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理想

私の身長は168cmと同年代女性に比べて10cm程高い。



思春期はそれがコンプレックスで仕方なかった。


片思いしていた相手が付き合いだした人が150cmに満たない小柄な方だったのが大きいだろうか。以来、身長測定のたびに伸びる数字に嫌気がさしたものだ。

しかも好きな系統は高めのヒールが絶対的に合う服装。スニーカーやローヒールで合わせるカジュアルなファッションは苦手ときた。

普段も男性の平均と大差ないのに、私服で歩けば並みの男性相手では目線が下がるくらいになる。


お付き合いした方の中には自分と同じ身長くらいの人もいたけれど『俺の事は気にしないで好きな格好でいいんだよ』と言われても本当に私達を見てるのでは無いだろう周囲の視線が気になってしまい、結局長くは続かなかった。


痩せ気味なのもあって『モデルみたいでいいじゃん』と友人からは言われるが、地元の先輩にプロモデルになった方がいたので知っている。

プロの細さは私なんかの比じゃないと。

あくまで〝みたい〟でしかないのだと。

まぁ、顔面の問題もあるけれどね。



そんな十代を経て大学卒業間近のある日、就職先のアパレルで内定バイトをしていた先の先輩社員さんに教えてもらった海外下着ブランドのショーを観て人生観が変わったのだ。


ただただカッコいい。


薄っすらと筋肉の動きが分かるほどに引き締まっているのに女性らしい。笑顔を浮かべてランウェイを歩く姿は圧巻でしかなかった。

画面の向こうで輝く彼女たちにはなれない事は分かっている。日本人平均より高いとはいえ彼女たちに比べたら私ですら小柄。


後々調べて知ったのだが、彼女たちスーパーモデルの中でも更に選ばれたモデル達で世界に与える影響力のある方々だった。もれなく私も影響を受けた一人。

スーパーモデルになるだけでも狭き門なのに、更にその中でもピラミッドの頂点ともいえる人たち。


そんな人たちと自分を比べるのも烏滸がましいが私程度の身長で何をそんなに悩んでいたのだろうと、すっと霧が晴れる気がした。



それまでも趣味と実益を兼ねて日本のショーやコレクションも鑑賞していたが、ここまでの衝撃は無かった。もちろん、モデル達は綺麗だし着こなしだって勉強になる。

それでも特定のモデルに憧れる事もなくどこか淡々と分析していた気がする。




それからは周囲を冷静に見渡す余裕もできて就職先の先輩や同期たちを眺めれば、自分と同じくらいの背丈やそれ以上でもキラキラ輝いている人のなんと多いことか!




コンプレックスなど視点を変えてしまえば些細なもの。

以来、その他の小さな身体的な悩みも少しずつ受け入れ、それさえも魅力的に思えるようファッションやメイク・立ち振る舞いに気を配った。


最初の転換期はスーパーモデルとゆう比較対象から始まったが、他者と比較するのではなく自分が納得できる事を目標に。




それからは人生が変わったと言って過言ではない。




あの人と友達になりたいなと思うより先に尊敬でき心から笑い会える、その後親友と呼び合う人たちに声を掛けられる事が増えた。

会話も互いに悩みがあっても愚痴垂れ流すのではなくどうしたら改善できるのか、トラブルを回避する為には予めすべき事はなにか、と試行錯誤しながら仲が深まって行くのが何より嬉しかった。

依存するだけでなく、相手も私の意見を尊重してくれる関係が広がったのだ。

なぜ私に声をかけたのかある親友に聞くと『一緒にいたら地に足のついた幸せそうな気持ちになれそうだから?』とむず痒くなる言葉を頂戴したのは良い思い出。




以前からの友人達はネガティブな部分で共感し合い何気ない一言で笑い合う。もちろん、それが悪いわけではない。その時はそれで救われた部分も大きいのだから。

しかし、次第に仕事やプライベートの愚痴を聞くだけの関係となりこちらからはあまり連絡をする事も無くなった。

愚痴を聞いてほしい相手に前向きになった私の話をしても下手な逆恨みや嫉妬を受けるだけだと、十年来の友人を一人失ってから気づいたから。

そうなると以前からの友人達に会うのは同窓会や忘新年会・共通の友人の結婚式などに限られてしまうのは仕方がないだろう。



彼女たちが煩わしくなった訳ではない。

ただ、前を向けた私を受け入れてもらえなかったのが悲しかったのだ。

勿論一人がそういった反応をしたからといって他の子がそうで有るとは限らない。

それでもまた受け入れてもらえなかったとしたら…悩みつつも笑い合えていたあの日々を失うようでならなかった。



余談だけれど、後に立場や環境が変化すると共に考え方が変わった友人からは、当時の私を理解し再び頻繁に連絡し合う仲に戻れた人もいる。




学生時代からの友人とそんな歪な関係になった失敗と共に異性関係での失敗もあった。


小柄で守ってあげたくなる様な女性を好む男性には全く引かれなくなったのは良い。彼らは自尊心を保つことに他者を巻き込んでいる下らない人間なのだと感じるようになったからだ。

よく聞いた話だと子を産み必然的に精神が逞しくなったパートナーに『可愛げが無くなった』だの『女を捨てた』だの発言が増えるのだそうだ。なのに『家事が手抜きだ』『子供が言う事を聞かないのはお前の育て方が悪い』とは何事?立派なモラハラでは?

家事に手が回らないほど子育てが大変ならそれこそ手伝って貴方の大好きな『守ってあげてる自分』を感じていればいいのもを。

挙げ句の果てに自尊心を満たすために不倫に走る最低男もいた。


誰しもがそうであるとは限らないのは分かるがそういった体験談を聞くたびにそういった女性を好む男性を異性として意識しなくなっていった。


コンプレックスのきっかけになった彼だが、当時付き合っていた彼女は遅い成長期を迎えすっぱりと別れ、また小柄で華奢な子と付き合い始めたが直ぐに別れたようだ。

どうやらサバサバした性格だったらしく思っていたのと違ったらしい。そんなの付き合う前に気づくでしょ。

今だに理想の子を探していると風の噂で聞いた。




そんな私がそうではない男性に対して評価を上げてしまうのは必然だった。

何が失敗だったかといえば、評価を上げているだけで異性としては意識していないのに迂闊な褒め方をしてしまい、相手に私が好意が有るのでは?と勘違いさせてしまうことがあったのだ。それも複数。

複数になってしまったのは相手が直ぐにそれと分かる行動を起こしてこなかったから。

猶予期間、とでも表現しようか。その間に複数人に褒め言葉を連発してしまい、結果ほぼ同時期に大変な事になったのは苦すぎる思い出だ。


以来、褒めるにしても性を意識させないような言い回しや表情に気を配った。

その後制限なく接したのは旦那だけである。

もちろん初めからでは無かったけれど。




自分を好きになる努力を重ねた私だが、なりたいがなれない理想は有る。

努力では変えられない部分。例えば人種。

顔だけでなく体の骨格もまず違うし、肌のベースの色が異なる。


美容院で一時的に近づける事はできても根本的な毛質は変えられないのでそれもかな。







そんな理想がやってきたのだ。


それも現実では有り得ない色味と共に。

ゲームならではのファンタジーを感じずにはいられず、身体の感覚が無いにもかかわらず鼓動が跳ねる。





白銀をベースにオパールの如く虹色に発光変化する髪。

どんな条件があるのだろうか、ブラックオパールの様に輝く事もある。

柔らかく輝く粒子が髪から出るエフェクト付き。

現実ではプロジェクションマッピングでなら近い演出ができるだろうか?



瞳はパープルとグリーン。

オッドアイでは無い。

髪色がオパール時はパープル、ブラックならグリーンと変化するのだ。



衝撃を受けたショーを彩るスーパーモデルを彷彿とさせる彫りの深いくっきりとした二重の意志の強そうな目は好みのドストライク。

アイプチをしても三重になってしまう奥二重さん憧れの作りですね。



スタイルも憧れのモデル達を彷彿とさせる手足の長さに高く引き締まった腰。出ているところは出ているのに引き締まるべき所はキュッと細い。



骨格が日本人とは全く違う。

これだけ作成したクリエーターが異なるとゆうレベルで違う。

女性ユーザーが好きな細っそりしてるけど胸が適度にありつつ小尻でもなく。独断と偏見だが男性ユーザーが好きなどこもかしこも柔らかいムッチリ系とも違うリアルな私の理想がそこにあった。


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