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You're My Lady, I'm Your Knight.  作者: 岩淵 笑実
本編
27/64

ⅩⅩⅥ   後悔の償い

「ノエル、やっと会えたね。……お帰り。」

 青年が優しく微笑む。ノエルは驚きのあまりどうしていいか分からなくなったようで、ソファから立ち上がったまま硬直していた。ミカエルは二人の少年たちにも視線を向ける。

「初めまして、エディ君に……ロビン君。ノエルの事、ありがとう。そして申し訳ない、君たちまで巻き込んでしまって。」

 ロビンはびっくりして、ノエルの袖をいっそう強く握った。が、エディはやはりピクリとも動かなかった。ミカエルの言葉が彼の耳に届いているかどうかもその表情からは分からない。そんな様子を見たミカエルは傍らの騎士に言う。

「オニキス、部屋はもう用意ができている。彼を先に連れて行って休ませてやってくれないか。彼には詫びなくてはならないが、それより前に休息と時間が必要だ。」

「僕が参りますよ。」

 そういう声にそちらを見ると、イリスがちょうど部屋に入ってきた。彼は主人に礼をし、言う。

「オニキスはミカエル様のこともノエル様のことも、またこの一件の殆どを知っています。立ち会った方がいいでしょう。」

「そうだな。頼む、イリス。」

 ミカエルが頷き、騎士はまた軽く頭を下げる。そして何か言いかけたが、それより早くミカエルは鋭く言った。

「私に対する謝罪は受け付けぬぞ。」

「えっ」

 驚いて顔を上げたイリスに、貴公子は穏やかに微笑みかける。

「マーヤ殿の事、既にオニキスから報告を受けた。何があったかは概ね推測できている。私はお前をよく知って分かっているつもりだから言っておくが、あまり気に病むな。相手が手強く力及ばなかっただけの事、お前は全力を尽くしたのだろう? 私に謝るのは、筋が通らない。」

「しかし、それでは僕の気が済みません。この命を懸けて償うつもりでおりますので……」

「それでもしお前が死んだとして、誰が救われる。」

 ミカエルの口調に、イリスははっと言葉に詰まった。主の深い瞳には哀しみの色があった。

「……しかし、せめて何か償いをさせてください。」

 なお食い下がる彼に、ミカエルは少し考えてから言った。

「では彼ら二人を……ノエルだけでなく、エディとロビンを何があっても守れ。それが、命を落としたマーヤ殿と母を亡くしたエディに対してお前が出来る唯一の償いだ。」

「はい。承知仕りました。」

 イリスは深々と頭を下げる。その顔はまだ苦痛に歪んでいるように思えた。やはりマーヤの死で自分を責めずにはいられないのだろうか。

「待って、僕も一緒に行くよ。」

 ロビンはそう言って、エディとイリスに駆け寄った。

 連れ立って部屋を出ていく三人を、ノエルはぼんやりと見送った。ミカエルがぼそりと呟く。

「気に病むな、と言っても無理だろうな。イリスは少々生真面目すぎる。」

 そうして彼はゆっくりとソファに近付き、ノエルに席を勧めながら自分も向かいに座る。その傍らに騎士が静かに控えた。

「ノエル。」

 柔和に微笑み、かぎりなく優しく愛情を込めた口調でその名を発音する貴公子。吸い込まれそうなミッドナイトブルーが煌めく。

 ノエルは緊張と衝撃で固まっていたが、何とか口を開いて、さっき一番驚いた単語を口にした。

「……‘伯爵’?」

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