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人形  作者:
6/6

その中身 4

 

 けれども、いくら探ってみても、指先はおが屑のような緩衝材に触れるばかりでした。俺は半ば途方に暮れるような気分になっていきました。なんでだ、なんでだ、とつぶやいていました。そしてその直後に、とうとう指先が箱の底にたどり着いたのです。結局、木箱の中には何も入っていなかったのでした。

 そのときの俺は、気が狂いそうになっていました。すぐさまパソコンに向かい、電源を入れて出品者にメールを打ったのです。箱の中身のこと、そして思い出したようにして代金のことも付け加えました。すぐに来るはずもないその返信をほうけたようにして待っている間に、異変が生じました。

 いらいらしていた俺は天秤を荒々しくつかみ、奥歯で思い切り噛みつけました。しかし噛んでから、われにかえったのでした。天秤を噛むことはご法度なのです。あの大胆で狡猾な少女も、それだけは避けていたのです。

 俺はあわてて天秤を口から引き抜き、おそるおそるその表面に視線を落としました。わなわなと目をみはり、俺は言葉を出すことができませんでした。そこには人形が居ました。

 俺は静かに天秤を木箱の中にしまい込み、おが屑のような緩衝材を上にかぶせました。そして天秤が完全に隠れたところで、ふたを閉めました。

 その後、木箱はパソコンの横に置いて布をかぶせておきました。俺は最善の行動をとったつもりです。それ以来、天秤をいじくることはなくなったのでした。

 しばらく日にちが経った後、彼女に会いました。もちろん、人形をプレゼントするためにです。

 人形は確かに送られました。






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