karte 2 : 秘密は、休憩時間に ①
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穏やかな青い海、波の音と潮風が通る道。僕らの毎日がここにある——。
ここは『あおぎり動物病院』。兄弟二人で開業している。
「碧玖の縫合は本当にいつも綺麗だね。これならたまちゃんの傷跡も残らないんじゃないかな」
「上手く出来て良かったです。最近先生が教えてくれたことがしっかり身に付いたと思います」
「碧玖謙遜しすぎだよ。前からキミは上手だったよ。もっと自信持って、ね?」
颯真が碧玖の背中をポンと優しく叩きニコリとすると、碧玖もニコリと返した。
「…、碧玖喉乾いたんじゃない?良かったらこれ飲んで」
そう言って颯真は自分の飲みかけのコーヒーを手渡した。なんの躊躇も無く碧玖はコーヒーを口にした。
目の前で当たり前に繰り広げられるそのやり取りを、片付けをしながら看護士ユリちゃんは空気の如く目にしていた。ユリちゃんは、猫のたまちゃんの術後チェックに部屋を出た。そして「一体何を見せられてるのかな」と、呆れたように小さく溜息をついた。
ユリちゃんは副院長があんな風に自然な可愛い笑顔を向けるのは、院長しかいない事に気付いていた。それに当たり前に飲み物をシェアするのもだ。
部屋に二人きりになると、急に甘い空気に包まれた。
「碧玖お疲れ」
そう言って颯真は碧玖を優しく抱擁した。
「うん、ちょっと疲れました…」
「昨夜は夜更かししてしまったし、寝不足もあるかな…?」
「はい、それもあると思います…」
碧玖は身体を預けるように颯真に寄り掛かった。
*****
「怪しい!!断じて怪しい !!」
「どうしたんですか?ユリちゃん先輩?」
動物病院休憩室にて、看護士ユリちゃんとその後輩看護士ナミちゃんはお昼休憩中だった。
「院長と副院長!私のセンサーにめちゃくちゃ引っ掛かるの!」
「センサーですか?」
「そう、この腐女子センサーにっ!」
「先輩BL好きですよねー」
「ナミちゃんは何とも思わないの?あの二人を見ていて!」
「…あー、とっても仲良いなぁって思ってますよ。距離近いなーとか…??」
「ナミちゃんは先ず勉強のためにこれを読んで!」
そう言ってマンガ本を手渡した。
「…兄弟BL…」
「そう!」
ナミちゃんはパラパラとお弁当片手にその場で読み出した。
ガラガラ!休憩室のドアが開いた。
「…お疲れ様です」
午後からシフトの一番年下の看護師アイちゃんが出勤してきた。
「いい所に来た!ねぇねぇ、院長と副院長怪しくない?あれ、付き合ってるでしょ?」
「…すごい、いきなり核心から入りますね。…まぁ、私の中ではもうカプ確定してますけど」
メガネをクイッと上げた。
「さすがアイちゃん!だよねだよね〜」
「まぁ、もう見るからに、ですね。私的には院長×副院長の並びです」
「分かるぅー!私も同じ見解。院長はスパダリワンコ攻めで、副院長はツンデレ美人受けじゃないかと!」
ユリちゃんは目を輝かせながら、祈るような乙女なポーズで言った。
「本当なら私的には年下攻めが好きなんですが、身長高い方が受けというのも味わいがあって良きです。ツン強めいいですよね」
アイちゃんは顎に手を添えて分析するかのように早口で話した。
「話がわかるな、アイちゃんは!」
黙ってマンガを読んでいたナミちゃんが口を挟んだ。
「あ!ここ、このシーン!この前見た院長と副院長みたいですよ…、なるほど、ちょっと分かってきました…」
ユリちゃんは推理するかのように落ち着いた口調で話し出した。
「…私、幾つか引っ掛かっているんだけど、身長は二人とも高いのは共通してるけど、顔のタイプとか、骨格とか、全然似てなくない?手とか爪も違う印象だし…」
すると今度はアイちゃんが被せるように言い出した。
「それも分かります。でもそれぞれが父母に似ていたら有り得ますよね…。私が引っ掛かっているのは話し方です。院長は時々、関西訛りやそういうノリみたいなのを感じるんです。でも副院長からは全くしません…。別々に住んでいた?でも、帰省の話しとかを聞くに、別々に住んでた説は無いと思うんです…」
そこにナミちゃんが眉間に皺を寄せながら口を挟んだ。
「二人とも、見てる所が細かすぎてコワイです…」
「腐女子やってると、推理力上がるのよ。男同士の友情から勝手に恋を嗅ぎ取って楽しむくらい逞しくなるから!」
「…ブロマンスもいいですよねぇ…」
アイちゃんは腕を組んで唸るように返した。
コンコン!看護士用休憩室のドアがノックされ、扉が開いた。院長が顔を出した。
「お昼休憩、副院長と一旦家に帰るから、もし何かあったらケータイに電話して!よろしくね」
「あ、はい、分かりました」
あおぎり動物病院のお昼休憩は13時から16時の3時間あり、院長と副院長は自宅で過ごすことが多かった。自宅は病院から目と鼻の先で、一本裏手の道にあった。
「今日も仲良くお二人でご休憩入られました〜」
「ちょっとアイちゃん!その言い方意味深♡妄想捗るからやめて」
そう言いつつ、ユリちゃんは嬉しそうに笑っていた。
「院長と副院長ってば、おうちで何するのかしらねぇ?」
ユリちゃんはわざとらしくアイちゃんにニヤリと目配せした。
「ナニですかねぇ…?」
アイちゃんは含みを持たせニヤリと返答した。
そしてこの後も、分かりそうで分からない院長と副院長の関係性に二人は頭を悩ますのだった。
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karte 2 : 秘密は、休憩時間に ② へつづく




