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バッカスの祭

作者: ワレス・F・コヨーテ

暑い日の午後。扇風機横でビール片手にそのラベルをふむふむと読んでいたらなんだか酔いを書きたくなった。


☞ 「座禅」と書く。「ふんどし」、「せみ」に「禅」の漢字が似ていると思う。すると堅苦しく照れた道元の姿が現れる。「只管打坐」って言ってます。なので他の言葉を探す。「瞑想」と書く。日本語で「スピリチャルですね」とシャーリー・マクレーンが現れる。「白昼夢」と書く。鮮度を失った魚のような目をした痴漢がうつむき加減で現れる。『川辺に佇みぼんやり過ごす時間』。風が起こりさっと通る、距離は近くなる。ただ言霊さんにはまだ遠い。続ける。


☞ 座禅のようなものを始める際の心持ち。歳相応のキャンバスが勝手に現れる。不安や囚われ、欲求、思い込み、その時々の情感がうっすらと染みこんだキャンバス。瀟洒すぎる。カーペットについたシミ。見慣れたシミの出所を改めて視覚化するとこれはこれで面白い。トマトソースとか赤ワインだったものが、日常的に接してしまうと確実にそこに存在するのに気にならなくなる。見えなくなる。見て見ぬふりしてる日常の姿。


☞ キャンバス、もしくはシミたカーペットからの降下と、到着地点までの道草・景色の変化が座禅の楽しみ。時として考古学者が古文献や言い伝え、それらの断片を精査しながら、埋没した遺跡を掘り当てていく感もある。無造作なイメージ、記憶、幼少時の白昼夢、そのランダムなモンタージュ。「臨終の走馬燈」。そのように想像力をかき立てる時もある。意識という暗い空間は、停電した都市の地下鉄網のように多重無数のトンネル。だからあえて起点に用意すべくキャンバスをどこまでも白くさらにしようと試みる(これが一番時間を費やし難しい。慣れると簡単と言う人もいる)。


☞ 一瞬つかみ取れたと思わせる。どこまでも白い無心のしっぽを必死に手放さないようにずるずるずると引き込まれる。くねくねした長いトンネルをものすごい速度で移動する。遠い所まで行けた気がする。地下鉄マップではたどり着けない土地。用意したキャンバスにイメージがある。至福が包む。忘れていた子供の頃の白昼夢、繰り返し見ていた夢、不意に現れたトンネルで今と繋がる。驚く。そこに住む者と会話する。今繋がる理由を尋ねる。答は容易に語られない。意識の中で長年息を潜めていたイメージがもぞもぞもぞと胎動する。また驚く。メモする。変化するイメージを解析する座禅は楽しい。音楽はザゼンボーイズ、出身は久留米で東京を拠点に活動、ちなみに座禅にはあわない。


☞ 形あるものはほどほど少なめに収め、次第に生活から整理していく季節。形ないものにそろそろじっくり腰を据えて取り組む閑暇の時代。自己にナゾは残っているか。イメージを形にしたい気持は残っているか。自問。麦酒の味。自問。今日は投票日。

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