著しく衰退した魔法は手品と見分けがつきません
1000年前、実在されたと語られる大魔術師マギア。
史跡に遺された記録に曰く、その男の灯した火は聖火の如く掻き消えることはなく、雨を降らせば大陸を潤し、風はあまねく草花を揺らし、嵐があれば山を作り上げ、天雷を以て空を晴らしたとも。
人間でありながら500もの年月を生きたとされ、数多くの記録から存在こそは認められどもその生涯は今や伝説のように語られている。実際、この話をまともに信じるものはいないだろう。実在はしたかもしれない。しかし、その魔法とやらは今となってはすこぶる怪しい。今となっては、彼は優れた知恵を持った賢者だっただけなのでは?という見解が主だ。とはいえその見解も過去で言えば、というおまけがつく。何故ならマギアは永い人生の末、こんな言葉を残したとされるからだ。
――我が生が疑われるとき、我は再びこの世に姿を現して見せよう――
そんな物を知らぬ人間の見るおとぎ話。晩年死に怯えたマギアが言い残した最後の見栄。甦りなど人間にできるはずもない。賢者の遺言は存外くだらないものなのだと歴史学者たちはそろって失笑を浮かべたものだ。
まさか、本当にマギアが生き返っているなんて知りもしないまま。
◇
青い空に雲のような純白の鳩が飛ぶ。少女の被る小さなキャスケットから飛び出したそれに、往来の観客たちが驚きの声を上げた。そのまま低く飛んでいた鳩は少女の手元に止まるとご褒美がわりの木の実を啄む。その動きから鳩が作り物とは到底思えない。また観客たちから小さく歓声が漏れる。その様子を眺めてから少女はニヤリと口角を上げて、仰々しくもう片方の手を挙げた。
「1、2、3」
指が順繰りに持ち上がっていくのを観客たちは小さな緊張感とともに見つめた。昼間の街中だというのに、こくりと誰かが唾を飲む音が聞こえる。緊張のピークになった瞬間、少女の腕に止まっていた鳩が翼を広げて飛び上がり再び空へ登ったかと思うと、ぽん、と可愛らしい破裂音と共に弾けて羽と同じ白の花弁に変わる。わぁっと広がる今日一番の歓声。波のような拍手に少女は満面の笑みと共に胸を広げて、どこか気の抜けた声を上げた。
「ありがと〜、ありがとォ、ございましたァ〜ん」
その声にまた拍手が大きくなる。少女の足元の鞄にはちゃりちゃりと不規則にコインが散らばる音。しばらくその音が通りを賑わせて、やがて波が引いたように観客たちが散っていく。老若男女、その幅は広いがなべて全員が楽しそうな笑みを浮かべていた。それを少女は満足そうに微笑んで見つめ、行儀悪く鞄の前に腰を落とす。入っているコインは大抵が最小価値のものであるがチリも積もればというやつで、少なくとも今日を食いっぱぐれることはないお値段になりそうである。
「んん〜今日も上々!屋台制覇もすぐだなこりゃ」
そのまま鞄を締めてしっかりと鍵を閉める。そして万が一にもスリ取られないように細工をひとつ。少女以外が手に取れば途端にひどい電撃が走るものを。
もちろんこんなもの、手品でなどではない。先ほど観客たちを喜ばせ、楽しませていたものも同じくだ。
それは魔法。今はもはや失われた古代の神秘。
少女の魂の銘はマギア。1000年の時を経て自分の遺言通りに生き返ってみせた正真正銘の大魔術師――だったものだ。マギアは自らの魂を現世に固定化し、実在、あるいは偉業が疑われた時最もマギアの魂を受け入れるに相応しい嬰児へ降ろすという、成功はその時になってみないとわからない大魔術をかけて眠りについた。そして成功した。マギアは真実天才であった。伝承に語られる学者たちが揃ってありがちな脚色だろうと失笑した術の全ては、前世のマギアがやってのけた嘘偽りない大魔術なのである。
そう、マギアの大魔術は成功した、したのだが。ここで思いもよらなかった失敗にぶち当たったのだ。
生前と性別が違う?否、そんなものは問題ではない。所詮壁画では自らの姿など後世には残るまいと身体には頓着しなかったマギアだ。転生体が女だろうと男だろうと、醜い顔であろうと気にしなかったろう。しかし、ここに来てその軽率さに頭を抱えた。
「たった1000年」で、人間は魔術を使えなくなっていた。まさに、青天の霹靂である。
大前提として、偉大な魔術師となるのに必要なものは残念ながら努力ではない。生まれ持った才能、財力、そして、魔力を扱える身体だ。目に見えずとも大気に存在する魔力、それを身体のうちに取り込み想像と共に成型し、実体化したものを外に出す。これがざっくりとした術の成り立ちだが、なんと現代の人間はその魔力を取り込むという身体の機能がすっかり衰退していたのである。
魔術魔術という中であえて現実的な話をするが、転生したといっても急に身体の器官が発達するわけではない。所詮は魂、記憶と精神のかたまりだ。例えば獅子を片腕で締め殺せるような益荒男がひょろひょろの一兵卒に憑依したところでいきなり大国の敵将をけちょんけちょんにとか、到底無理なのである。
人の急所は分かる、身体の動かし方も分かる、けれどそれを実現させるだけの体力、膂力、身体能力が全くない。知ってるから分かる、なんて、筆記の試験をやっているわけではないのだ。人間は愚かではないが、身についてないことを知識だけでやれるほど賢くもない。つまり、転生したからといっていきなり強くなるわけではない。マギアもそこは織り込み済みだったがここまでの劣化は想定外だった。
対策をしておけという話だが、流石のマギアも自分の身体を完全に保存するのは難しかったのだ。長寿の真相だって老化を通常の1/10にするという魔術で500年生きていただけであるし、蘇りだってもう一回人生を謳歌したいとかそんな欲望からではなく、大魔術師マギア様を忘れるとは何事かと後世の人間を怒鳴りつけ、腰を抜かしてやりたかっただけの仕様もない悪戯心なわけで。ぶっちゃけると天才だからやれる気がする、という全く後先考えない企みであったのだ。
さて。脱線した話を戻すとマギアの魂が宿った体も例に漏れず魔力を十全に扱える体ではなかったのだ。マギアの魂に順応したといっても都合よく天才の体なんて虫のいい話はない。
そしてここで、幸運なことと、不幸なことがあった。
まず幸運なことは、まったくもって魔力を扱えないというわけではなかった。なので、少女のマギアもやろうと思えばこのように火を灯せるのである。
もっとも、かつてのように消えない火でも、大陸を埋め尽くす火でもなく、単に薪が無くてもつけられる精々が料理用の火、というものだったが。
「……だからッ、なんだってんだッ!!」
あまりの無力感にマギアは力いっぱいに地を叩いた。不幸なことは、マギアは自分の魔術に誇りを持っていた。こんな誰でも起こせるような火を魔術と言うのはプライドが許さない。誰もができるものは奇跡とは言わない。苦労せずにマッチを擦れば火をつけられる時代となった今、火をつけることなどたいしたことではない。マギアは突っ伏していた顔をよろよろと持ち上げて手のひらの上に浮かべた青い炎を恨めしく見つめた。
「こんなチンケな火じゃ手品みたいなもんだぜ……」
深く重くため息をつく。手品、それは神秘の奇跡が当たり前だったマギアの時代栄えるはずもなかった現代の娯楽。手先のテクニックと人間の思考、思い込みなんかを利用して思いもよらない光景を作り出すもの。大袈裟にいうと現代の魔法とも呼べるかもしれない。もはやマギアの魔術はその程度のグレードであった。これでは学者連中の前にどどんと姿を見せても手品だろうと一蹴されるのがオチだ。もっとも、マギアの魔術にタネも仕掛けもないのだけれども。そこまで鬱々と考えて、マギアははっと目が醒める心地となった。
「え?つまり丸儲けってこと?」
そう。ついでの幸運なことは、マギアはめちゃくちゃ立ち直りが早く、相当ポジティブであったことである。
そんなこんなでマギアはあっさりと現代風の「魔術師」、要するに手品師に転身を果たしてみせた。真面目に芸を磨いている手品師からは憤慨もののイカサマであるが、バレなければイカサマではないし、バレたところで何を隠そう自分こそマギアである、と声高に名乗りをあげればよいわけで、どう転んでもマギア的にオイシイのである。
そして生前よりマギアは人を揶揄うのが殊更好きであった。なので、魔術に目を白黒させる人々を見るのは楽しかったし、今の生活にはあっさりと馴染んだ。自分の本当の魔術はこんなものではない、と忸怩たる気持ちになるのも二度三度ではないけれど、それでも思いつきでやったにしては生まれ変わりも悪くないなと思える暮らしであったのである。
「ま、オレとしちゃあこう、もっとオレ好みのおなごに生まれ変わりたかったなァ。こう、骨太で背が高くて、バカな男の扱いを知ってるような、でるとこ出てるネェちゃんとか……」
「マギア!」
硝子に反射した自らの姿を目に留めてマギアは顎を摩った。そこには生前のような無精髭は当然なく、まだ幼さの残る少女らしい輪郭が映るのみだ。ぼやきからもわかる通り、生前のマギアは女にだらしなく、適当で、いい加減な男であり、歴史に見えるような大魔術師としての姿はよそいきもよそいき。魔術については脚色0でも人柄については相当頑張って整えました、という感じの人間である。それが今となってはこのように可憐な少女。見た目は大変愛らしいのに口を開けば中年のような発言ばかりなので、男からも女からもやや遠巻きにされている。余談だが同性だから女の子といちゃつき放題と喜び勇んでいたマギアは女性達の引いた眼差しにそっと枕を濡らしたという。
しかし、そんなマギアにも声をかける物好きは一応いるわけで。マギアは後ろからの声に振り返り、面倒そうに目を眇めた。
そこには息を切らせて前屈みに膝に手をつく青年の姿。上下する肩を見るにマギアを遠くから見かけて全速力で走ってやってきたのだろう。一度大きく息を吐いて上げた顔には簡素な服を着ていても隠しきれない品がある。マギアは男には興味がないのでしっかりと確かめてはいないが、発音の滑らかさから見てもしっかりとした教育を受けているように見えた。
「きょ、今日のショー、終わっちゃった……?」
「おう。残念だったな坊ちゃん、まった明日ァ〜」
「えっ、じゃ、じゃあ、明日、この時間にくれば見られるの!?」
「さァてそいつはオレの朝の機嫌次第だ」
「うう……」
青年は残念そうに肩を落とす。マギアがこの街にやってきて数日かそこらのとき、観客にいたのがこの男だ。他の観客同様に目を輝かせてマギアのショーを見ていたが、お開きになってマギアが金勘定をしているところに寄ってきてあれやこれやと質問を浴びせてきたものだ。世間知らず故か、堅物故かはわからないが、すっかりマギアの魔術、もとい手品に魅了されたらしく毎日のようにやってくる。
固定ファンがついた嬉しさはあるが、内心めんどうだなとため息をつく。なにせこういうことは一度や二度ではない。繰り返すが、マギアは黙ってさえいれば可憐な少女なのだ。より平たく表現すれば年頃の可愛い女の子、というやつである。長じて美貌が明らかになるたび、周りには男が集まってきた。なんだかなぁと頭を掻く。男という生き物のバカさは己のことも踏まえてよく知っているけれど、いくらなんでも見た目ばかりなのは動物的すぎると思うのだ。口を聞くのが初めてならまだしも、この男は何度も何度もマギアに会いに来る常連であるからして。
「坊ちゃんよ、オレぁ流れの旅芸人だ。もう数日もすればこの街から出る。あんま入れ込むの、良くないぜ」
「えっ」
「あ?違ったか、すまんすまん、なんかお前さん、オレに惚れちゃってんのかな?とか思ったからさ」
「なっ、なっ、な、なな……」
「や、こいつは失敬、流石に弁えてらァな」
「いっ、いや!ちがっ、ちがく、ないっ!」
マギアの突然の言葉に青年は固まって、それからゆっくりと顔を赤くしてあたふたとしだした。それにマギアは他人事のように初モノくんだったかぁと憐れんだ目を向ける。ああなんて可哀想に。マギアの姿形が可憐であったばかりに青年の目を曇らせて、初恋を中老の男に捧げてしまうなど。ひとでなしのマギアとて同情を禁じ得ない。性的嗜好がせめて歪んでくれるなとそっと祈りを捧げていたところ、意を決したような顔で青年が一歩前に出て、真っ赤に熟れたまま裏返った声を出した。
「す、好きだ、マギア」
「そっかー。オレ女の子が好きだから。じゃね」
「えっ……いや、いやいやいや!待って待って!待ってよ!」
「なんだよ、断ったろ」
「う……その、でも、あの……と、友達、では、いてほしくて……」
あっさり袖にしてさくさく屋台通りへと進もうとするマギアに回り込んで、青年はもにょもにょと続けた。その様子にマギアは半目で顎をさする。要するにこれはよくあるアレではなかろうかと。
「ははーん。さては友達付き合いしてけば今は意識してもらえてなくてもいつか、とか思ってるな?どっから来ンだよその根拠ない自信はァ。今断ってんだろ」
「ちっ!」
違うとぶんぶん首を振る青年に、マギアは大袈裟なほど肩をすくめた。お友達から始めてもらえませんか、という男がいるが、まず男の目指す終着点が恋人である限り下心満載の提案であるわけで、そこに友情など生まれるはずもない。それをマギアはよくわかっている。だって若い時、油断させるためにやってたから。実際に、自分が。
しみじみ思い出しながら頷いている間、りんごのままの青年はあわあわと何やら弁解を繰り返していたが、もはやマギアに届かない。今マギアの関心は試したい屋台の料理にしかなかったのだ。
何故だかついてくる青年を流しつつ、ずんずんと足を進める。気になる屋台を制覇したら街を移動する。それがマギアのルールだった。どんな居心地のいい街だって、余所者に冷たい街だってそうしている。なにせ一つ所に留まってはちっぽけな数の人しか驚かせない。生前からマギアは根無草で、どれほど位の高い者に乞われても、どれほど恐ろしい荒くれ者に脅されても、どれだけ好みど真ん中の麗しい美女におねだりされても――最後の例えでは三日三晩唸りながら死ぬほど悩んだとしても、一つの国に留まったことはない。つまらないなと笑って別れて、それっきり。この生でも同じように生きるのだろう。前世より随分短い一生になるだけの違いだ。マギアという人間はただ笑って生きていく。その傍に誰も残らなくても。
「……ねぇ、マギア。本当に行っちゃうの?まだ一月も経ってないじゃないか」
「一週もいれば十分だろ、流れで隣町に行くだけの話だぜ」
「じゃあ、その次は?もっと遠くに行ってしまうんだろ?もう少し、もう少しだけ、いてくれないか。秋になれば収穫祭だってあるし、賑やかなんだ。君のショーがあればきっともっと盛り上がる」
「益がねえな。大体祭りなんざどこだってやってるだろ」
「…………」
マギアの冷たい返事に俯く青年。芸人にとっては街を移動するだけのこと。しかし、この青年にとってはそうではない。要するに、彼は簡単にこの街を離れられない立場にあるのだ。それだけでなんとなく察せられるものがある。深入りをするつもりはないのだが、こればかりはこちらにも関係があるし言っておいた方がいいだろう。辺りを見回せばいつの間にやら人気の少ない通りの道、屋台で買った串についた肉をしっかり舐め取って、マギアは振り返らないままで串を後ろに向けた。
「ところで坊ちゃん、あの兄ちゃん方はお前さんのオトモダチか?」
「……え?」
青年の浮ついた瞳の熱が一瞬で引く。マギアの指す方にゆっくりと視線だけで振り返ると、そこには大柄な男が二人、逃げ道を塞ぐように立っていた。
その眼光の鋭さといったらただものではない。旅人を装うローブの下には、しっかりと剣がぶら下げられている。大柄でありながら気配を感じさせなかったのは、きっとその仕事ゆえであるのだろう。さっと顔色を無くした青年は、マギアを庇うように立ち、苦々しげに呟いた。
「つけられていたのか……!」
「不用心だねェ、毎日のようにオレに貢ぎに来るからよ」
「マギア、気が付いていたのか!?」
「あんだけ彷徨かれたらな。いい加減うざったいからここ出る前に片したかったのよ、オレも」
うんざりと吐き捨てて、マギアも男たちを眺めた。ここ数日、ショーの様子を遠巻きに伺っていた連中だ。もちろんマギアの魔術、もとい、手品に関心があるわけではなく見ていたのは観客達。要するに彼の動向を探っていたのだ。そしてどうやらその彼がマギアに惚れ込んでいるらしいことを向こうも察して、このように二人で歩いているところに仕掛けてきたのだろう。
狙いは良い。何せ女というお荷物がある、それを庇いながら刺客をいなすのは至難の業であるし、ここで女を見捨てればこの誠実そうな男の化けの皮を剥がしてやったと喚き立てることができる。おそらくは良いところの生まれの男だ、きっとゴシップとして相当役に立つだろう。
だが、それはその女が見かけ通りの小柄で、可愛らしく、どこか儚げな、守ってやりたいと思う美少女であった場合の話である。悲しいかな、中に入っているのはそんなおとなしいものではない。マギアはここ数日この刺客どものせいで大層ご立腹であった。このマギア様のマジックショーに驚き喜ぶでもなく、可憐さにため息をつくでもなく、仕事のターゲットを探していた上、いい人質が見つかったとまで思われていたのだから。バカども、もっとオレを見ろ!と叫んでやりたかったのは二度三度のことではない。そこかよ、と突っ込みが入るだろうお気持ちだが、マギアにとってはそこである。
片手に遊ばせていた串を空に放り投げる、それからゆっくりと入れ替わりに落ちてきたのはマギアの手にしっくり馴染むナイフ。抜き身の刃にも臆することなく逆手に捕らえてマギアは男達に挑発的な笑みを浮かべた。
「しけた客だがショータイムだ。有金全部もらっていくぜ」
「……小娘が!」
男の一人が苛立ったように一歩を踏み出す。その言葉に乗せた怒りはフェイク。踏み込んだ足の速さと迷いのなさに流石はプロ、と口笛を吹く。片方の男は言葉もなく青年の方に斬りかかり、意外にも青年はそれをかわした。マギアは青年に庇われていた範囲から一歩引いて腰を落とす。マギアに向かってきた男は壁を蹴り、青年を飛び越えてマギアへと降りてくる。剣は抜かれている、だがそれを振り下ろす気配はない。あくまでまず、捕まえるため。中々いい手先を雇っているなと、感心しつつマギアはあえて、男を待つ。
さて、ここでひとつ、復習だ。
マギアは一人の旅芸人としてそれなりの街を歩いてきた。若い女の一人旅である。いつでも道に宿屋があるわけでもなく、泊めてくれそうな家があるわけもない。たまには一人、森や林やらで野宿をすることもあった。女がそんな旅ができるほど現代の世界は優しい……なんてことはもちろんなく、山賊やら奴隷商人やらはそこらにいて、恐ろしいのは人だけでなく野犬もある。護衛の一人も雇うのが当然だし、雇っていてもふたりきりの野宿などもってのほか。悪い気を起こしたその護衛に、あわれ花を散らされることもあろう。特にマギアほどの美少女であれば。
そんな中、なぜマギアはぼんやりときままな旅をしてこれたのか。答えは簡単である、普通に結界を張っていたからだ。
かつては神の雷でも落とされなければ破れない結界を国一つ分に楽々と張れたものだけれど、今となってはテントくらいの大砲をぶち込まれない限りは壊れないくらいの脆い結界しか張れなくなっていた。侘しさにひっそり涙目になるマギアを、とびきりの商品や餌がいるというのに謎の見えない壁に阻まれて地団駄を踏む者たちがこれまた涙目で見ていたのである。
なお、天才すぎることと性格のアレさでそこそこ敵がいた頃のマギアであれば悔しがる暗殺者連中を結界の向こう側からやーいばーかあーほと一晩中煽っては笑っていたので、その悔しさ無念さをよく察していただけるだろう。
そんなわけで、マギアは基本的に誰からも傷つけられることはないのである。だから男が落ちてきても壁にぶち当たるだけ。その隙を突いて、マギアはナイフを振るえばよい。そう、それでよかったはずなのに。
「危ない!」
「は?」
ここで起きてしまった問題は、たまたまついてきてた男はマギアをただの「女の子」と思ってしまっていたことで、その男には真っ当な青臭い正義感まで備わっていたことで。そんな青年がみすみす淡い想いを抱いている少女の危機に飛び出さないわけがないということで。
結果、予想しない人間の乱入にマギアを狙うはずだった男の刃がざっくりと青年を斬ってしまったのだ。飛び散る鮮血、男も流石に動揺したように見えたが本来の目的としては棚ぼたであっただろう。目の前でゆっくり崩れ落ちる青年にマギアはゆっくり瞬いて、現状を理解した瞬間、沸騰したように叫んだ。
「……ってオォイ!バカ坊主!何してんだボケ!」
「よ、よかった、マギアが、無事で」
「るせェ!クソッ、置いてくりゃよかったァ!」
本当に嬉しそうに笑顔を浮かべるすっとこどっこいを怒鳴り散らし、マギアは手を振るって煙幕を張る。それからすぐに身体強化。大きな「お荷物」をかかえあげて路地を全力疾走する羽目になってしまったのである。
入り組んだ路地をあちらへこちらへ、迫る気配に足止めついでの火炎やら雷撃やらを飛ばしての鬼ごっこを半刻ほど。お荷物の治療をしつつの全力なのでマギアも少し息が上がってきた。昔であれば、一日中美女を抱えて空を飛んだって、疲れもしなかったのに。むしろ元気が湧き出してきたのに。不甲斐ない現実にまたマギアが静かに悲しみを募らせていると、すぐ近くからひっそりと夢を見るような声がした。
「……マギアの手品は、魔法みたいだね」
「…………!」
こんな時に何をいうんだと叱りつけたくなる気持ちが一瞬で白くなる。マギアの手品が魔術だと見破ったわけではない。このぼんやりした青年にそんなことはわからない。今だって、傷が癒えはじめていることに気が付いていないで、自分がこのまま死ぬものだと思い込んでいる。だから、最期の未練を残すまいとマギアの魔力を手繰る指先をうっとりと見つめながら幸福そうに呟いただけ。
もはや魔術や魔法が本の中の存在でしかなくなった今の世で、魔法はすなわち「ありえないもの」を指す。マギアの時代では、当たり前にそばにあったもの。もはや今は遠く、星のように輝く過去の光。マギアにとって幼稚な手品にしか思えないものは、この青年やあらゆる人々にとって「魔法」なのだ。
「すごいよ。すごく、綺麗だ」
――ああ。
その言葉に、どれほど。
どれほど、打ち砕かれたろう。
こんなものがお前達には美しいのかと。
こんなものがお前達には珍しいのかと。
こんなものでもお前達には、眩しく輝いているのかと。
失望と、怒りと、それと、少しの誇らしさ。
幼子が精一杯の下手くそな絵を差し出すのにも似た賛辞は、マギアの心に渦を巻く。これ以上下手なことを言われるのも癪なので青年を下ろして意識を奪う。マギアは特大の溜息のあとぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜて、拗ねた舌打ちをひとつ。それからやっと、億劫そうに立ち上がった。
「……あァ〜あ、なんかなァ、オレってば昔から、この手の言葉には弱いんだナァ。どーも嬉しくなっちゃうんだわ、コレ……」
そして力なく上げた顔の先には、先ほどとは違う男達の顔。最初からわかっていた、あの二人は陽動だと。暗殺者なのだ、姿を見せるなど愚の骨頂、最初からマギア達をもっと人目のつかない場所に追い込むためのお芝居だ。マギアは最初の身のこなしからそれを察していて思惑に乗ってやった。
そう、マギアはご立腹なのだ。そこまで侮られたというなら大魔術師としての矜持に傷も付く。細く息を吸う、大気に混じるは無色の魔力。それを取り込み七色の彩とする。
行き止まりの袋小路、風もないのに少女の柔らかな髪が揺れたことに男達は一瞬訝しげに目を細めた。
「……あァ、そうだ。オレこそは1000年前、大魔術師と呼ばれたマギア様よ」
薄暗い路地の中、堂々と立つ少女の輪郭が淡く光る。その美しい目の鋭さには年に合わない迫力があった。
正直、そこですやすやと眠っているおとぼけ坊やより、小僧如きにもこのレベルの暗殺者を差し向ける相手側の方に好感が持てる。たかが蟻だろうが象の足で踏み潰す用心深さは嫌いでない。失態の多くは油断と慢心から始まるものだ。
しかしこれは悪手だった。こんな輩を雇えるのなら毒を忍ばせたほうが簡単なのに。その手を取ればマギアに出会うこともなく、ファンサービスついでに叩き潰されることもなかったのに。
「いいか、若造ども。魔術師様を舐めるなよ」
わかっていた。転生を遂げた時から。もはや魔術は過程だけが奇跡のものに成り下がってしまったと。そう、火などマッチを擦ればよい。水など井戸から汲み出せばよい。嵐が鎮まらないなら頑丈な家の中に篭ればよい。人間が魔力を扱えなくなったのは、奇跡がなくても生きていけるくらいに知恵をつけたからだ。神秘が人間を見放したのではなく、人間が神秘に別れを告げた。才能の有無に関わらず過ごせる日常を選んだ。ただ、それだけのこと。
もはやマギアはオーパーツもいいところの時代の異物でしかない。誰一人、魔法など求めていないのだ。マギアが愛した奇跡も、マギアに届かずとも研鑽した多くの魔術師達も、現実に打ちのめされて魔術を諦めた凡人達も、今ではなべて、御伽話の「いないもの」
それをずっと認めたくなかった。しかし、過去になったものは今には生きていけない。マギアはそれをとっくにわかっていたのだ。
だが、それでも。その過ぎ去ったものを。偽物と偽るしかない真実の業を美しいと、楽しいと笑う声があるならば、それだけでマギアはよかった。
――マギア様の魔術が、一番すごい!
そんな、当たり前のことを。マギアにしてみれば息をするだけのようなことを。力いっぱいに、これ以上など知らないとちっぽけにはしゃぐ声が、いつだってマギアに奇跡を起こさせたから。
マギアの背後、中空にはいくつもの光が輝いている。男達は冷静さを忘れて戸惑いの声を上げた。浮かび上がるのは火花を纏ったナイフの数々。少女は動かなかった。もし動いたとしても、その身体のどこにこれだけの武器を仕込んでいたというのか。極め付けに、ナイフは紐でつってあるわけではない、行儀良く綺麗に並んで、男達に顔を向けながら整列しているのだ。一瞬瞬きをしただけで男達の目に映る景色はガラリと変わってしまっていた。全員が冷や汗を流して退路を探る、この人間に関わってはいけないと本能は全力で警鐘を鳴らした。けれど足は動かない。恐怖にとらわれず動けるように訓練されてきた彼らの体は何かに拘束されたようにぴくりとも動かなかった。
銀の風が吹く。ばらばらと短く苦悶の声が上がって、弾けるような音とともに男達は地に倒れ伏す。それらをまとめようとぐるぐるぐるぐる。細いロープがひとりでに回っていた。
「うん。視線誘導にしちゃ豪華すぎたな」
マギアの足元で、少女一人分にしては大きすぎる影は次第にゆらゆら小さくなっていった。
「あれ、僕……」
「よォ坊ちゃん。生きててよかったな」
「えっ?!ま、マギア!だ、大丈夫?!ケガとか……」
「お前さんが言うな。ったく、足手纏いどころの話じゃなかったぜ」
青年が目を覚ましたのは夕日も沈みかけた夜の手前。マギアは心底うざったそうに顔を顰めて、青年の頬をちぎるつもりで捻ってやった。とんだ面倒ごとである。久しぶりにちゃんと魔術をつかったせいで体はすっからかん。以前であればあの程度、朝飯前どころか寝返りついでにも出来たというのに。これを回復するには一晩しっかり寝なければならないだろう。不甲斐なさにため息をつくと、流石に自分が相当頼りなかったことを思い出したか青年も申し訳なさげに項垂れた。それを慰めることもなくマギアは腰を上げて、大きな鞄を持ち上げる。
「じゃあな、面倒ごとも片付いたし行くわ。迷惑料ってことでコレもらってくぜ」
「あ……」
なかなかずっしりくる皮袋を揺らすと、青年はぽかんと目を丸くした後怒鳴ることもなく笑みを浮かべた。自分がかっぱらいに遭ったという自覚はあるのだろうか。かといって返すつもりはさらさらないが。そのまま歩き出そうとすると、ハッと我に返った青年が自分の姿を見下ろし、そこに何の異常もないことに気が付いて焦ったように立ち上がった。
「待って!マギア!あの時、確かに僕……」
「殴られて気絶なんて、鍛え方が足りないぜ、坊ちゃん」
とぼけてせせら笑うと青年は困ったように眉を下げた。痛みはもちろんのこと、盛大に飛び散った血もなければ、裂けた服もない、これでは何の証拠もなく、マギアを追求することはかなわない。それが夢でなかったとわかっていたとしても、だ。だが、青年にとってあれは夢のようであったけれどしっかり現実で。だから、こんなこといくらマギアが優れた手品師でもあり得ない。震える声で青年は、マギアの背中に小さく声をかけた。
「君は……本当に手品師なの?」
マギアはぴたりと足を止めて黙り込む。青年はその様子に後から後悔した。今の言葉は手品師である彼女を愚弄するようなものではなかったか。もしそのように伝わってしまったのなら酷い誤解だ。慌てて弁解しようとして口を開くのと同時に、マギアは青年に振り返った。
「いーや、魔法使いさ!」
悪戯で眩しい笑顔。輝くばかりのそれに言葉も忘れて呆然と青年は立ち尽くす。それを見たマギアは短く別れの挨拶をして、ひらひら後ろ手を振りながら歩いていく。その楽しげな背中に何と声をかけても次はきっと振り返らないだろう。そう直感しながら青年はマギアの姿が見えなくなるまでずっと、ずっとその場に立ち惚けていた。また会いたいと思っても、もう会えないのだろうとも思いながら。
「ラウル様!」
「……あ、ああ」
「もう!また屋敷を抜け出して!」
「す、すまない……」
いつまでそうしていたのか。知る声に振り返った青年――ラウルは、それでやっと少し肌寒くなってきたなと思い至る。従者のお説教を大人しく食らって、彼を心配させたことに心からの詫びをする。
ラウルは少しばかり面倒な出生であった。生家はこの街を領地とする子爵家。だが、父は現当主であるその人ではなく、現国王であったのだ。
よくある話。今は子爵夫人である母は王城にメイドとして仕えていた時期があり、そこで王の手付きとなった。当然それは公に出来ず性急な式の後に生まれた子は強引に子爵の子とされた。書面上の父との仲は良好だ、母は負い目からか引いた態度だが、家の居心地はそこまで悪くない。ラウルは間違いなく子爵令息なのだ。たとえ、その血が尊いものであると貴族の間で暗黙の了解であろうとも。
ラウルはその白々しい空気の中家を継ぐものだと思っていたし、王族として立とうなどと夢にも思ったことがなかった。しかし、ここで酷い番狂せが起こる。国王が病に伏したと時期を同じくして、王太子が事故に遭った。偶然などと考えるものは誰もいない。次代の玉座に座らんと動き出したものがいたのだ。そしてその手は王位継承権も与えられていないラウルにまで伸びた。ふとした瞬間に、死が横切る毎日が始まり、ラウルの心は少しずつ削れていった。
いい加減うんざりだったのだ。自分の面倒極まりない生まれも、周りの微妙な距離の置き方も。いっそ殺してみせろと意味なく領地を見て回るようになったのはそんな投げやりの気持ちからだった。
だって、自分さえなければ。元々良い仲であった両親はもっとちゃんと夫婦になれていたはずなのだ。自分さえ生まれてこなければこんな迷惑をかけることはなかった。
そんな鬱屈とした気持ちで日々を過ごす中、ラウルはある日、一際騒がしい賑わいの前で足を止めた。その人だかりの中心にいたのはこれまた可愛らしい少女。社交の場で麗しい令嬢達にはなれているが、そんなラウルでさえかわいいな、と思うほどの美貌だ。だから賑わっているのかと納得しながらそこを立ち去ろうとして、目の前に降ってきたものに目を見張った。
雪だった。まだ秋も始めのこの季節、走ればうっすら汗ばむこともある、そんな日にふわふわと白く舞い降りるものがあった。慌てて空を見上げる。そこには秋晴れの空、しかし降り注ぎ、手のひらに落ちてきたものは確かにひやりと冷たく美しい淡雪だ。あたりの人々も騒然となってわあわあ言い出す。そして輪の中心の少女が大きく手を鳴らすと、雪はふわふわと色づいていき、これまた鮮やかな花々になった。
今、何が起こっているのか。自分は夢でも見ているのか。あたりの驚きと感動のどよめきがどこか遠い世界のことに思えた。自分の目はずっと目の前の光景と少女に縫い止められていた。まるで魔法だ、夢でないのならそうとしか思えない。素晴らしいショーはあっという間に幕引きとなり、自分と同じように興奮した人々が口々に感想を言い合いながらあちらこちらに散っていく。それをおおよそ見届けた少女はふう、と大きく息を吐いて、それからひどく不満げな顔をした。
それにガツンと頭を殴られたような気持ちになる。思ったよりも稼げなかったと金を数えながらの顔ならまだ納得もいく。しかし少女は明らかに、あのショーに納得がいっていないようだった。何かを失敗したのか?思ったように行かなかったのか?とするなら、あれよりも素晴らしいものがあるのだろうか?
それを思うと、期待に胸が高鳴った。その高揚のまま少女に声をかけると、見た目からは想像もつかない返事をされ、目を白黒させて。そんな会話でさえも夢のようだった。
マギアの手品を見ているうちは嫌なことを考えなくてもよかったし、自分が何者なのかも忘れて周りの人々と同じように次の手品はどんなものかとわくわく待ち望むことができた。投げやりな外出が明日を待つような穏やかなものに変わっていくのは案外簡単で、自分の単純さに呆れたものだ。しかし、マギアにとってはただの仕事でも自分にとっては確かに大切な日々であったし、ある意味で生きる気力を取り戻してもらったものなのだ。
だから、どうせ結局死ぬのなら、好きな女の子のために命を使ってカッコつけてみたかったけど、結局ダメダメどころか代わりに守ってもらうまでいってしまった、本当に情けなくてつい失笑すると、従者は不思議そうに首を傾げる。それに小さく首を振ってしっかりと向き直る。
「明日からはもう抜け出さない。素敵な夢を見せてもらったから頑張らないと」
「……例のお気に入りの手品師ですか?貴方は次期領主なのですからあまり入れ込むのは……」
「僕が領主になるかは、まだ決まってないさ」
「ラウル様でなければ誰がなるというのですか!」
幸運なことに、こんな情けなくて頼りない、考えなしの自分でも慕ってくれる人がいるようで。今まで本当に申し訳なかったなと首の後ろをかく。マギアはもうこの街にいない。これから先は夢から醒めた日常に戻るとき。けれど、夢のかけらが胸に残っている限り、そっくり同じの「前」に戻るわけではない。
「あぁそうだ。彼女のことだけど、彼女は手品師じゃないよ」
「ペテン師ですか」
「違う」
自分が遊び歩いていたせいなのに、彼はどうやらマギアに悪印象を持ってしまったらしい。心の中で詫びておくけれど本人は一切気にしなさそうだなとも思う。いや、それはともかくとして、一番訂正すべき点がある。こほんと軽く咳払いをして何となく空を見上げた。一際眩しく輝く星に微笑んで、誇らしくその名を口にする。
「魔法使いの、マギアだ」
「……御伽話じゃないですか」
「はは、言われてみればそうだ」
指摘されてみるまで気が付かなかったが、確かに大昔の魔術師と言われた人物と同じ名前だ。そんなことに気がつかないほど自分はぼんやりしていたのか。もし、彼女が彼を目標にその名前を選んで名乗ったのなら流石に怒られてしまうな、と苦笑する。
それから二人歩き出す。まずは両親に謝って、元の自分に戻ろう。これから先、何があるかはわからないけれど、初恋の子に助けてもらった命なのだから大切に生きていこう、と。
◇
とある時代、大変有名なマジシャンがいた。
名前はマギア。太古の魔術師に因んで名乗ったと言われている。彼女の手品は誰が仕掛けを探そうと躍起になっても、どうにもならずただその素晴らしさに歯噛みする結果に終わったという。
マギアのもとには当然たくさんの弟子志願者と専属契約を求める者が集まったがそのどれもを断り最後まで何処にも属さない流れの旅芸人を続けたという。旅好きであったマギアは多くの人と関わり合い、多くのものを笑顔にしてきた。そして、彼女はどうも、大層変わり者であったらしく、あらゆる伝記に彼女の真実かどうかもわからない奇行が残されている。
そして、マギアに関わったあらゆる人は同じ言葉を残していた。
――マギアこそ、正真正銘の魔法使いである。
まるでその言葉を喜ぶかのように。広く伝わる彼女の肖像画は、悪戯にきらきらと笑っていた。
転生して前世のスペックそのまま引き継げるのおかしくない?という疑問から書き始めたものですが、気がつけば着地点が当初考えていたものとはだいぶズレました。不思議ですね。