表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醒眼族の異世界学園覚醒譚  作者: 天御夜 釉
第1部、第7章 大切な人を救うためには、やはり課題が必要。…というわけで、課題をこなすために火山に行ってきます!
70/442

吹雪の賛歌

 インフェルノリザード。

 この世界では、火山周辺に生息する気性の荒い魔物の中でも特に危険とされているらしい。

 それが、この施設に向かってきているのだという。


「…あれが。」

「そうですね。」


 俺は今、山の上から、溶岩を楽々と渡ってやってくる真っ赤な巨大トカゲを見つめながら、戦闘準備を始めていた。


「弱点は、頭と【氷】属性です。…頭なら、武器でも切り落とせます。」

「アンセル、ありがとう。」


 アンセルも既に戦闘する気満々のようで。

 リンセルも、クリーゼも頷いている。


 ミレイはメアリーと施設の中、ギョウアンに保護してもらっている。

 ガイロウは一応護衛の為、戦闘態勢。

 しかし、クリーゼ達に戦うなとは言わなかった。


「インフェルノリザードくらい・・・なら、余裕余裕!」


 なんてクリーゼとリンセルが言ったからだ。

 …まあ、俺はリンセルの実力を知っているからいいんだが。


「さて…来るぞ。」


 おびただしい数のトカゲが見えた。

 赤い。

 そして、火を噴いている。


 俺は、叫ぶ。


「【闇】属性上級・・近距離創造魔法、《闇魔剣アビス・ブレード》っ!」







------------------【ミレイ視点】



 あらし

 貴方は、いつのまにそんなに強くなったの?


 私、ミレイ・ヘリオスは嘗ての幼なじみをみて、そう考える。

 急に現れて、急に協力を要請されて。

 …正直、戸惑った。


 一生、会えるか会えないかかなって、思っていたから。


「…いきなり上級魔法ですか。」


 ここは嵐達の戦闘が見える、ベランダの上。

 日本風の服に身をまとった猫耳の男が、呟く。


 嵐は、真っ黒い剣を振り回していた。

 黒い、まるで、…月夜みたいに。

 黒いのは黒いけど、何か煌めいている。

 しかも、闇雲じゃない。

 ちゃんと、インフェルノリザードの頭を的確に切り取っている。


「やはり、気になりますか。…ランのこと。」


 このひと、直感が鋭い。

 …シオン・ギョウアンさんだっけ?

 心の中を見透かされているような気がする。


「…そうですね。」


 そう答えながら、さっき私に鬼気迫る顔で捲くし立てた、クールビューティーを思わせる少女…アンセルさんの方をみる。


「…!」


 なにを言っているのか、この距離だともちろん聞こえない…はずなんだけど、なぜだかその声は澄んでいて。


「《氷の神よ、冷たき氷柱に宿されし冥府の神よ。》」


 指揮をするように、また、壮大な曲を歌うように。

 手を広げる。

 彼女の体の周りから、水色のオーラが渦巻き始める。


「《標的を突き刺せ、『吹雪舞フブキマイ』》」


 溶岩をも凍らせるほどの超低温。

 ここからも、その冷たさは伝わってくるほど。


 次の瞬間、大群の半分近くは氷の彫像みたいに、固まっていた。


「つ、強い。」

「驚かれるのも仕方がないでしょう。…アンセル嬢は、【異名付き】ですから。」


 異名制度について、私は特に詳しくは知らない。

 でも、ある程度の基準を彼女が突破しているのだろうと言うことはわかる。


 嵐も異名あったし。

 彼は、有名な魔法学校で総合1位をとったらしいんだけどね!


「…あれでも、足りないって言うの…?」

「ええ、全く持って足りませんね。」


 彼女たちの親は、別格ですから。

 ギョウアンさんは、悲しそうに笑う。

 あれよりも、…強いの?


 だからこそ、嵐…いや、ランはもっと強くなりたいの?

 …私は、彼女たちと昔の私を重ねて見ていた。


 私は、当時「プチトマト」って呼ばれてて、身長は高校生になっても140くらい。

 そこに、180くらいの男の人たちが襲いかかってきたとき、いつもランは助けてくれた。

 …そして、いつも謝る。


『ごめん、守ってやれなかった。』


 って…。

 もちろん、私はランが好きだったけど、つきあってはいなかった。

 なにもされていないのに、未遂で終わったのに。

 彼は、いつも自分を責めていたから。


「んー、ちょっと押されていますね。」


 多勢に無勢、数の暴力はやっぱり酷い。

 …どうしよう。


「…?」


 私が立ち上がると、ギョウアンさんは戸惑ったように私を見つめた。


 それを無視して、竪琴を構える。


 …ランの、気持ちに気づいたからだ。

 失望なんてしなくてよかったのだ。

 …本質は、なにも変わっていない。

 誰かを守ろうとしている。

 それが、私だけじゃなくなっただけ。







「…っ。【氷】属性禁術広範囲支援魔法、《吹雪の賛歌ブリザード・アンセム》」






 唱えるとともに、竪琴を鳴らして、歌う。

 彼が助けを求めているのなら、助けてあげよう。


 音色に乗って、冷気は広範囲に広がる。

 冷気は普通のものじゃない。

 …私の、心そのもの。


 吹雪は、私のランを助けてあげたいという気持ちに沿うように、インフェルノリザードを凍らせ。

 アンセルさんのオーラは、いっそう強くなっていく。


 《吹雪の賛歌ブリザード・アンセム》の効果のみならず、《賛歌アンセム系》の魔法の一番の効果は、【一定時間、元々持っていた属性とは別に、賛歌の該当する属性を追加する。】というもの。

 もちろん、元からその場合はそれが幾重にも強化される。


 私からの、贈り物。


 転生神であるアルカの声を、聞いたような気がした。



























『もっと、道を進みなさい。 音色を運び、空をけて、大切な人を、救いなさい。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ