表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

二・五話 悪の官僚教師気どり

せっかく書いていたのもったいないので

・カルロタ商会、応接間





カルロタ商会で一番有名なのは何か。




ロビーから応接間までの道である。




輸入した金細工があしらわれた家具や精巧に作られた女神の像等


庶民はおろか貴族ですらお目にかかれないような芸術品ばかり並んでいる。


それを守る兵士達は王国の精鋭にも負けないと言われる勇者達。


まさに理想が現実になったような光景である。








最も、目立たないところにある裏口では荒くれ者どもが小汚い格好でゲラゲラ笑い、時には酒瓶で殴り合い。


社長は普段ゴミ溜めのような執務室で小汚いコートと小汚い眼鏡をかけて寝転がっている。


アロンソはこれを「遊園地」と内心呼んでいる。








そんな小奇麗な応接間でアロンソ・オスナはとある小男と会っていた。


その腕には銅でできた小さい鷹の彫刻の入った腕輪があり、


つけている男は一応小奇麗にはしているもののあまりに似つかわしくない。



その腕輪は市民から抜擢された市民徴税官の証。


市民でありながら市民に嫌悪される存在。


アロンソの目の前の男は、国が身分を保障し、


税金を取り立てるためには手段を選ばない性質の悪い市民徴税官なのだ。








「税の取り立ては滞納者の意思がどうあろうと取り立てることができる。


それが我々徴収官の権利だ!」


ソファーに踏ん反り返り男はアロンソに腕輪を見せ付ける。




「ええ、そうですね。法律に明文化されていますし、裁判やってもこちらが負けるかもしれません」


アロンソはどうでもよさそうな顔で男の言葉を肯定する。




「そうだ。期限内に今回の税を納められなければ…」


我が意を得たと言わんばかりに男はまくし立てるようにするが、




「でも、あなたがたは今まで色々な話を持ってきてくださいましたよねぇ…」


アロンソが面倒臭そうに話を遮る。






男は何のことを言っているのかわからないと呆れ顔をした。






「それって納税交渉ですよね?」


アロンソは念のため確認するかのように男に尋ねる。





「そうだ。我々はお前たちに円滑に納税する慈悲を…」


男はそれがどうしたと言わんばかりに話を続けようとする。




「ええ、もちろん無視して取り立ててもいいんですよ。やれるのであれば」


しかし、またアロンソが話を遮った。


人の話を聞けよクソ役人。




「…どういう意味だ。こちらからは今すぐにでも徴収できる権利がある」


また、男はわけのわからないような、しかし今度は困惑した顔でアロンソを見つめる。




「ええ、もちろん。ですので、裁判しましょうよ。


正直、急にそんなことを言われても困りますし円滑にことを進められるように」


アロンソは優しい教師が物覚えの悪い生徒に語りかけるように目の前の男に言った。




「だから!」


男はアロンソの態度に腹が立ち語気を荒げる。





だが、


「その代わりあなたがたは同じように納税交渉している領主様方を敵に回すかもわかりませんねぇ…」


アロンソはまたもや男の話を遮り、またしても馬鹿丁寧に語りかける。




「裁判ともなればある程度公にせざる負えませんし…」



そして、



「この一件を認めたら…急な税金払えないお貴族様方がわんさか押し寄せてきますよ」


男がしゃべりだす前に自分の言いたいことを伝えた。





「…」


男はようやく悟った。


こいつは今税金を取り立てようとしたら、


貴族達にも急な取り立てが行くかもしれないと噂をばら撒くつもりであると。


そんなことになれば国から市民徴税官じぶんは切り捨てられるぞと脅しているのだと。




「では、話を戻しますね。現在わが社の利益は…」


そんな男の内心など気にも留めない様に、


アロンソは今後の税金の相談を男に持ちかけるのであった。










・・・・・・・・・・・・・








男との相談が終わりしばらく、アロンソは応接間のソファーでコーヒーを飲んでいた。


リラックスして、優雅()なひと時を過ごしていると、ふと先ほどのやりとりを思い出した。



「バカで助かった…」


アロンソはホッとした。



もし、男が予め貴族に反発がないように根回しするような男なら、


アロンソが社長に殺されていたと思っているからだ。



アロンソは会社が負けるとも思ってもいないが、


面倒事=死刑が社長の価値感であると信じているのだ。




「国がバックにいても助けてくれるわけじゃないからな」


アロンソは自分の過去の職業を思い出して胃が痛くなった。



「庶民レベルなら権力でゴリ押しできても、


領主レベルで国が庇ってくれるわけないじゃん…」


何でそんなこともわからないのだろうとアロンソは不思議に思った。





「テキトーにやっても儲かるんだからそれでいいじゃん」


アロンソは先ほどの男がとても羨ましく思い、


この会社を辞めたら自分のことを市民徴税官に推薦してくれないかなーなどとバカなことを考えていた。



あのような対応で男に優しくしてあげたつもりなのだ。


恩を感じてくれているのではないかなぁなどと考えているのだ。



アロンソはこんなんだから首になったのだ。





「とはいえ、最近こんなんばっかだな」


アロンソは連日来る生徒(市民徴税官)達の相手が面倒になってきていた。






そして、ふとこんなことを思った。




「このままだと会社潰れるんでないか?」


アロンソはこのままではこの楽な仕事がなくなるのではないかと恐怖した。


そこでどうにかできないか考えてみることにした。







(今更だけど教養ない市民徴収官がこうも押し寄せてくるって商会としてどうなのよ?


いや、知らんけどさぁ…


海と山の脳筋せんしドワーフ様にお願いするか…いや、でもなぁ


うーん。そうだここはあの長耳に…後が怖いな。


あ、そうかどっちもやって社長に責任押し付ければいいんだ。


バレなきゃいいだろ、うん。しーらね)







その日、アロンソはコーヒー飲み終わると早退することにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ