駐在刑事 著:笹本稜平
●駐在刑事 著:笹本稜平 刊行:講談社文庫 定価:本体660円(税別)●
日本語上達の参考にしたいと思い購入した。このように書くとまるで私が外国人のようだが、生粋の日本人である。日本語しかできないのに、日本語スキルの不足に今さらながらに気づいたのだ。
ネットで地の文がうまい小説家で調べたところ、笹本稜平氏がアマチュアであっても参考にしやすい文体と評されていた。そこで笹本氏の本を購入した。他にこの本を選んだ理由は、仕事で使う報告書や提案書で使う文体の参考には、ミステリーや推理小説の文の本がよさそうに思ったためでもある。
文に対してどういった分析をすると参考になるのかわからないので、我流で分析することとした。まず主部と述部にマーカーをいれてみた。しばらくマーカーを入れてみたところ、省力化する方法に気付いて「は」や「が」などの主語であることを示す助詞の横に赤点をいれてみた。また一文あたりの文字数を数えた。すると笹本氏の文体の特徴として以下の点に気付いた。
・主語と述語がほとんど省略されていない。明示されている。
・ただし主人公が主体のときは、主語が省略されている。
・さらに小説の導入部のところでは、主人公が主語であっても省略されていない。おそらく読者の記憶に主人公の名前をインプットするためだと思う。
・一文あたりの文字数が30文字以下の文が大半。最大で70文字程度。
・字落としは一つの観点の切り替わりごとに行われる。3~5行に一回程度。つまり一つの観点が3~5行で終わるように書かれている。
主語を意識して文章を読むと、頭に入りやすいことに気付いた。主語と述語が文の骨格としてあり、それ以外の部分は文を華やかにする衣装のようにも感じた。私はもっと日本語の勉強をしたほうが良いようだ。
話はかわるが、本書は全六篇からなる短編集である。主人公は奥多摩の麓の駐在所長だ。その主人公が地域の人々と交流しつつ事件を解決していく物語だ。もっとも気に入った話は、「風光る」という短編だ。北アルプスの登山中に出会った少年との交流と、その少年の成長を描いた物語である。少年少女の成長物というのが好きなのだ、ということに我がことながら改めて気付いた次第である。
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