残念ながら名前を変えることは出来ません
あの場で合流してから近場のファミレスに入ろうということに。お昼過ぎなので人は減っているとはいえそこはさすが渋谷。そこそこ人は入っているので座れたのは運が良かった。
「えー皆さんリアルでは始めましてということもありますが、とりあえず乾杯!」
「「乾杯!」」
みんなドリンクバーで注いできたグラスで乾杯。ギルマスだけいつの間にか頼んだビールなのを除いて。あの場では謝ることが出来なかったのでタイミングを見計らい
「先程は大変失礼しました!」
三人が揃って頭を下げる。私たち以外全員合流しているのだから、あそこには四人ではなく五人集まっていなくてはおかしいのだ。そこまで気にしてる余裕が私たちにはなかった。
「不審な三人組がいるってみんなで話してたんだよ。」
「え?そんなに不審でした?」
不覚。なぜだかギルマスが絶対あれだと確信を持っていたらしい。なんでもバス亭までの道を教えたはずなのに逆方向に歩いて行ったので違和感を感じたとか。それで目で追っていたら遠くからこちらの方を窺って三人で何かを話してを繰り返していたのを見て、まさかと思ったらしい。確信を持ったのが深刻な顔で携帯をいじり始めたと思ったらメッセージが来て確信したとか。あれを全部見られてたとか死にたくなりますね!もう一度あそこからやり直しとか出来ませんかね。出来ませんよね。はい。
「ていうかなんでギルマスの名前って山田太郎なんですか?女性なのに!」
横にいつの間にかいた人が羞恥心で死にそうになってる私に助け舟を出してくれたらしい。誰だろう。そうしたらなぜ山田太郎という名前なのかギルマスは笑いながら話してくれた。どうやら名前やらアバター作成よりもともかくゲームを始めたかったらしく、キャラクリは適当にしたらしい。まずはやってみてある程度このゲームを把握してからじっくりそのへんはやろうと思ってたけれど、気がつけばレアドロップが運よく手に入ったりレベルも上がっていたりとキャラクターを作り直すのが面倒になってそのまま遊んでいたらこうなっていたとか。アバターは課金で変えることは出来るけど、名前は変えることが出来ないので果たして山田太郎で自分の好きなアバターに変えても愛着持てるだろうかとか色々悩んでいて今に至るとか。
「と、そんなところで満足したかね。デラックスモンブラン?」
横の人はどうやらデラックスモンブランさんらしい。にしてもリアルでキャラ名を呼ばれるのは抵抗があるのは私だけかな?
「お願いだからキャラ名そのまま呼ぶのやめて!」
やっぱり恥ずかしいですよね。でもまだ商品名っぽいからいいんじゃない?美味しそうだしと心の中で思ったり。
「じゃあデラックスとモンブランどっちがいい?」
「その二択を拒否していつも通りモンでお願いします。」
「じゃ私はギルマスじゃなくて山田さんでいいよ!」
ギルマスのキャラ名はリアルで呼ばれても知らないからしたら山田さんなんだな程度にしか思われない。そのへんも考慮して名前をそのままにしていたなら割と出来る人かもしれない。
「デラックスモンブランの頼んだやつ来たよデラックスモンブラン。」
横からまた知らない人が。というかまだみんな自己紹介とかしてないよね。
「だまれセクシーマショマロ。お前なんて俺よりひどい名前だろうが。」
「デラックスモンブランよりもセンスあると思うけど?」
ゲーム内では仲がいい二人はリアルでも仲がいいらしい。にしてもデラックスモンブランもセクシーマショマロってどっちもどっちって感じがするんだけど、あえてこれは言わない方がいいかもしれない。とそんなことを思っていたら自己紹介が始まった。
ギルマスの山田太郎さん。奇麗系なお姉さん。
そしてデラックスモンブランさんことモンさん。大学生らしい。
その横にいるのがセクシーマショマロさん。どうやらモンさんとは同じ大学生。少しちゃらい。
あとは少し太めの女性のakaneさんとメガネで無口な眼鏡男子のティエルラさん。この二人はゲーム内だとチャットが絶えることがないほどおしゃべりなのに、リアルだとまったく印象が異なる。本当に本人なの?ってくらい。そしてウインという名前の風子とYOUという名前の優はさっきからひそひそ二人で話してる。そっち混ぜろよーとか思うのはきっと私も同じ小心‘Sだから。そこから遅めのお昼を食べながらゲームの話やらキャラと実物だとみんなイメージ違いすぎ!という話など色々と話し終わったあとにみんなでボーリングに行って解散。ボーリングで用紙に記入する際に二人は名前が長いという理由で山田さんにエントリーネームがデラックスとセクシーにされてたのはちょっと面白かった。
帰りに三人で話したけど、ゲーム内と実際の雰囲気が違う人はどういった理由でそうなるんだろう。風子からしたら実際に会って話すのとゲーム内で話すのでは直接面と向かっているわけではないので気軽だから気が大きくなって内気な人でもおしゃべりになる人が多いらしい。あとは見た目、実生活にコンプレックスを抱いている人でもゲーム内ではキャラクターとして振る舞えるから枷から解き放たれているとか得意げに言ってたけど、なんでそんなことを知ってるのか聞いたら露骨に話題を逸らされた。過去にこの子に何があったのか分からないけど、深い闇を見た気がしたので流すことにした。たぶんみんなこうやって大人になっていくのだろう。きっとそれは私だけじゃない。うん。
次の日ゲームにログインしたらあの場ではあまり話さなかったakaneさんとティエルラさんがマシンガントークでオフ会でのことを話していた。アーシャちゃんは思っていることが顔に出やすいとかデラックスとセクシーは自重しろとか。人間観察されていた感があるけどたぶんそういった人たちなんだろう。
デラックス「オフ会って飲食店の前に出てるサンプルと実際に出てくる料理ってまったく別物だからそれと似たようなもんじゃない?」
セクシー「風俗で写真と実際に出てくる女の子が全然違うのと一緒だね!」
デラックス「おいばかやめろ。」
そんな最低な話が出ても何故だかギルマスの山田さんのことは一切出なかった。なんででしょう。不思議ですね!そこからオフ会では異性の出会い目的で来る出会い厨なるものが存在するから気をつけるんだよってティエルラさんに言われたけど、その瞬間セクシーさんがもの凄い早さで俺じゃないよ!と私にしか見えないチャットを送ってきた。帰りに私だけじゃなく風子と優にも連絡先を聞いていたからだろう。丁重にお断りしたけど。たぶんこの分だと二人にも同じようなチャット送ってそう。そんなことがあったとブログでそれっぽく書いたらセクシーさんへの誹謗中傷するコメントが目立った。見なかったことにした。ゲームを通して実際に人と会うのは初めてだったけど、なんだかんだ楽しかったし、ブログのコメント見る限り悪い人がいなかったのは運が良かったんだろうなぁと今にして実感するのでした。
区切りが悪いので今回は短め。毎日五千文字近くの小説を上げることが出来る人って凄いですね…構想するのと書くスピードが同時くらいなんでしょうか。すげー。




