした住宅街の坂は、いつもと変わらない寂しさと、寒さを私に与えていた――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ