温泉
どうぞおよみください!
「…うぉぉ。」
目の前は楽園です。
なにが楽園って。
…年齢制限越えるからやめとく。
簡単にいおう。
メロンから大平原まで。
褐色から真っ白まで。
…サイコル3人…!
「それにしても…温泉なんて…いいですね?」
天使一人目、アンセルがホッと息をつく。
…うなじ! うなじ!
…白いよ!
雪みたいに白い!
「ふぁ…。僕、眠くなってきた…。」
天使二人目、クリーゼが欠伸をした。
欠伸移すな。…こっちも眠りに落ちそうだ。
夜の相手できないだろうが。
え、変な意味じゃないですよ?
…一緒に添い寝するだけです。
…おそらく。
「うにゅーぅ。」
何かうめいているのは天使三人目、リンセル。
…ごめん、一瞬誰だ! って思ってしまった。
「うにゃーぅ…?」
…半分寝ているのだろうか、おぼつかない手で俺の肩を触り、そのまま…。
寝た。
ヲイ。
「…ふふ、あらあら。」
あらあらじゃないよアンセル。
ここで寝たら後で困るよ。
ふやけちゃうよ。
…その前に茹で蛸になるっ。
「クリーゼ、助けて。」
「…うん、ちょっと待っててね。」
俺が抱き上げたリンセルを、クリーゼがそっと受け取る。
…思ったよりも、クリーゼは力持ちだったのだ!
親がガラ悪いとはいえ、護衛の仕事をやっていることに影響はあるのだろうか。
それにしても…。
「先に寝てていいー?」
クリーゼの言葉に、うなずく。
「一応、全員分の布団を敷いておいてくれー。」
「了解ー!」
そう…オウラン帝国風の部屋を頼んだら。
日本の旅館そっくりだったのだ。
畳! 襖!
すっばらしい!
「…アンセルは、そろそろ上がらないのか?」
「…もうちょっと、浸かっていようかなと思いまして。…ラン君もどうですか?」
アンセルの隣に移動し、飲み物を渡す。
炭酸水だ。
それを受け取り、アンセルは一口。
…すっきりしたような顔で、俺を見つめた。
「月が出ていますね。」
これこそ、月夜というものか。
…この世界でも、月っていうんだな。
彼女の銀髪が、月明かりを浴びてきらきらと瞬く。
その姿は、神秘的だった。
「…ラン君には、感謝していますから。」
「俺、感謝されるようなことしたっけ?」
悪いが、身に覚えがない。
「でも、私たちを死なせないって、言ってくれました…。先入観ばかりに気を取られて、運命には逆らえないんだっていう思いを、ラン君は…。」
変えてくれました、とアンセルは微笑む。
…でもごめん。
「…それは、俺の責任だから。…感謝なんてされたくない。…自分の幸せを取りに行くために、していることだから。」
アンセルやリンセルに、感謝される資格なんてないから。
…自分のエゴのための行為だから。
しかし、アンセルは黙って俺の頭を撫でる。
「…。」
「…。」
「…落ち着きましたか?」
うなずく。
と、アンセルは一息吸って、話始めた。
「私が貴方に感謝する理由は、二つあります。一つは、記憶を失っている私を、捨てていないと言うことです。貴方との関係のいっさい…記憶がなくなり、リュー君の記憶しかない私に対して、ラン君は本当に、親身に接してくれていたと思います。」
…アンセル?
普段、…ふつうなら、聞くことの出来ない話だろう。
捨てる訳ない…のに。
「二つ目は、今回のことです。普通の人ならば、【伝統】を知った時点で私たちと縁を切るでしょう。…【伝統】というのは、あくまでも【伝統】であり、破るなんてことは普通考えませんから。…でも、ラン君はそれを破り、お父様と戦って、魔王ですら倒しにいくと言ってくれました。」
「…そんなに、すごいことでもないだろう…。」
「すごいことなんです。…少なくとも、私の周りには…私の体を目当てにした人しか、いませんでしたから。…リュー君と、ラン君以外は。」
俺はそんなに高貴な人じゃない。
俺はかぶりを振る。
俺だって、アンセルの身体には注目しているから。
汚したいとは思っていないけど。
少なくとも、多少の下心はあったはずだ。
「…下心だけだった人が、ここまでしてくれる訳ないじゃないですか。」
確かに、それはそうだけどもな。
…ちゃんと、告白したときから、俺は本気だったし。
…いや、本気だと思っていた。
「大丈夫ですよ。…ちゃんと、私も今は…ラン君のこと、本気で想っていますから。」
涙流して言われても困る。
…そっと、彼女が俺にしがみつく。
「…ラン君、これからも、よろしくお願いします…。」
「…一生だぞ? …絶対な?」
絶対、守り通してみせる。
アンセルも、リンセルも、もちろん…クリーゼも。
俺はそれを決意したあと、アンセルの手を取った。
「…そろそろ上がろう。」
「…はいっ。」




