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karte 2 : 秘密は、休憩時間に ②

2

 

 休憩時間、自宅へ帰った二人は慣れた手つきで残ったご飯をチャーハンにし、昨晩残しておいた野菜たっぷりのスープを添えた。

 チャーハンの香ばしい香りが食欲をそそる。

 

「いただきます」

二人はいつものように軽く手を合わせて言った。

 

「うん、やっぱり先生の味付けは最高です」

碧玖(りく)はにこやかにチャーハンを口に運ぶ。

「碧玖ちゃんの、お口に合って何よりです♡」

颯真(そうま)は嬉しそうに、パクパクと美味しそうに食べている碧玖を見つめた。

 

 午前の疲れた様子の碧玖が元気を取り戻したのを見て安心した。

 

「食べ終わったら、少し昼寝しようか」

「そうですね。寝不足解消しないと、午後の診察に影響しては困りますね」

 

 

 昼食後、手早く食器を洗って片付けを終わらせ、歯を磨いて二人はベッドルームへ向かった。昼間でも仮眠がとりやすいように遮光カーテンを付けていた。

 二人の身長に合わせて選んだベッドは海外製の大きいベッドだった。

 190cm近い二人でもゆったりと横になれる。

 当たり前に颯真が腕を広げると碧玖はすっぽりとそこに入り込んだ。パズルのピースが(はま)るように居心地のいい、一番安心するこの場所でまた元気を取り戻す。

 二人微笑みあってキスを交わした。颯真の男らしい落ち着いた香りに包まれ碧玖は眠りに就く。


 


 ボクがまだ高校生で寮に住んでいた頃は、シングルベッドから足がはみ出さないように身体を小さく折り曲げて横になっていた。ボクはまだこんな落ち着く場所を知らなかった。寝むれない夜はそのままベッドから見える窓の外を眺めていたのを思い出す。

 

 先生を想ったあの頃の夜空は、ボクの一番切ない想い出かもしれない…。

 

 あの頃、ボクは——。

 

 

 

 

     3

 

 お見合いから数週間経っていた。

 

 消灯の終えた部屋でボクには小さいベッドに寝転がり、カーテンを少し開けて夜空を眺めながら颯真(そうま)さんを想い出していた。今となってはお見合いで逢えた時間は幻になりつつあった。しかし、あれからボクの心には颯真さんが想い出されてならなかった。

 

 ずっと憧れていたあの人と、ボクは結婚の約束をした。その現実をまだ受け止めきれていないかもしれないが、明らかにボクの心は恋というものを知ってしまった。

 彼を想い出す度に胸の奥が熱くなりキュッと苦しくなる。苦しく切ないのに、嬉しさと幸福感が湧いてくる。こんな感覚は初めてだった。

 ボクは憧れとして追っていた彼に恋をした。

 これはきっと初恋だった。

 


 今度はいつ逢えるのだろう。ボクは高校での勉強と部活で忙しく、彼は獣医に向けての勉強とアルバイトで多忙だった。

 何よりの問題は、ボクは北海道の高校生で、彼は関西の大学生だった。とてもすぐに逢える距離では無かった。

 遠距離恋愛という言葉があるけれど、ボクと彼はそれに当たるのだろうか?

 

 ボクは颯真さんを「恋しい」と想っているけれど、彼はボクのことを「恋しい」と想ってくれているのだろうか?そもそもボクに恋をしてくれているのだろうか?

 お見合いで二人きりになった時は冷たい感じさえしていた。わざと身体の関係について質問したり、牽制しているようでもあった。子供相手に本気にはならない、そんな気持ちから来ているかもしれないとも思った。

 

 ボクたちは婚約はしたけれど、好きだとか、愛しているだとか言い合ったわけではなくて、彼の本当の心の中は知らないままだ。きっと今はまだボクの片想いだ…。

 この恋心と、逢いたいと募る想いがボクだけのものかもしれなくて我慢していたけれど、携帯電話を手にとった。

 

 [件名] 次はいつ会えますか

 [本文] 何月になったら会えますか

 

 この頃はまだスマートフォンは発売されたばかりで普及していなかった。ボクはガラケーでメールを打った。

 

 こんな短いメールを打つのにも何度も考え直して打ち直した。送信のボタンを押すには胸の鼓動が速くなって苦しさに手が震えた。

 

 

 

*****

 

「おー!今度の日曜デートなの?」

 

 寮で同室の先輩に思い切ってデートに行くと言ってみた。

 この先輩はボクが入学したばかりの時、冗談を真に受けるボクを面白がって、時々わざと嘘の寮のルールを吹聴してきたりもしていた。でもちゃんと、「碧玖(りく)信じすぎだよ」と笑いながら訂正はしてくれて、ボクも一緒に笑った。

 この一個上の先輩は親切で話しやすくて、ちょっと面白い人だった。

 

「ボク、デートするの初めてなんです。ちょっと緊張します」

「最初のデートは肝心だぞ。それも遠距離なんだろ?しっかり好きになってもらわないと続かないからな!」

「なるほど、そうですよね。でも、どうしたらいいんですか?」

ボクは身を乗り出して聞いた。

「ちゃんと、初デートで気持ちを掴む方法教えてやるよ!」

 

 そう言って先輩は色々ボクに教えてくれた。そして、持って行くのがマナーだからと、小さなコンビニのビニール袋を手渡してくれた。

 

「初デート、頑張ってこいよ!」

「はい、ありがとうございます」

 

 先輩はやっぱり親切だった。

 

 



✧••┈┈┈┈┈┈••✧


karte 2 : 秘密は、休憩時間に ③ へつづく

 






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