焔氷乱舞
どうぞお読みくださいっ。
「…くっ。」
トカゲ1匹1匹は大したことない。
だけれども、問題は別にあった。
簡単に言えば、1匹倒せば2匹、次に待ちかまえているような感じだ。
アンセルが、広範囲攻撃『魔能力』を立て続けに唱えても、その数が減るようには思えなかった。
「アンセル! …無理はするな。ぶっ倒れるぞ。」
「大丈夫です。まだ。」
まだ、と出しているあたり、もうすぐ…ということか。
限界は近いようだ。
息切れしかけている。
リンセルは、長手袋に所々の焼け跡があった。
それが自分の『魔能力』の副産物なのか、それとも…っ?
「心配しないで。」
そんなこといっているけど…結局のところ、限界も近いだろう。
『不知火』を放ち続けているのだ。
…『魔能力』は、魔力と体力両方を消費する。
それは俺も実感を持って体感した。
「んくっ…!」
クリーゼの属性は【地】。
基本的に魔法等、『魔能力』を含め地形を造り変えることになるため、特に魔力・体力を消費する。
「クリーゼ、無理はするな。」
「…まだ大丈夫…っ!?」
クリーゼの頭に向かって飛びかかったインフェルノリザードを斬り裂く。
ギャアアアアアッッッ!!!
断末魔を上げたトカゲを蹴って吹き飛ばす。
「気をつけろ、クリーゼ。」
「ご、ごめん。」
今は、一瞬の気のゆるみが命取りになってしまうから。
クリーゼに少々強めに注意を促す。
「あと、キツイなら本当に無理はするな。」
「じゃ、じゃあ、ちょっと休憩する。」
クリーゼが一旦離れる。
「ごめんね。僕、役に立てなかった。」
…それは仕方のないことだろう。
すこし、クリーゼの様子がおかしかったのは…。
…体力の限界からだろうか。
クリーゼが施設に入るのを確認して、俺は自分の魔力残量を確認した。
まだ結構残っている。
どうしようか。このまま禁術を使って一気に薙ぎ払うか。
《闇魔剣》では、それとの相乗効果を期待できる魔法は少ない。
しかし、そんなことを考えている矢先のこと。
声が響いた。
「【氷】属性禁術広範囲支援魔法、《吹雪の賛歌》」
恐ろしく澄んだ声。
そして、冷たくも滑らかな竪琴の音色。
冷気。
発動者は、おそらくというか、絶対にミレイだろう。
「…あれは!?」
「…《賛歌系》魔法!?」
リンセルがひどく動揺している。
ていうか、 《賛歌系》魔法ってなに
それを聞く前に、あたりに変化が起こった。
まず、《闇魔剣》が吹雪をまとった。
…前代未聞のことである。
はぁ!?
「《賛歌系》魔法は、【一定時間、元々持っていた属性とは別に、賛歌の該当する属性を追加する。】という効果と、全体的な能力の大幅な増加を支援する魔法です。ちなみに効力持続時間は、歌っている間…つまり5分間です。」
「…なにそのチート。」
桁違いの支援力である。
…いやー。
「…では、一気に殲滅させましょうか。《賛歌系》魔法は、おそらく1回唱えるのが限界でしょうし。」
「怖いこと言うなおい。」
アンセルが俺を見て、にこっと笑う。
…色気も加わって素晴らしいものだった。
「第1発はラン君。お願いしますね。」
「…了解。」
《吹雪の賛歌》の効果だろうか。
インフェルノリザードたちは、足を取られて動けないようだ。
いやー。
ここが火山だってこと、忘れちゃうからね。
寒い。異常気象発生なう。
《闇魔剣》に、魔力をありったけそそぎ込む。
それに乗じて。
『魔能力』も発動。
《闇魔剣》の周りの吹雪はいっそう強く渦巻き、剣自体も大きさを増していく。
「フンッ!!」
出来るだけ力を込めて一気に横に。
薙ぐとともに、斬撃が闇の刃となって宙を斬り裂く。
吹雪が吹き荒れ、刃はインフェルノリザード達を2枚おろしにした。
トカゲの2枚おろし、見たくなかった。
気持ち悪くなって嘔吐物を吐き出そうになる。
しかし、そんな暇はない。
そこに向かって躍り出たのはリンセルとアンセル。
そして、『魔能力』の詠唱発動を始めた。
…詠唱ありの『魔能力』は大抵、大業である。
つまり、殲滅するというアンセルの言葉は、本気だったということだ。
「《氷の神よ、天災を繰りし氷結の神よ。》」
「《焔の神よ、業火を操りし豪炎の神よ》」
アンセルとリンセル、それぞれの周りに吹雪と炎焔の濃厚なオーラが一気に濃縮され、突き出しているもののだらりとなっている手のひらに集まっていく。
魔力の球は輝きを増して行き、ついには二人の背丈の半分ほどになっていた。
そして、二人が手のひらをピン、と広げた。
「「《標的を打ち砕け、『焔氷乱舞』》」」
《賛歌系》魔法は、あくまでも支援であり、直接的な威力を持ちません。
しかも、発動するひとは歌っていないといけないため、一人では役に立たないということです。
勿論、属性ごとに1つずつあります。
てなわけで、次回からは主人公ピンチ。
大ピンチ。
次回もお楽しみください。
読んでくださった方々、誠にありがとうございました。




