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karte 2 : 秘密は、休憩時間に ③

 

 

*****

 

 そして日曜日、お見合いから2ヶ月以上経って初めてのデートだった。

 

 ボクは高校の正門前で颯真(そうま)さんの迎えを待っていた。

 ボクは首の開いたTシャツに黒スキニー、髪型はウルフカット。ちゃんとその頃の流行りを抑えていた。

 

 待っている間落ち着かず、もしかしたら連絡が来てるかもしれないと思い、何度も携帯電話を確認する。空港から車で迎えに来てくれると言っていた。

 

 

 間もなく、颯真さんが迎えにきてくれた。ボクは嬉しくなって手を振った。

 促されて車の助手席に乗ると挨拶半分で言われた。

 

「お見合いの日は袴だったけど年相応でいいね」

 

「…それ、子供っぽいってことですか?」

 

 ボクなりに背伸びをしたつもりだったのに、年相応と言われるのはちょとがっかりした。

 ボクの頑張りは伝わっていないのかもしれない…。

 でも、颯真さんは微笑んで嬉しそうだった。

 

「音楽何が好き?」

 

「ボクより、颯真さんが好きなの知りたいです」

 

「じゃあクラッシックね」

 

「えっ…」

ボクは一瞬困惑した。

 クラッシックなんて聴いたりしていない…。やっぱり大人って違うのだろうか?

 

 すると颯真さんはニコニコ笑いながらボクを見た。

「なーんて、ほんとはGRe〇〇eNだよ!」と言ってボクの困惑顔を笑った。

 

 ボクは颯真さんの笑顔が嬉しくて笑った。

 

 颯真さんはドライブデートらしく、流行りの曲を用意してくれていた。

 

 

 窓から入る爽やかかな夏の北海道の風はボクの緊張を解き、軽やかな笑顔を引き出してくれた。

 目指すは札幌から約2時間、北海道のデートの定番であり、獣医師を志す彼らしく旭山動物園だった。ボクも生き物が好きで、とても楽しみだった。

 

 そして、運転する姿がやっぱり大人で格好良くて、ドキドキした。

 運転する横顔を見ては隣に居ることだけでも夢みたいだった。そして、この現実を噛み締めた。何度でも嬉しかった。

 やっぱりもう憧れとしてではなく、颯真さんを一人の男性として好きだと実感した。

 

 

 

 動物園は本当に楽しかった。

 どうぶつ達のこと、自分はどんな獣医師を目指しているのかを熱く語る颯真さんは生き生きとして楽しそうで、優しさに溢れていた。

 ボクは人間のお医者さんになりたいと常々思っていたけれど、颯真さんの心に触れて同じ獣医を目指す気持ちがこの時から芽生えた。

 

 その後旭川ラーメンを食べ、札幌に帰ってきたのは17時半頃だった。寮の門限18時に合わせて送られたことが分かった。

 

 ボクはまだ帰りたくなんかなくて、思い切って言った。

「外泊許可取ってあるんで大丈夫です」

 

「は……?」

 

「実家に帰ることにしてって親にも伝えてます」

 

 ボクは颯真さんの気持ちをしっかり掴みたかった。

 

「…だめですか?だってなかなか逢えないし…」

 

「いやー…、予約したのはシングルだしさ…」

颯真さんは困った顔をしていた。

 

「……えぇ……」

ボクは残念だった。

 

 颯真さんにはボクを心に留めておく気がないんだと思った。ボクは見るからにガックリと肩を落とした…──。

 

「……わかったから、変更するからちょいと待ってて…」

 

 ボクの落ち込んた様子を見て一晩一緒にいてくることになった。

 

 

 

*****

 

 ホテルの部屋に入るとセミダブルのツインルームだった。やっぱり僕のこと、好きになって貰えてないのかもしれないと思った。

 

 同室の先輩から教えてもらったのは、初デートでちゃんとエッチして、相手の気持ちも身体もしっかり掴めと言われた。初デートでみんな当たり前にそういう事をするとも言っていた…。

 

「先輩に貰ったんですけど、7個で足りますか?」

 

ボクは絶対颯真さんに好きになって貰いたかった。

ボクはカラフルなコンドームが入ったコンビニのビニール袋を手渡した。

 

颯真さんは冷静にボクに訊ねた。

「経験あるの?」

 

「無いです。何もしたこと無いです」

 

 ボクの初恋は颯真さんなのだから当たり前だった。ボクは颯真さんとだから、そういう事を…、愛し合いたいと思った。

 

 

「…あのさ、する気ないよ」

 

ショックだった。ボクの気持ちは受け取って貰えないのだろうか…。

 

「ボクが子どもだからですか?」

 

「そう。あとそんなに作業的なのすっげぇ嫌」

 

 ……ボクは本当にショックだった…。ここまで来てずっと憧れていて好きになった人に拒否されるなんて思ってもみなかった。やっぱりボクのこと好きじゃないんだ…。婚約なんて破棄されてしまうのかもしれない…。ボクの好きなんて全然届いてなかった…。

ショックで項垂うなだれ、身体が動かなかった。


 ボクの落ち込んだ様子に颯真さんが「作業的は言い過ぎだった」と謝って、僕の肩を抱き寄せた。

 

 ボクはうつむいたまま、ずっと心にある颯真さんへの気持ちを絞り出すように口にした。

 

「……好きです…」

 

 その一言が精一杯だった…。

 

「うん、わかった。ありがとね…」

 

 そう言うと、颯真さんはボクに顔を寄せて、慰めるように触れるようなキスをした…ような気がした。

 

 ボクは何があったのかよく分からなかった。ボクは涙を堪えながら言った。

「…すみません、なんか」

 

「ん?」

 

「なんかよく分からなかったから、もう一度お願いします」

 

 ボクはファーストキスを心にしっかりと焼き付けたかった。好きな人とのファーストキスなんて、一生の宝物だ。

 

『そう、焼き付けたい』それならと思って颯真さんにお願いしてみた。

 

「あとで見返したいから、写メ撮っちゃダメですか?」

携帯を用意して言った。

 

 しかし、携帯は取り上げられた。

 

 写メのお許しは出なかったけれど、颯真さんはボクの顔をぎゅっと掴み、これでもかと言うように深い大人のキスをした…。

 ボクはこれはこれでやっぱり、触れるようなキスを飛び越えた大人なキスも、何が何だか分からなかった…。

 嬉しい気持ちと、このキスは慰めのキスだったかもしれないという切なさが残った。

 

 ボクのファーストキスはロマンチックにはいかなかったけれど、それでも一生に一度の最高の思い出になったことには変わりなかった。

 

 ボクと颯真さんの一生に一度しかない初デートも、颯真さんとのファーストキスも、颯真さんとの全ての初めてはボクの心の奥深く、宝のありかにしまってある───。




✧••┈┈┈┈┈┈••✧


karte 2 : 秘密は、休憩時間に ④ へつづく





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