第6話〜森の管理人〜
ちょっと長めです!
「こっちだ」
クロウさんとマトリさんは俺を連れて〈爪〉隊舎から少し離れたところにある小屋に来た。
この前の魔獣がいた小屋とは別のもののようだ。
よく手入れされている、人が住んでいるようだ。
「この森に〈梟〉の隊舎を作る時に先に住んでいる人がいたんだよ。
追い出すわけにも行かないから事情を話したらここら一帯を使わしてくれることになったんだ」
「そんな簡単に事情を話して良かったんですか?」
思わず聞いてしまった。
ちょっとでしゃばりすぎた。
「最初会った時は少し揉めたりしたけれど・・・
でもその人、『アキハ』さんはびっくりするほど強くてな、事情を話し終わった後〈爪〉に協力をお願いしたりもしたんだが、人を殺すは嫌らしい。
でも、訓練とかはお願いしたら付き合ってくれるぞ。
そこら辺はとても協力的だ。」
「揉めたって・・・クロウさんよりも強いんですか?」
「ああ、アキハさんには絶対に誰も勝てない」
「絶対にですか?」
「絶っっっっっっっっっ対にだ」
〈爪〉の隊長であるクロウさんがそう言うのだ。
本当に強いんだろう。
クロウさんよりも強いのか・・・
どんなゴツい人が出てくるんだろう?
「アベル君。そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。
君が想像しているような人ではありませんよ。
とっても優しい人です」
俺が今まで〈梟〉で会った人はみんな優しいからそこは心配してない。
マトリさん、クールな顔してあなたもすごい優しいですよ?
小屋に入るかと思ったけれど、古屋の横を通って広場みたいなところに出た。
かなり広い。そして、やはり高い木々に囲まれている。
上からじゃないと見えないだろう。
4人、人が居る。バトンさんとシルクさんと・・・
あと2人は誰だ?
「げ」
マトリさんが嫌そうな顔をした。
そんな顔できるんですね・・・
クールだと思ってたけれどいろんな表情しますね。
マトリさんについてぶっちぎりで詳しくなっていく。
「スチル!任務から帰ってきてすぐに特訓か!
精が出るな!」
「押忍!クロウさん!お疲れ様です!」
スチルと呼ばれる男がこっちにきた。
身長はマトリさんと同じでバトンさんよりもちょっと高いくらいだ。
髪の毛はマトリさんが鮮やかな青なのに対し真っ赤な髪で刈り上げがされている。
サングラスをかけている。
少し怖い。
「スチル!君はアベル君になんの挨拶もせずにここにいたんですか?!」
「チッ、なんでマトリもいるんだよ・・・」
「なんでとはなんです?!元はと言えば君が・・・」
マトリさんとスチルさんが言い争っている。
「あの2人は見ての通り犬猿の仲だ。
2人とも同期で同い年だからっていじっぱりなんだよ。
まったく・・・」
とクロウさんが呟く。
偏見だけれど性格も真逆そうだ。
衝突も多いのだろう。
「お前が新入りだな?」
スチルさんがこっちにきた。
いやいや近い!
鼻とかもう当たりそうじゃん!
「名前は?」
「アベルです」
「おう、アベル。よろしくな」
「はい!」
「俺の前では返事は『押忍』だ!」
「は・・・押忍!」
「そして俺のことは『スチル先輩』と呼べ!」
「押忍!」
スチルさ・・・先輩とマトリさんはバトンさん、シルクさんと再び特訓を始めた。
「すまんなアベル。スチルは後輩ができてはしゃいでるんだよ」
ああ、そうなの?!
でも、悪い人じゃないのはよくわかった。
仲良く・・・できるかな?
「ってそうじゃない。今日はアキハさんに会いにきたんだよ」
「この人がアキハさんだ」
1人の男、いや青年が出てきた。
想像と全然違う!
身長は俺と変わらない。
髪の毛は綺麗な茶髪だ。
若い。俺と同じかそれ以下だろう。仲良くできそうだ。
でもクロウさんが敬語だから、敬語はちゃんと使おう。
「アベルです。よろしくお願いします」
「初めましてー。僕はアキハ。よろしくねー」
優しい。
直感でそう思った。
クロウさんのような強者の雰囲気がない。
いやもちろん強いんだろうけれど・・・
「あーっ。今君、僕のこと強くなさそうって思ったでしょー?」
「あ・・・えっと・・・」
あれ、俺って顔に出やすかったっけ?
やっちゃったなあ
「いいもんー。今から僕の力を見せてあげr
「はーい。そこまでです!アベルは今から俺と特訓をします。
アキハさんはあっちの4人を頼みます」
「えー」
アキハさんは他の人と特訓を始めた。
「驚いたか?アキハさんは俺たちと会った時からあの見た目だ」
?!何年も前から?!
何歳だよ?!
「アキハさん、おいくつなんですか?」
「前にそれとなく聞いたんだが
『うーんとねー。初代国王のことは知ってるよ』
って言われたんだ」
なんじゃそりゃ?!
本当だとしたら何歳だよ?!
「それは置いといて。特訓するぞ!」
「押忍!」
「いやスチル以外の前では普通の返事でいいぞ・・・」
(なんならスチルの前でも普通の返事でいいんだけどな)
「あっ、・・・はい・・・」
ついやってしまった。
「特訓って何をするんですか?」
「お前の新しく得た魔法は理由は知らんがとりあえず使えん。〈再生〉を鍛えてお前の長所を増やす!」
「おおお!」
おお!おれっぽい!
「そこで俺の魔法〈絶対悪〉を使う」
「〈絶対悪〉?」
かっこいい響きだ。
どんな魔法だ?名前から想像できない。
「〈絶対悪〉を一言で説明すると、『相手の魔法と反対の魔法が使えるようになる』だ」
「?」
「少し付け加えるぞ。
例えばバトンの魔法〈火炎〉に対して発動すると、
①弱点となる魔法 〈水〉
弱点って意味での反対だな。
②対となる魔法 〈氷〉
なんとなくのイメージで反対と思うものだ。
③相手にとって相性が悪い魔法 〈風〉
これもおれの勝手なイメージだ。
④相手の魔法そのもの 〈火炎〉
鏡写って意味での反対だ。
この4つの中から1つ使える。
まあ、俺の意識の問題だからもっといろんな魔法を使えるんだが・・・今回は簡単に説明するから省略する。
つまり〈絶対悪〉を使ってお前の〈再生〉の戦い方を学んでもらう」
「おおお!」
なんで強い魔法だ!
相手からしたら嫌だなあ。
そして〈絶対悪〉を使いこなすクロウさんやばいな!
「もう一つの魔法はなんですか?」
「今回は使わないけれど・・・ついでに説明するか。
おれが2つ目に得た魔法は〈並列意識〉。
これも簡単に説明するけれど発動すると自分の意識が2つに増えるんだ。
二重人格ではなくて、二つのことに集中できる、みたいなものだ。」
?
ちょっと何言ってるのかわからないです。
「何ができるんですか?」
「2人と同時に会話ができる。
考え事が早い」
「・・・便利ですね!」
・・・まあ、〈絶対悪〉が強いからそんなに支障はないだろう。
「ただし!」
クロウさんが声を大にして言う。
また顔に出てたのか・・・
「〈絶対悪〉は意識の問題だから、〈並列意識〉をうまく使えば、1つの魔法に対して2つ分の〈絶対悪〉を使えたり、相手が魔法を2つ持っていたらそれぞれに〈絶対悪〉を使えたらする」
クロウさんはドヤ顔でそう言った。
この人も面白いな!
〈爪〉の人たちはみんな面白いな!
てか〈絶対悪〉と〈並列意識〉の組み合わせすごすぎない?
相手が2つ魔法を持っていたとしても対応できるって・・・対人戦じゃ敵なしじゃないか!
「それは強いですね!」
「でも〈魔法無効〉とかは使えないし、相手が相手自身に魔法を使う・・・〈身体強化〉とかは相性が悪い。
あんまり相手にしたくない
って雑談はここまでだ!
今度こそ特訓を始めるぞ!」
「はい!」
「具体的には3つのことをする。
①痛みを知る訓練
②治す怪我を選ぶ訓練
③無意識で怪我を治す訓練
だ」
「おおお!」
「②は魔力の無駄遣いを減らすためだ。
③はできるとできないでは戦闘時の集中力が変わってくる」
「おおお!」
確実に強くなれそうだ!
「だか、最初は①だ。
この前の事件でお前は〈銅〉の騎士の〈強酸〉で動けなくなったらしいな。
それはその痛みに体が慣れていなかったからだ。
〈再生〉の強みは動じないことだ。
というわけでアベルにはいろんな痛みを知ってもらう」
「おおお・・・え?」
「〈絶対悪〉のおかげでいろんな魔法が使えそうだ。
切断、打撲、骨折、腐敗、etc・・・
いろんな痛みを知ってもらう」
「えええ!」
そんな!まだ今日という1日が始まったばかりなのに!
「よーし。歯を食いしばれ」
「ちょちょちょちょ、心の準b
ベゼル・・・兄ちゃん頑張ります・・・
登場人物も増えてきましたね。
まとめも作らないと。
番外編とかも書きたいです。
日常みたいな。
Twitter すこやか リベリオンで検索