第1話〜開幕〜
それでは本編始まります
「297・・・298・・・299・・・」
「おーい、アベル。また素振りしてる。剣術の授業始まるよー」
「おーう!ありがとう!すぐ行く!」
ここはシキ王国の都市の1つ、カイジュの騎士学校。
騎士を目指す人が通う学校だ。
「アベル、剣術の成績、トップだったじゃないか?なんで素振りなんかしてるのさ?」
「俺の魔法は弱いからなー魔法以外で〈銅〉にならなきゃ」
「〈銅〉?〈銀〉の方が向いてるんじゃないか?」
「いいや、カイジュに残って家族を養いたいんだ」
「そうかー。頑張れよ!」
「おう!」
「1本!アベルに1点!」
「ありがとうございました!」
「やっぱアベルは強いなぁ!」
「ああ!応援ありがとうな!」
「アベル君てさ・・・かっこいいよね・・・」
「わかる!剣術も座学もできるって将来有望じゃん!」
えっ?なんてなんて?かっこいい?おいおいおいかっこいいなんて・・・。おっ。可愛い顔してんじゃん。
(チクショウ・・・あいつがいなけりゃ俺がトップなのに・・・。ザコ魔法のくせに生意気なんだよ!)
うわぁ、むっちゃ睨んでくるじゃん・・・。国の役人の息子だっけ?羨ましいよなー強い魔法を持ってるヤツは
「校長、アベルは魔法こそ〈再生〉と弱いものの、剣術、座学、討伐訓練この教科においてトップクラスです。すぐにでも〈銀〉、もしかしたら〈銅〉になれるかもしれません」
「そうだな・・・騎士になるにあたってアレもあるしの。首都の騎士にも〈再生〉待ちがいたじゃろう?」
「確かにいますが・・・あの騎士はただ強いだけならいいもの・・・」
「ただいまー」
「おかえり兄ちゃん!」
「ベゼル!学校、大丈夫だったか?」
「うん!進学してから魔法を持ってないのをバカにされなくなったよ!」
「アベル。おかえりなさい」
「アベル!おかえり!」
「母さん、父さん、ただいま」
うちの家族はみんな揃って魔法が弱い。弟のベゼルは魔法を持ってすらいない。母さんは手芸で、父さんは運搬業で稼いでいる。早く騎士になってガッポガッポ稼がねえとな。
「アベル!また、生意気なこと考えてんじゃねえか?」
がしっと頭を掴まれる。相変わらず大きな手だ。
「あんまり無茶はするな。〈再生〉だけじゃあ。騎士は苦しいぞ。みんなお前が心配なんだ」
「父さん、大丈夫だよ!討伐訓練もいつも傷一つなく終えてるんだぜ?心配ないさ」
「兄ちゃんすごーい!!!」
「まったくもう・・・ベゼルが真似したらどうするの?無理だけはしないでね」
「大丈夫だよ!」
この家族のためにも早く騎士にならなきゃな・・・
すっかり遅くなってしまった。先生に都市への推薦を頼んでいたらこんな時間になってしまった。みんなもう寝ちゃったかな?
今日はやけに寒い。いつもの帰り道なのに肌が震える。
早く家に帰りたい。
「おい、早くしろ!」
「わかってるって!あんまり騒ぐな!」
「とっとと帰るぞ、首都の役人が来ているんだ」
「「はい!」」
なんだあれ?もうかなり遅い時間だぞ?
泥棒・・・じゃないあれは騎士だ〈鉄〉2人に・・・〈銅〉も1人いるじゃないか?!
しかもカイジュの騎士じゃない、ロッキーの騎士だ!隣の都市から来たのか?!
どうしたってんだ?なんかすごい焦ってるし。
「ただいまー」
ほのかにかおる鉄の匂い、目を向けた先には動かなくなった母と父がいた。
「は、え、母さんっ?!父さんっ?!はぁっ!はぁっ!はあっ!はあっ!」
どうして?誰が?いつだ?なんで?なんで?なんで?
パニックだった。目の前の状況に考えることができなくなっていた。
・・・ベゼル!・・・ベゼルは?!
「ベゼル!ベゼル!ベゼル!大丈夫か?!」
どこを探してもいない。姿が見当たらないのだ。
まさか、さっきの騎士・・・?
でも今は確かめるしかない!
家から飛び出た。ロッキーのある方、東に走った。
「ベゼル!ベゼル!ベゼル!」
何度も叫んだ。弟の名前しか叫ばなかった。
ガタン!!!
少し先のところで音が鳴った。
「!!!」
「このガキ!なんで今更動いてんだよ!」
「ベゼル!」
「兄ちゃん!」
「チッ、ガキの兄貴かよ」
「なんで弟を誘拐するんだ?!なんで俺の両親をあんなことにしたんだ?!」
「教えるわけねえだろ!!!こっちも仕事なんだ!!!」
「面倒だ。お前たち先に行ってろ」
「ナイフさん!」
「こいつはここで殺しておく。ガキの方は任せた」
「何言ってやがる・・・待ちやがれ!!!」
手を伸ばす。直後、伸ばした手が切られる。
「ここは通さない」
「うるさいどけえええええええ!!!」
「自分から俺の魔法〈手刀〉に突っ込んでくるとは・・・」
知ったこっちゃない。弟の行方がかかってんだ。
俺は正面から突っ込んだ。
「阿呆が。言わんこっちゃない。重症だr」
顔面に一撃入れる。剣で戦うのもいいが、今は無力化を狙う。倒れててくれ。
「今のは効いた。まったく刃物に怯まない。
〈再生〉でも持ってるのか?ただ、それだけじゃあここは通れない。」
なんで効いてないんだよ!これが騎士か・・・
一旦距離を取る。なんとか逃げ切って荷車に追いつく。
無力化出来ないならこいつから逃げる!
刹那、腹に激痛が走る。
「?!」
「なんだ。〈再生〉待ちといっても〈強酸〉の痛みは初めてか。」
痛い。切り傷でもない、骨折でもない、欠損でもない。
なんなの初めてだ。なんで?なんで魔法を2つも持っている?
「勝負あったな。頭も溶かしてやる。」
「くそっ・・・チクショウ・・・ベゼル・・・」
目の前が赤く光った。
「〈炎天〉!」
「なんだ?誰だお前。このガキの仲間か?」
「違う。騎士が人を殺す様子が見逃せなかった。」
「くだらない。騎士の邪魔をするなど。お前も溶けろ。」
手刀が燃えてる人に刺さる。なんで避けないんだ。
ああ、俺のために来てくれたのに、死んでしまう。
「?!、抜けない?!くそっ、熱い!熱いいいいい!」
なんだ?抜けない?力を入れてるのか?!
腹に穴が空いたまま?異常だ。どんな人間だよ!
「そのまま燃えていなくなれ。」
「くそ!くそおおおおおおおおおおお!」
そのまま騎士は燃え死んだ。
「大丈夫か?もう〈羽〉が来る。この傷・・・
もう助からないかもな。覚悟しとけ」
「あ、いや、大丈夫です。慣れてきたので〈再生〉で治せます。」
「なんだ、〈再生〉持ってんのか。俺と一緒だ。」
本当だ。もう治ってる。普段から使っているのだろう。
恐ろしく早い。
「あの、実は・・・
今起こったことを全て話した。
この人なら助けてくれるかもしれない。
藁にもすがる思いだった。
「そうか。だが、今ロッキーに行くのはやめておけ。
あいつらの任務ももう終わっただろう。」
「諦めろってことですか?!弟ですよ?!
他にも色々おかしな点がある!あの騎士も、あんたも!
なんで魔法を2つ持っているんですか?!」
「落ち着け!」
「!」
「諦めろとは言っていない。1つ提案がある。」
「なんですか?!教えてください!」
「今、王国は腐っている。王が、貴族が私利私欲に権力を使って国民が苦しんでいる。
俺はそんな国を変えるため立ち上がった組織〈梟〉のメンバーだ」
「それがどうしたっていうんですか?!」
「〈梟〉では日々、いろいろな情報が入ってくる。王国のありとあらゆる情報がだ。もしかしたらお前の弟の行方もわかるかもしれない」
「・・・」
「ぜひ、〈梟〉に来てくれないか?」
「わかりました・・・。ベゼルを取り戻すためなら!」
「よし!良い意気だ!さっきの質問には移動しながら答えてやるよ!」
こうして俺は〈梟〉に入隊することになった。
ベゼル・・・すぐに助けに行ってやる!
読んでくれてありがとうございます!