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奥様をこよなく愛する者たち

5人の溺愛者たちとの日常 2/5

作者: さくらぶし

今回はアッズロー編。


わかりにくいところはまた後でSSにします。


※2月8日・1/5の後書きにローゼオの基本情報を追記しました。興味のある方は見てみて下さい。

 (わたくし)には5人の側付きがおります。みんな聡明で美しく、こんな、旦那さまに見向きもされない私に優しくしてくれるとても良い方たちです。


 今日はアッズローと2人でお留守番です。他の4人は用事があるとかで。どこに行ったんでしょうか。早く帰ってきてくれるといいです。

 アッズローは私の隣で布と針と格闘中です。実は私が先生なんですのよ!

 元々私は刺繍が得意でしたので、時間があった時や考え事をしたい時は縫っていましたの。それをアッズローが見ていて、自分もやりたいと言い出したのです。なんでも、コーディネートは出来るそうですが、自分で作ったことはないみたいで挑戦してみたいとか。完成したら一番に私に着せてくれるんですって。嬉しいですわ。


 いつもは私が彼らに色々して"もらってる"立場ですので、こうしてして"あげる"立場になるなんてちょっと嬉しいんですの。こう思うのは傲慢かしら?

 そういえば、以前こんなことがありましたの。あれはまだ彼らがうちに来てしばらく経った頃――



***********


 5人が来てくれて1ヶ月が経ちました。皆さんとても優秀で、側付きの教育は順調に進んでおります。

 その最中で、今日はアッズローと2人っきりです。初めてなので、何を話せばいいか悩むところですが、そんな暇はございませんでした。


 現在私は6着目のドレスを着ております。アッズローが私に一番似合う色合いやデザインがどういうのか見たいと言ったためです。快く承諾した私ですが、……正直疲れましたわ。


「アッズロー、申し訳ないのですが、少し休ませてもらえないかしら。」

「あぁ、気付かなくてすみません、奥様。休憩に致しましょう。」


 ようやっと座れましたわ。ドレスを着替えるのって存外大変なんですのよ。

 もっと格式を大事にされるお家では、食事の度に着替えるのだそうです。私は、実家でも嫁ぎ(ここ)でもそういったことを強要されなかったので、本当に良かったと心から思います。


 椅子に座る私に少し冷めた紅茶をアッズローが淹れて下さいました。こういう心遣いはネーロに負けないぐらいですわね。


「ありがとうございます。……とても美味しいですわ。」

「そう言って頂けると光栄です。」


 アッズローは色彩感覚や流行にとても敏感で、今もあーでもないこーでもないと呟いております。


「アッズローは将来的にはお店を開きたいのですか?」

「えぇまぁ……。駄目ですか?」

「駄目なんてことございませんわ。ちなみにどんなお店かしら?」

「そうですね……。貴族御用達とかの高級店ではなく、むしろ平民が手に取りやすい店がいいですね。高級店なんて私には似合いませんので。」


 そうなのですねぇ。でもアッズローなら高級店でも似合いそうですけど。


「…奥様は、私たちに同情したから引き取ってくれたんですよね。」

「まぁ、そうなりますわね。……あなたたちには申し訳ないですが。」

「なぜです?その同情のおかげで私たちは体を売る生活から逃れることが出来たんです。感謝してますよ。」


 ……そうかしら。今のアッズローからはあまり良い感情が感じられません。


「奥様にはもっともっと同情してもらわなくては。じゃないと私たちを見捨ててしまうかもしれないでしょう?」

「……どういう意味かしら。」

「そのままの意味です。私たちが"可哀想"な人間でなくなれば奥様は私たちに同情しなくなる。そうなれば捨てられてしまうかもしれません。でも今捨てられたらそれこそ私たちはまた体を売る生活に戻るしかなくなりますからね。それでは困りますから。」

「……私は、一度した約束を破る気はありませんわ。」

「奥様、約束は破るためにあるのです。特に貴族社会の中ではね。」


 どうすれば私の本気が伝わるのか、わからなくなってしまいました。

 彼らはきっと色々な人たちに裏切られて生きてきたのでしょう。いきなり私のような人間を信用しろという方が無理な話でしょうね。


「生意気な口をきいてしまい、申し訳ありません。処断は如何様にも。」


 私が俯いたので、不興を買ってしまったとアッズローは勘違いをしたようです。そうではないのに。


「……あなたにも分かるように、私はこの家にとって必要のない存在です。旦那さまに見向きもされず、跡取りも残せない女です。ですが!私にも矜持というものはあります。一度交わした約束は破らないというものです。例え、それで私が馬鹿を見ようとも、それだけは譲れません。だから、私はあなた方に同情をしなくなっても、見捨てたりなんかしません。あなたたちが一人立ち出来るその日まで、あなたたちが私の手を放すその日まで私はその手を放すことはありませんわ。それが私の唯一の矜持ですもの。」

「……私は今すぐにでも奥様を裏切れるのに?」

「そうなってしまったら、私が信用に足る人間ではなかったということでしょう。もっと精進しますわ!」

「精進って……。」


 話してる途中で思わず涙が出そうになってしまったので、唇を噛み締めました。ですがそれはすぐにアッズローの手によって解放されます。


「奥様は少しバカなんですかね?」

「はっ?」

「ふふっ。だって、そうでしょう?口で交わした約束(こと)なんかすぐにだって反故出来るのに。僕たちのことだって、良いように使えばいいのにそれをしないなんて。おバカさんとしか言い様が…。」


 そうなのかしら。でも、元々そういう約束でしたし、なんだかんだ言って結局彼らに甘えてる気がするのだけど…。


「ラディナ様が約束を破るような人じゃないっていうのはよくわかりました。だから、僕と一つ約束して欲しいんですけど。」

「なにかしら?」

「今後一切、僕以外の人にその綺麗な髪を触らせないで欲しいんです。これからは僕が髪の毛をセットしたいので。」

「あら。それは出来ませんわ。」

「えっ?」

「だって、アッズローはその内お店を開くのでしょう?そしたら私の髪は侍女たちにやってもらわなくてはいけませんもの。」

「……約束は破らない代わりに、出来ない約束はしないと言うことですね。」


 そうよ。と私が言えばアッズローは片側だけ口角を上げるという器用な笑い方をして、『僕は独立なんかしないでずぅっとラディナ様の側にいますよ。』と言ってきました。さっきと言ってることが違いますわよ?


「でも……」

「僕が独立するかしないかは僕の自由でしょう?急にやる気がなくなっちゃったので、次にやりたいことが見つかるまでお側にいさせてください。」

「もちろんそれはいいですけど…」


 ならさっきのことも約束してくださいね。と勝手に取り付けて、私が考えてる間にアッズローは侍女を呼び戻して私に元のドレスに着替えさせるように言って部屋を出ていきました。

 ……まぁ、私が破ることがなくても、それを相手に強要することはないので別にいいんですがね。



************


 たまにあの時のことを思い出しますの。

 だって、今はきっと彼らも私のことを信用してくれてるでしょうけど、それまでは彼らなりに葛藤があったはずですものね。それを気づかせてくれたのがあの一件ですし。

 そんなことを思い出していたからでしょう。刺繍をする手が止まっていたのを、アッズローが訝しげに見てきました。


「ラディナ様?どうしたんですか?」

「あぁ、少し考え事を……。ふふっ。」

「?」

「いえね、アッズローと初めて2人っきりになった時のことを思い出しまして。」

「あの時のことですか。止めてください。あれは僕にとってなかったことにしたいんですから。」

「あら、どうして?」

「だって、ラディナ様があんまりにも良い人だから信用しきれなくってわざとあんなヒドイこと言ったんですよ?傷つくかもとわかってて。戻れるならあの時の僕を殴りつけたいです。」


 私にとっては大事な思い出なんですが、アッズローにとってはそうではないのですね。

 それよりも、あの時の約束はそろそろ破られるのかしら。


「ねぇ、アッズロー?」

「なんですか?」

「あなたも、随分刺繍が上手になりましたし、そろそろお店の件、本気で考えてみてはどうかしら?」


 最近ずっと考えてたことを提案してみました。他の4人はまだ明確な道が決まってないようですが、アッズローは意欲もそれに見合う才能も持っております。こんな、旦那さまに目の敵にされ、監視されてるような私の元ではなく、もっと自由に羽ばたける世界に飛び出す機会なのではないかしら。


「……僕言いましたよね?やる気がなくなったって。」

「でも、やっぱりあなたにはこの道が一番なのではなくて?とても楽しそうじゃない。」

「ラディナ様は僕を追い出したいの?」

「そんなこと……。」


 否定を口に出しますと、立ち上がったアッズローが両腕を私の椅子に置いて囲いこんでしまいました。そして顔を近付け、


「僕はここから、ラディナ様の側から離れませんよ。絶対に。……例えラディナ様が約束を破って僕を捨てようとしたって、そうはさせませんから。そうなったら、ラディナ様を連れてどこか見知らぬ土地にでも行きましょうか…?」

「まぁ!それはいいわね!」

「はっ?」

「だってどこかに旅行でしょう?私、この国を出たことないんですの。なので、出来れば隣国に行ってみたいですわ。あちらは年中暖かいんだそうですのよ。もしくは『海』というものが見たいですわ。あっ!行くなら他の4人の意見も聞いてみないとですわね。ネーロならきっと色々知ってるでしょうし。」


 旅行なんて、考えるだけでもドキドキしちゃいますわ。そんなことを言っていると、アッズローは私から離れて、深ーいため息を吐きました。


「そういう意味で言ったんじゃないんですけど…」

「なにか言ったかしら?」

「いえ、なんでもないです…。」


 それから刺繍よりも心奪われてしまった私は此処に行くなら何処其処に行くという計画をアッズローと立てていまして、それを他の4人に見られてしまいちょっとした騒ぎになりました。









『旅行じゃなくて、連れ去ってラディナ様を閉じ込めるって意味だったんだけどなぁ。はぁ。』


アッズローはちょい病み系統が入ってます。


※アッズロー

 青みがかった黒髪。パッツンマッシュルームっぽい髪型だけど、それが似合っちゃうイケメン。猫っぽい性格のため、一番最後まで奥様を信用しきれなかった。でも懐くと奥様一直線。常に奥様と一緒にいたい。最初は自分のお店を開くという野望があったけど、奥様を溺愛しちゃってからは奥様が身に付けるものは僕が選んだやつじゃなきゃ!って思うようになった。全身僕色に染めたい願望強し。

他の4人が邪魔なのはローゼオと一緒。

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白いです(*´∇`*) もう溺愛が最高です(^ω^) 続編お待ちしてます!!!
[一言] これはいいヤンデレ 他の3人の話も気になります!
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