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karte 2 : 秘密は、休憩時間に ④

 

    4

 

 掛けていたアラームが鳴り、ボクと先生は眠い目を擦り少し微睡(まどろ)む。

 先生はボクを抱き寄せて、唇を重ねる。

「…あ、先生、今日はもうあと3回しかキス出来なくなっちゃいました…」

 

 ボクと先生は、あのファーストキスの日から守っているジンクスがある。

 

「…え〜、キミちゃんと数えてたの?」

「当たり前です。先生に教えてもらった大事なジンクスですから」 

「……教えるんじゃなかったなー、こんな真面目さんに…」

先生はちょっとおどけながら困った顔をしていた。

 

「…付き合った最初の年は、キスは1日10回。次の年は11回。…先生とボクは今年で1日23回です。これを守ってると、絶対にお別れしないんですよね?」

「…うーん、でもさ、守らなくても、キミとボクなら別れるなんてことあるわけないでしょ?」

「………そうですけど……」

ボクの不服そうな様子を見て、先生は提案した。

「…わかった。いい方法がある。今は、あと1回だけキスをしよう。じゃあ、僕に任せて」

 そう言うと先生はボクにキスをした。


 ボクを深く強く求める長いキスに頭の芯が蕩け、身体が熱かった。

 

 長い間唇を重ね名残惜しく唇を離した。

 とても長い一回のキスだった。

 二人して息が上がっていた。

 

 どれだけ深く求めてもキスだけでは切なくもどかしさが募る…。

 

 すると先生がその先も求めるように、ボクの首筋にキスをした。

「……唇意外なら、数には入らないでしょ?」

そう言うとボクの身体に何度も優しくキスを落とした。

 それからボクたちは、お互いの身体の隅々まで慈しむようにキスを贈りあった───。

 

 

 午後の診察時間に間に合うギリギリにセットした最後通告のアラームが鳴った。

 

「この続きは今夜しようね、碧玖(りく)…」

そう言って先生はボクの唇にキスをした。

「あぁ!先生、今日はもうあと1回しか出来ないです…」

「大丈夫、夜中の12時を回ればまた一から数え直しでしょ?」

先生と顔を見合せて笑いあった。

 

「……先生、ボク、キスを数えるのやめようかな…」

「うん、随分前から僕達にジンクスなんていらないでしょ?僕と碧玖で叶えていけばいいだけだよ」

「…はい、一緒に叶えていきます」

「よし、碧玖おいで」

そう言って、ボクを抱き締めて何度もキスをした。

 

 

 ボクたちは大急ぎで支度を済ませて、家を飛び出した───。

 


 

*****

 

 病院には午後の診察開始を待つ人達がもう何組も来ていた。

 受付担当しているユリちゃんは時計をチラチラ見ては焦っていた。

 

『!!いくらなんでもここまでギリギリになっても院長も副院長も、戻らないなんて何やってるのかしら! … ()()かやってるのか?』

 ユリちゃんが院長に電話をしてみようかと考えていると、丁度二人が戻ってきた。

 

「院長、副院長、危なく遅刻ですよ!」

「いやぁ、ごめんごめん!」

「すみません…」

 そう言って通り過ぎる二人を見てユリちゃんはピンと来ていた。

 

『…いやいやいや、本当にあの二人、()()かしてきたね!?!したよね?』

 明らかに副院長の首筋に数箇所赤く充血した小さな痕があることに気付いた。午前中には無かったはずだ。

『そしてもう、二人から醸し出される雰囲気がエロい!!副院長なんて、蕩けた顔に仕上がってましたけどっっ!!午後診大丈夫か?色気撒く気か!…はぁ〜♡』

 一頻ひとしきり脳内で悲鳴を上げたところで、伝言があったことを思い出し、急いで院長の元へ向かった。

 

 

 ドアの前に行くとしっかり閉まっておらず、数センチ空いていた。ユリちゃんは何の気無しにその隙間に目を向けた瞬間!

 

『…!!』


 何と院長と副院長がマスク越しにキスをしていた!

 

『そう、絶対これはキス!』

 

二人の顔が離れた時、院長と目が合った!

 

「あ…」

「あ…」

 

 

 時が止まったみたいだった────。


 


✧••┈┈┈┈┈┈••✧


karte 3 : 一緒に歩もう(前編)へつづく

 

 



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