表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生2周目は、300万円で買ったゴミ山に引きこもります。〜世界崩壊まであと1ヶ月、私だけが知ってる『絶対安全地帯』〜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

第5話

 「おい嬢ちゃん。本当にこんな山奥なのか?」


 ガタガタと激しく揺れる軽トラの助手席で、私は必死にアシストグリップを握りしめていた。

 車内はタバコと木材の匂いが充満している。

 足元にはインパクトドライバーや水平器が無造作に転がり、ダッシュボードには現場用の缶コーヒーが並んでいる。


 まさに『男の職場』だ。


「合ってます! この砂利道を抜けた先です!」

「チッ、サスペンションがイカれちまうぞ……」


 運転席の土門どもんゲンタは、悪態をつきながらも巧みなハンドルさばきで悪路を進んでいく。

 ホームセンターの駐車場で彼をナンパ(スカウト)してから1時間。

 私は彼を、私の「聖域」へと案内していた。


 彼はまだ半信半疑だ。

 無理もない。「建築基準法を無視して改造し放題の土地がある」なんて、詐欺師の口上みたいなものだからだ。


「……言っとくがな。もし嘘だったら、お前をここに置いて帰るからな」

「嘘じゃありません。見ればわかります」


 私は強気に返した。

 やがて、鬱蒼とした森が開け、朽ちかけた木のゲートが見えてきた。


「ここです!」


 土門がブレーキを踏む。

 軽トラが止まったのは、かつてのキャンプ場の入り口。

 昨日、タクシーを降りた場所だ。


「……あ?」


 土門が眉をひそめた。

 彼はプロだ。私の目には見えない「何か」を感じ取ったらしい。

 彼は車を降りると、ゲートの支柱に触れ、地面を強く踏みしめた。


「おい……なんだこの空気は。地盤が妙に締まってやがる。それに……」


 彼は森の奥、木々の隙間から見える「管理棟」を指差した。


「あのログハウス。……築何年だ?」

「元の建物は30年くらい前ですけど、昨日私がリフォームしました」

「昨日だぁ?」


 土門は鼻で笑い、ズカズカと管理棟へ歩み寄る。

 そして、私がCPクラフトポイントを使って一瞬で修復した壁や柱を、食い入るように見つめた。

 ペタペタと触り、継ぎ目を確認し、基礎の部分を覗き込む。


 その顔色が、次第に驚愕へと変わっていく。


「……ありえねぇ。継ぎ目がねぇぞ」

「え?」

「木材の接合部だ。釘もビスも使ってねぇ。まるで木そのものが『最初からその形だった』みたいに融合してやがる。……どんな宮大工がやりゃあこんな仕事ができる?」


 土門が振り返り、私を睨みつけた。

 その目は、獲物を見つけた猛獣のように輝いている。


「嬢ちゃん。お前、何をした?」


 食いついた。

 私はニヤリと笑い、システムウィンドウを開いた。

 そして、[ 住人名簿 ] の項目をタップし、[ 新規招待 ] を選ぶ。


「種明かしをしてあげます。……土門ゲンタさん、私の『国』へようこそ」


 【システム通知:土門ゲンタ を「住人」として登録しますか?】

 【 YES / NO 】


 私が【YES】を押した瞬間。

 土門の目が見開かれた。

 彼にも見えたのだ。私の頭上に浮かぶ「オーナー」の称号と、この土地を覆うシステムの情報が。


「な、なんだこれは……! 『聖域』……『防衛結界』……『クラフトメニュー』だと!?」


 彼は空中に浮かぶウィンドウを両手で掴もうとし、それが幻影でないことに気づいて震え出した。


「ここは、現実の法律も物理法則も通用しない場所です。私が許可すれば、あなたはここで、システムのアシストを受けながら『最強の建築』ができる」


 私は彼に近づき、手を差し出した。


「どうですか? 河川敷の掘っ立て小屋より、ここのほうが楽しそうでしょ?」


 土門はしばらく呆然としていたが、やがて「クックックッ……」と低い笑い声を漏らし始めた。

 そして、私の手を強く握り返した。

 痛い。骨が軋むほど強い握手だ。


「……最高じゃねえか。俺の腕と、この謎のチカラがありゃあ……核シェルターすら鼻で笑える『要塞』が作れるぞ!」


 交渉成立。

 私は心の中でガッツポーズをした。


 【システム通知:土門ゲンタ(建築士Lv.MAX)が加入しました】


     ◇


「よし! 契約成立ってことで、早速仕事だ!」


 土門は腕まくりをして、やる気満々だ。


「まずはインフラだ。電気がねぇと電動工具が使えねぇ。……発電機はどうする? 買う金はあるのか?」

「それが……高すぎて買えなくて」


 私が正直に言うと、土門は「ガハハ!」と豪快に笑った。


「心配すんな。俺の小屋に、現場で拾って直したガソリン発電機がある。型は古いが2キロワットは出せるシロモノだ。とりあえずはそれで凌げる」

「本当!? 神様!!」


 浮いた!

 発電機代の11万8000円が浮いた!

 私は感動で打ち震えた。これで予算を一気に食料と燃料に回せる!


「その代わり、ガソリンとプロパン、あとは飯だ。腹が減ってちゃいい仕事はできねぇぞ」

「任せてください! 車があるなら、何でも買えます!」


 私たちは再び軽トラに乗り込み、山を下りた。

 向かうはホームセンターと業務スーパーだ。


     ◇


 そこからは、まさに「爆買い」の時間だった。

 徒歩と電車では絶対に不可能だった重量物の買い出し。

 軽トラの荷台という最強の収納スペースが、私の欲望を解放させた。


「おら嬢ちゃん! 水は2リットルなんかチマチマ買うな! 20リットルのポリタンクだ!」

「はいっ!」

「米は5キロ? バカ野郎、30キロ袋を3つ積め! 俺は大食いだぞ!」

「はいっ! ……あ、カップ麺も箱買いします!」


 ホームセンターでは、ガソリン携行缶(20L)を2つと、カセットコンロのガスボンベを大量購入。

 業務スーパーでは、米、パスタ、缶詰、調味料を、カート2台分山盛りに積み上げた。


 【購入リスト(一部抜粋)】

 ・ガソリン携行缶&給油 …… 15,000円

 ・灯油ポリタンク&灯油 …… 5,000円

 ・米(30kg×3袋) …… 45,000円

 ・水(20Lタンク×5個) …… 10,000円

 ・缶詰・レトルト・乾麺(大量) …… 30,000円

 ・トイレットペーパー等の日用品 …… 5,000円

 

 【合計:約 110,000円】


 レジで万札が飛んでいくのを見ても、不思議と不安はなかった。

 むしろ、軽トラの荷台が物資で埋まっていく光景を見るたびに、興奮で脳汁が出そうだった。


(買えた……! これだけあれば、当分は生き延びられる!)


 帰り道。

 荷台満載の軽トラは、重そうにエンジンを唸らせながら山道を登っていく。

 助手席で缶コーヒーを飲みながら、私は夕焼けに染まる空を見上げた。


「……ねえ、おじさん」

「あ?」

「名前、なんて呼べばいい? 土門さん?」

「ゲンタでいい。……これから同じ釜の飯を食うんだ。堅苦しいのはナシだ」

「わかった。よろしくね、ゲンタ」


 横を見ると、強面の男が少し照れくさそうに鼻をかいていた。


 これで「衣食住」の「食」と「住(リフォーム担当)」は確保した。

 あとは……。


「……あいつらだな」


 私の脳裏に、残りのメンバーの顔が浮かぶ。

 天才ハッカーの引きこもり少年。

 家庭菜園マニアの精霊使い。

 そして、違法薬物を調合する白衣の女。


 まともな人間が一人もいない。

 でも、彼らがいなければ、この世界は生き残れない。


「さて、次は誰をスカウトしに行こうかな」


 私の聖域建国記は、まだ始まったばかりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ