資本論第一部草稿 直接的生産過程の諸結果 著:マルクス
●資本論第一部草稿 直接的生産過程の諸結果 著:マルクス 訳:森田正也 光文社古典新訳文庫 定価:1240円+税●
本書を読む目的は経済を動かしている原理を知ることである。
もう少し詳しく説明しよう。私の望みは歴史を先読みすることだ。そして私が死んだあとの歴史がどう進んだかを、あの世で答え合わせしたいと思っている。ゲームに例えると、寿命を使い尽くしてゲームを途中までしか進められないのであっても、せめてストーリーの見通しだけでも立てておきたいということだ。
さて、歴史の方向性を決める大きな要素は経済である。現在、世界の大半の国家は資本主義をとっている。であるならば未来を予測するのに、資本主義に関する知識が必要と思ったのだ。
で、本書を読んでみたが、20%ぐらいしかわからなかった。この本を読みこなすだけの基礎的な知識を持っていないことが原因だと思う。もちろん、世界の行き先の見通しなんて立たなかった。
それでも気づきのようなものはあった。浅い読みで恐縮だが、以下に私の感想を書いてみた。
私は自分の労働能力の交換価値を会社に販売することで生計を立てている。土地も家業も持たない私には労働能力しか売るものがないからだ。そして会社は私の労働能力の使用して生産物をつくり、それを消費者に売ることで利益を得ている。生産物の内訳は下記の通りだ。
生産物の価値=原材料費+設備費+労賃+剰余価値
労賃の部分は、私の賃金だ。そして剰余価値の部分が会社(資本家)の取り分だ。もし、私がサラリーマンから転職して自営業を始められれば、剰余価値の部分も私の収入になる。そこに気付いて、自営業者になりたいと感じた。
しかし、ここでネックになるのは設備費のところだ。もし私が半導体製造や製鉄に関するスキルを持っており、それを生かそうとするならば、事業を始めるのに半導体製造装置や製鉄設備を準備しなくてはならない。個人が買えるような値段ではない。
そのように考えると、もし私が将来的に開業したいと思うなら、安価な生産設備費で事業を開始できるできるスキルを獲得しなければならなかった。事業開始時から多くの人を雇えないので、少人数で開業できる業種のスキルが必要といえるだろう。
生産設備費用が個人で賄えるものでありかつ、少人数で開業できる業種を考えてみると、医師、歯科医師、弁護士、公認会計士、建築士などがあげられる。もし、私がこのような業種につきたいのならば、できれば大学進学時にスキル取得に有利な学部を選ばなければならなかった。遠い昔のことで、今さらである。
もちろん高難易度のスキルが必要でなく、安価な生産設備で開業可能な業種もある。たとえば飲食業や小売業、Webライター、小説家、漫画家、Youtuberなどだ。
しかし、そのようなスタートの間口が広い業種で生涯生き残っていくには、凄まじい生存競争に勝ち続けなくてはならない。ゲームで言うとレベル1のスキルは比較的簡単にとれる。しかし生き残るに足るレベル(例えばレベル5)を取るのは非常に難しいといえるのだろう。
話を戻して雇われていることの良かった探しをしてみる。剰余価値が会社のものになる替わりに、会社側(資本家側)が生産設備が準備していることや、新卒時の低レベルのうちに雇ってくれた点、事業失敗時の負債を会社(資本家)が負担する点などをあげられるだろう。また、大会社であれば所属事業部がつぶれても、他の事業部への転属させてもらえる場合がある。いわばリスクヘッジの対価として、剰余価値の部分が会社の取り分になっている。
ところで、賃金で雇われているからと言って、ずっと低レベルで安心安全ともいえない。もし、労賃に見合わない低いレベルのスキルしか持ち合わせていないのであれば、いずれ他の者が私の席に座るだろう。極論をいうと、努力賞がもらえるのは、利害がかかわらないうちだけなのだ。
以下、ちょっと当てが外れた点を書く。
マルクス自身が資本論第一巻を発刊しており、彼の友人のエンゲルスがマルクスの死後にその遺稿から第二巻と第三巻を発刊している。本書は、第一部に採用されなかった原稿の断片だそうだ。つまり私はこの本を資本論だと思って購入したのだが、それは違っていたらしいのだ。
本書から引用すると”『資本論』に登場するさまざまな概念が説明なしにいきなり登場したりしている。必要に応じて、本書の解説や『賃労働と資本/賃金・価格・利潤を参考にしてほしい。”とのことだ。どうも先に資本論を読んでから、さらに極めたい人が読む本だったようだ。もちろん私は「資本論」を読んでいないし、「賃労働と……」も読んでいない。どうやら、いきなりスピンアウト作品を読んだようなものらしい。
いずれ、資本論そのものも読まねば。いつのことになるやら。ちょっと本屋で岩波書店からでているものを立ち読みしてみたら、ずいぶんと古い言い回し文体なのでなかなかの難物だと思った。
以上
たったこれだけの文字数の文章を書くのに2時間もかかった。もっと早く書けるようになりたい。




