隙間SS ジャイアニズム
Web拍手のお礼SSだったものです。
隙間SSとは、流れ的に本編に入れられなかったエピソードなどです。
ある意味ヤオイ(ヤマなしイミなしオチなし)ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
27話のどこかに入るかもしれなかったエピソード。
「時の流れというものは、残酷ね。古の英雄の名も、形無しだわ」
「そんな妙な名前の英雄がいるか!」
そりゃそうだ、「天然ボケ」なんて名前の英雄がいたらビックリだ。
けれど、ジャイアンはある意味日本の子供のヒーローなのだ。
「あら、彼の残した言葉は偉大よ」
アタシは何かを懐かしんででもいるかのように、遠くを見つめて言った。
遠くったって、精々三メートル先の極彩色の壁だけど。
「オレのモノはオレのもの、お前のモノはオレのもの」
日本の子供なら、一度は言ってみたい台詞だろう。
因みに恵美は、二人の義兄に対して日常的に言っている。
けれど恵美が羨ましいかと訊かれれば、そこは微妙だ。
なんてことを思いつつ、アタシは連中に向き直った。
「これぞ至言ではなくて?」
勿論、満面の笑みを添えてである。
笑顔ったって、単に顔面が歪んでいるだけの話なんだけど。
「ただの暴言じゃねえかっ」
フェロモン男のツッコミはやっぱり早い。かつ的確だ。
一般人にしておくのは非常に惜しいと思う。
「そんな上官がいては、命が幾つあっても足りんだろう」
苦虫を噛み潰した様に言うのは金髪直情。
なんでそこで上官が出てくるのか、ヤツの思考はイマイチ謎だ。
「………一人、言いそうな人間がいないこともないですが…」
と、不吉なことを言うのは黒髪腹黒。
一体誰だよソレ!
と心の中でツッコム側から。
「む。確かに至言だな」
と低い呟き声。
貴様か~~~~!
と叫びたいのをアタシは堪えた。
金髪直情とフェロモン男は一歩下がり、黒髪腹黒は何かを諦めた様な溜息をついた。
明らかに仲間から退かれている鉄面皮だが、それに怯む様子もなく。
「そのジャイアンという人物について、もっと詳しく…」
更に食いついてきやがった!
鉄面皮は何処までも無表情なのに、眼差しだけやたらとキラキラと輝いていた。
金の瞳がキラキラなので、目が潰れるかと思う程眩しかった。
これにはアタシも流石に退いた。
あんまり退きすぎて、あろう事か敵に助けを求めてしまった。
思わず黒髪腹黒と視線を合わせて、
「アレどうにかしろよっ」
と目で訴えた。
この場でアレをどうにかできるのは、黒髪腹黒しかいないと思ったからだ。
黒髪腹黒は一瞬目を見開いて、けれど直ぐさまニンマリと物凄く人の悪そうな笑みを浮かべた。
その瞬間、アタシが後悔したことは言うまでもない。