君ちゃんとわたし
わたしが入社式で出会ったのは、姿勢が美しい宮本君子さん(君ちゃん)。文学少女の彼女と、もっと仲よくなりたい、と思ったわたしは……。
わたしが君ちゃんに、もっと仲よくなりたいと思ったのは、初めて入社式で出会ったときだ。宮本君子さんは、硬そうなパイプ椅子に座っていても背筋が伸びていた。そのあとのわたしに、彼女は心配するような声をかける。その声は凛としていた。
わたしはのぼせたように、ポニーテールの彼女を見る。
「はい……大丈夫です」
彼女は何を思ったのか、数日後には連絡先を交換しようと言い出した。なので、わたしはすっかり舞い上がってしまった。
「あの、宮本さん。なんでそんなに姿勢が美しいんですか?」
彼女は、そうですか? と読書していた手を止め、そんなこと言われたの初めてです、と答える。
「他人から見られたときに自分がどう思われるか、ですね」
彼女は、ふ……、と笑い、本で半分顔を隠してしまう。わたしはそれも、かわいいな、と思った。そういえば彼女に、眼鏡しないの、と尋ねたことがある。
「わたし? コンタクトなの。家では眼鏡だけど」
わたしは猛烈にその彼女の姿を想像し、読書をする姿を貪るように欲してしまった。
「君ちゃん……わたし、あなたとお付き合いしたい。わたし、あなたが眼鏡をかけて本を読む姿をそばで見てみたいの」
彼女は笑い、彼女の膝に置かれた本はページを進め、硬そうな裏表紙が閉じた。
「何言ってるんですか。今度、眼鏡持ってきますよ」
「ってなわけでさ、わたしが押して押して押しまくったんだよね」
ソファに座る彼女は、わたしの髪を撫でる手を止めてため息をついた。
「あの、変な風に脚色しないでください。わかってますか、沙織さん?」
本のページを繰る彼女は、名前で呼んで、と言ったわたしの顔を覗く。
「当分は沙織さんでいきますから。膝枕もなしです」
「ごめんごめん。許して」
手を合わせて謝る。
「嫌です」
彼女は、それでも読書の手を止めなかった。眼鏡をかけている。そういうところも、わたしは気に入っている。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
いかがだったでしょうか?




