脚力
「…なんていうか、疲れた。」
カレルが職員会議で抜け、俺たちは寮に戻ることとなった。
さすが夏である。
特別授業後、滝のように噴出する汗を拭いながら、俺はリンセル達を見つめた。
輝いている。そう感じた。
リンセルもアンセルも、俺のことをきちんと信じてくれている。
「…どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ。」
全部全部全部、好きだ。
…なんで、俺の方が泣きそうになってるんだよ。
「疲れたー…。」
「お疲れさまです。」
ミレイに、アンセルがタオルを渡す。
うんうん、仲良くしてくれよ?
「アンセルさん、なんで汗一つかかないの?」
「私は【氷】属性なので…。」
周りにバリアが半自動的に形成されるんです、とアンセルは申し訳なさそうに笑った。
ミレイはいいなーと笑って受け取る。
…平和である。
「クリーゼも、そんなに疲れた感じはないよな?」
「慣れてるからね、僕は。」
軽々しくいってくれるクリーゼである。
…おい、羨ましい。
ここの世界、前の世界と長さ等の単位は同じだった。
…違うのは金の単位くらいである。
「何メートル走った?」
「…3時間トップスピードでずっと走ってたから…。」
指を折って数えるクリーゼに、もういいと伝えておく。
人外な数値が出てきそうだ。
「120キロくらいかな?」
「時速40キロ!?」
100メートルを9秒。
リアルチート…とか思ってたら、もっとすごい人がいることを忘れていた。
「ミレイは、飛ばないのか?」
「…ん、あまり飛ばない。」
あれ、体力使うのよ、とミレイ。
へー、そうなんだーとクリーゼ。
そして俺から離れないトワイライト。
…5人か。プチハーレムじゃなくなってきたな。
どの基準でプチなのか分からんが。
「…っ?」
「どうしたの…?」
違和感を感じた。
人とすれ違う、しかし、それは何か違うようで。
思わず後ろを向く。
銀髪…の二人組だ。
男も女も、容姿が整っている。
…いや、整いすぎている?
「…浮気?」
「いやいや。」
「新しいターゲット?」
「いやいやいやいや。」
クリーゼとリンセルの言葉を否定し、もう一度注意深く見やる。
…しかし、二人は角を曲がってしまっていた。
「…なんか変な感じがするんだよな…。さっきの人を見ると。」
「…興奮?」
違うわ!
「クリーゼ、何でもその方向にするのはどうかと思うぞ。」
「…性欲の達者なラン君だから。」
性欲言うなて。
「…クリーゼの今日の夜はなしかなー。」
「ふみゃぅ!? …お願いします…ぅ!!!」
泣きつかれた。
こんな道の真ん中で泣くな!
俺の評判がさらに悪くなるだろうが!
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今日はやっぱりやめといた。
授業が予想以上に体力を削ってたのだ。
というわけで、今はアンセルとミレイの同室にいる。
「…な、なんか恥ずかしい。…でもうれしいな。…ランとこうやっていれるなんて。」
何度も言おう、俺とミレイはつきあっていなかった。
でも…、薄々気づいていたからな。
「ミレイさん、ちゃんとラン君は優しいですから…。」
「俺がいつ優しいなんて言った?」
アンセルの髪の毛をなでる。
ビクッってなった。可愛い。
それよりも…、ちゃんとミレイに聞きたいことがあるんだよおれは。
「ミレイって、全部の属性を使えるのか?」
「えーっと、《賛歌系》魔法だけ、全属性使えるけど…。私は攻撃系いっさい使えないからね…?」
不便である。
彼女と旅にでるとき、俺は彼女を守りながらいかないといけないのか…?
しかし、その不具合を遥かに上回るアドバンテージを、俺は得られるのだ。
「…さて、寝ますかね?」
「ふみゅーぅ。」
アンセルは、すでに半分寝ていた。
彼女に口づけをし、ミレイを見つめる。
「…んっ?」
「色っぽい声出すなよ…、可愛いんだからさ。」
ポッ。
…赤くなった。
さすが元日本人、ウブだ。
「…どうした?」
「い、いえっ…。」
そっと彼女の肩に手を置く。
…おびえたようにこちらを見つめるのもいい。
ある種の快感が…。げふんげふん。
「大丈夫、怖くはしないから。」
「ん…ランなら大丈夫だから…ね?」
ミレイに唇を重ねる。
夜は始まったばかりであった。




