適応力
どうぞお読みください!
------------------【リンセル視点】
私は、朦朧とする意識の中…、赤い剣《焔迦剣》を構える少年…ラン君を見つめた。
…いきなり…、上級って、唱えられるものだっけ?
あれは、…ラン君の適応力の…。
証明だ。
…ダメだ、ラン君をみると胸が苦しくなる。
…見たら、泣きそうになっちゃう。
泣く。泣きたくないのに、愛しすぎて。
さっきは送り出しちゃったのに、今は早く戻ってきてほしいって思う…。
…ミレイさんの、賛歌は終わっていた。
「うぇ…。」
「…泣かないでください。…彼なら大丈夫ですよ。」
ギョウアンさんが強く私を抱きしめてくれる。
しかし、それは無理矢理、というような乱暴なものではない。
…護衛対象を安心させる、頼もしいハグだ。
「…私では彼の代わりは出来ませんが、私たちの目的はあくまでもあなた方の護衛ですから。」
その忠誠心には、頭を下げるしかない。
…ガラ、恐ろしく悪いのにね。
「ラン君…。」
もういちど、彼の名前を呼ぶ。
…がんばってね。
------------------【ラン視点】
今まで、対人とさっきのトカゲとしか戦ってないから、こういう巨大な相手と戦うのは…。
正直言って、きつい。
獄炎龍が動く度に、地面は揺れる。
獄炎龍が攻撃する度に、地面は抉れる。
完全に調子に乗ったな…俺。
…大口、たたくんじゃなかったなと思いつつ。
俺はどうにかして、その爪を切り落とせないかと模索していた。
「くっ!」
ウェイカーという種族は、元々戦闘種族と呼ばれるほど戦いには適している。
しかし、ソレは対人の戦闘であって、魔獣狩りではない。
「うがっ…!」
爪の攻撃をよけきれず、左肩が一撃で血塗れになる。
しかも…。【火】属性だ…!
「がっ!」
灼熱とも捉えられる、熱さと痛みに思わず声を漏らす。
ギョウアンに鳩尾を突かれた時よりも、遙かに痛い!
しかも、このあと待ち受けるのはリアルな【死】。
俺は、大切な人を結局守れないのだろうか。
…嫌だ。
「『超絶能力開花』、発動。」
リンセルが泣いている。
俺は、彼女が渡してくれた魔力で覚醒した。
自分の姿が、炎焔に包まれる。
熱さは感じない。
代わりに、《焔迦剣》が強化されているのに気づいた。
炎焔を噴き出したその剣。
それは、俺にとっての心の意志のようだった。
「Gaaaaaaaaaaa!!!!」
獄炎龍が吼え、一気に炎焔を口から発射した。
それを避け、いったん距離をとる。
いくら『アッパー』で強化されたとはいえ、それでも有り余るほどの差はある。
この『アッパー』、癖が強すぎてうまく使える気がしない。
…使いこなせない。
可能性は4:6と言ったところか。
…もちろん、俺が4だが。
ちなみに、流れ込んできた知識の中には、獄炎龍の情報もあった。
弱点は目、遠距離攻撃はそこに当てない限り効果をほぼなさない。
それか、身体の真ん中…にある心臓を貫くか。
しかし、それも無理だ。
強固すぎる鱗に包まれているからだ。
それこそ、前の世界の対物…ライフルだっけ?
戦車用のあんな感じのを持ってこないとたぶん、打ち抜けない。
そもそも、龍というのは滅多に現れないのだ。
対策方法は、情報にはあまりなかった。
「獄炎龍さんよぉ…。何とかして帰ってくれないかね…?」
龍に言葉が通じるとは思えなかったが、話しかけてみる。
…周りからみたら滑稽だろう。
しかし、代わりに返ってきたのは。
巨大な炎焔の塊だった。
「うげっ!?」
間一髪。
それをローリングで避ける。
あぶな、と思いながら横を見つめると、そこには焦土があった。
「…いや、食らったら死ぬって。」
なら死ね、と言わんばかりの攻撃がまたもや俺を襲う。
《焔迦剣》を鱗に打ちつけても、カキンとはじかれるだけだ。
2、3個は剥いてやったが、痛がる素振りすら見せない。
だからといって、目を狙ったらそのまま食われるだろう。
…第一、俺の体力が限界に近い。
かれこれ…30分、俺は避け続けている。
『アッパー』のアシストがあったとしても…。
ダメだ。…左腕の感覚がほとんどない。
「Guuuuuu…。」
ニヤリ、と龍が笑ったような気がした。
一気に息を吸い、太陽かと錯覚してしまうくらい、巨大な炎球を、生成。
死の予感しかしなかった。
ミレイにあったばっかりで、リンセルたちに約束取り付けて。
…情けない。
やっぱり、誰一人守り通せないのか。
「Gyaaaaaaaaa!!!!」
しかし俺があきらめずに龍を見つめ続けたとき。
龍が、火球を消滅させ、のたうち回った。
属性にたいする適応力は高くとも、
新能力に対する適応力はそこそこなので
うまく使いこなせないのが現状。
…




