第一話 Impression No.7
「こっちよ!」
翔に案内を頼んで見たが、やはり忙しいようで里美に図書館への道を案内してもらっている。
「本当に花だらけなんだな」
「そうね、私も始めてきたときはびっくりしたわ。もっとも、あまりにも騒がしすぎでわたしはあまり好きじゃないけどね」
確かに彩り豊かだが、落ち着きがないようにも見える。
「図書館までどれくらいかかるんだ?」
「あと10分位かな」
コンクリートで舗装された道を歩く。
「そう言えば、冬はこのはなはどうなるの」
咲き続けるのだろうか?
「秋の中盤に散ってしまうわ、それから実りの季節になって実がなる。そのあとは紅葉の季節になって、葉が落ちて冬は枝だけになるわ」
「なるほどねえ、ずっと咲き続けるわけではないんだね」
今は秋の中盤なのでもうすぐ花が散ってしまうのか。
「今から冬にかけて私の好きな季節なの、秋とか冬の雰囲気が好き」
なるほどわからなくもない。というより俺と里美の考え方が似てるのかもしれない。
雑談をしながら歩いていると大きな門が見えてきた。
「あれは天照正門、いま私たちがすんでる神域の正門よ」
「神域って?」
「神域って言うのは単純に言うと神様のすんでいるところね。日本に十数ヵ所ある。いまいるここの神域は天照神域といって、日本にある神域のなかでもダントツの大きさがあるのよ」
そんなに有るのか、神様って以外と多いのかもしれない。
「正門を出て左に入った所が図書館よ」
門を出ると何故かバス停があった。
「そのバス停は図書館利用者用のものよ」
と里美が説明してくれた。
「ここをまがる」
門を出て右にまがると屋敷よりは小さいものの立派な洋館がたっていた。
「立派だけど、そんなに大きくないな」
てっきり巨大な図書館なのだと思っていたので、少し肩透かしを食らったがその考えは甘かったことをあとから思い知ることになる
「みんな最初はそういうのよね」
と里美は返す。
「さあ、さっさと入りましょ」
促されて建物のなかにはいると予想外の風景が広がっていた
「・・・普通の館じゃないか」
そこには本棚はなく普通の古びた洋館があった。
「ようこそ」
ふと横から声をかけられる。
「おお、梅優ちゃん。こんにちわ」
「こんにちわ」
随分ぶっきらぼうなひとだ
「今日は、新人さんを連れてきたよ」
「ん・・・」
自己紹介した方がいいのか?
「ど、どうも、佐藤 豊樹です。つゆちゃん・・・で合ってるかな」
「神宮・・・梅雨・・・」
神宮梅雨と名乗ったその人はかなり幼い感じに見えるが見た目と年齢が合致しないのは経験ずみなので恐らくこの人もその可能性があるかもと思った。
「今日は・・・?」
「ああ、今日はトヨくんの案内と能力に関する本を借りに来たわ」
「ん、こっち」
梅優は手招きをして奥の大きな扉に向かう。俺もそれについていく。
大きな扉のまえに来ると梅優は立ち止まる。
「ここか?」
ノブを回して開けようとするが開かない。
「下がってて」
「お、おう」
おれは仕方なく後ずさる。すると梅優が何やらぶつぶつ呟き出す。
「え?なにやって・・・えぇ!?」
目の前の扉が光始めた、しかもどんどん光量がましていく。そして次の瞬間。
「はあああぁぁ!!!!!」
梅優はさっきのぶっきらぼうの感じは微塵も残さず叫んだ。すると、一層強い光が館を多い尽くす。
我にかえった時にはすでにその光は収まっていた。
「どうぞ」
「え?さっき空かなかったけど」
恐る恐るドアノブを回すと、今度は軽く回りドアを軽く開けることができた。
「空間連結ね」
今まで黙っていた里美が言った。
「本来、この扉はどこにも繋がっていない、いわば張りぼてね。でも、空間連結魔法により繋がったのよ」
え?空間系魔法って難しいんじゃ・・・
「いまこことつながってる創造空間も超次元空間らしいわ、私には理解不能の領域ね」
超次元って・・・何次元なんだろうか
「具体的には収蔵されてる本の数によって次元数が変わってくるらしいの、それ以上は理解できなかったわ」
俺もそれ以上・・・というかすでに理解できない。
「さすがね梅優」
なにがなんだか分からないがこの神様はすごい力を持っていると言うことは確実らしい。
「は、はい・・・」
何やら照れているようだ、少しかわいいかも。
「どうぞ」
梅雨に促されて扉のなかにはいる。
「な、なんだこれは!」
そこには高さが5メートルぐらいの本棚がずらっとならび、入ってきた扉に会わせて道が奥に続いている。奥の方は薄暗くどこまで続いているのかわからなかった。左右を見ると壁際に沿って道があり、これも奥は薄暗くどれくらい続いているか把握できない。おれは唖然とするしかなかった。
「これは・・・どれぐらいの広さがあるの?」
「3次元空間で換算すると・・・ユーラシア大陸ぐらい・・・」
ユーラシア大陸ってでかすぎだろ!
「複数ある世界の全ての本だからねー、そりゃあでっかくなるわよ」
と里美が説明してくれた。
「そ、それより俺の目的としてる本はどこかな・・・」
「この辺一帯・・・」
この辺一帯って言われたのでその辺の本を手に取ってみる。
「英語やん・・・しかもなにこの数式」
そこには英語と難解な数式が乗っていた。そっともとの位置に戻す。
「しょ、初心者用で日本語のがいいかなー」
「初心者用・・・日本語・・・ん・・・」
そう言うとまた何やらぶつぶつ呟き始める。
そうすると中段から本が出てきてフワッと浮いたかと思うとこちらに飛んできて自分の目の前で止まる。
「・・・受け取って」
「お、おう」
目の前の浮いてる本を受けとって中身を見てみる。
「おお!」
なかを見てみるとイラストも多めで理解しやすそうな日本語の経営入門書だった。
「これなら大丈夫、助かったよ」
「ん・・・」
ふと光代さんのいってた詳しい神道の歴史についての本が気になった。
「神道の簡単な歴史が書いてある本はないの?」
「あるけど、この辺にはない。取ってくる・・・」
そういうと突然梅優が居なくなった。いったいなんなんだ?
「瞬間移動ね、私はもう驚かないけど」
瞬間移動ってそんな簡単にできていいものなのだろうか
「普通はできないわよあんなの、空間魔法の名手と呼ばれる梅優にしかできないわ」
すると梅優がいきなりあらわれる。手には分厚い本を持っていた。
「これ・・・?」
そう言うと本を手渡ししてきた。それを受け取り軽く中身を見てみる。
「うわぁ・・・」
そこにはこの辺には小さい日本語がびっしりと並んでいた。挿し絵もあるがたまにはじのほうにあるぐらいだった。
「それには神道の歴史がかかかれている、大雑把だけど・・・」
「わかった、これでいいよ」
「ほかには・・・?」
他はいいと伝えると、部屋を出ましょうと梅優が促す。
「では・・・」
そう言うとさっき入ってきたドアを通り大部屋から出ていく。俺たちもそれに続く。
「相変わらずスゴいわね」
里美は半分呆れ顔で言うのだった。
帰り道、あのすごい人は一体何者なのかと聞いてみる。
「あの人は一体誰なの?」
「ああ、あの人?あのひとは神道の神様のなかでも最古参の一人よ、神道というくくりができる前からいると言われているわ」
それならあの凄まじい魔法も理解できる。
「天国から住居を空間移転させたのもあの人だといわれてる、すごい話でしょ」
確かにすごい話だが、スゴすぎてイマイチ実感がわかない。
「そんな年には見えなかったけどなあ・・・」
「ああ、神様は見た目で判断しちゃいけないよ。大概見た目とかけ離れてるから。私だって今年で5歳よ、見えないでしょ?」
たしかに、見た目は10代後半と言ったところだ。年齢の割には大人びて見える。
「まあとよくんも、その見た目で生後2日だけどね」
そんなことをいっていると屋敷に到着した。
「さあ入りましょ」
俺は玄関を開け屋敷に入る。
これからどのような生活が待っているのだろうか?
きちんと会社を運営できるのだろうか?
不安が一杯だが、やるしかない。
そう心に決めたのだった。
ようやく1話終了です。
次はいよいよ本筋に入ります。
8月10日追記
会社に入りしばらくできていませんでしたがようやく落ち着いてきたのでかけそうです。
しかし、リハビリも必要ということで中編のものを完成させます。それまで再開はお待ちください。