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野球ロボット

作者: 福星由雨

 人類の有能な科学者の叡智を集結し、超人的な野球選手を作ろう、と言う企画が成功し、見事、人類の有能な科学者は超人的な野球選手を作り上げた。


 このニュースは、野球界を震撼させた。


 超人的な野球ロボット。


 各々が性能の恐ろしさを想像した。


 バットを振ればホームラン。投球すればバッターになす術なし。どんな所にボールが落ちてもボールを落とさず拾うのではないか。


 勿論、問題がなかったわけではない。


 ロボットをプロ野球界に入れようとした時、猛反発を食らった。


 ロボットが野球をする? ふざけるな! 


 ロボットや科学者風情が、神聖なコートを汚すつもりか! 恥を知れ! 今後、そんなものを作るのだったら、それはただの冒涜だ!


 非難殺到。


 だがそれを、受け入れようとするチームがあった。


 そこは、はっきり言って万年最下位で、優勝など夢のまた夢だっと言われていたチームだった。勿論、チームの総合的な力も、かなり弱い。


 だからこそ、ロボットを加えて力を蓄えたいと思ったのだろう。


 しかし、簡単に事が進む訳もない。科学者たちに向けられていた非難の声が、そのチームに向けられた。


 そんな時、監督はこう言った。


「ああ、ロボットがいると勝てないから、そんな事を言うのですね」


 挑発的な言葉が、かえって効果を出した。


 結果としてロボットアンチ派はそのチームの話題をあげれば、罵倒の言葉を放つほどに毛嫌いする事になったが、だがロボットはそのチームに入団する事になる。


 そしてロボットという期待の新鋭を加えたそのチームは、強豪チームと対戦する事になった。


 はっきり言って、今までの実力差ならば、コールドゲームを決められ、見る価値すらないゲームだが、ロボットを加えたという事と、ロボットアンチ派の影響で大いに関心のある試合になった。テレビの瞬間最高視聴率が30パーセントを超えた出来事を、誰も不思議には思わない。


 ゲームが始まると、早速ロボットが場外ホームランを決めた。


 強豪チームの応援席の高まった士気が、一気に消沈する。


 ロボットはその後も、八面六臂の活躍を見せた。


 攻守ともに、人間の性能ではない。


 だが強豪チームにもプライドがあった。


 ついこの間まで弱小だったチームに負けたくないのは当然であって、絶望的なロボットの強さに折れることなく立ち向かう。


 幸い、ロボット以外の選手は弱小のままだ。ロボットの反対側の守備にボールを転がし、何とか点を獲得する。


 だが4-1で、強豪チームは三点の差をつきつけられる。


「ロボットは流石ですな。弱小チームが、強豪に勝ってしまいそうだ」


 監督が嬉しそうに笑いながら科学者に言う。


「当然ですよ」


 科学者は誇らしく笑い、監督に返す。


「場外ホームランなんか出していますがね、そのボールは多分、まだ空中にいますよ。それだけの、パワーがロボットにはあるんです」


  

 すると突然、ゲームが終わろうとしていた強豪チームのピッチャーの前に、ボールが落ちてきた。


 反射的にピッチャーはそのボールをボーバウンドで獲るとると、それはロボットが場外までホームランした、あのボールだった。


 あと三つ、ボールが続く。

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