突撃
------------------【リンセル視点】
「やはり、可愛いな…。リンセルスフィア嬢?」
「…なにを…。」
身体が動かなかった。
…怖い。
この人たちは、リュー君を殺した人たちだから。
ラン君はまだ目覚めていないはず。
…気を失いそうになる絶望だけど、気を失ったら何をされるかわからないから。
「アンセリスティア嬢も可愛いけどね。」
「…さわらないで。」
後ろ手に手を縛られ、動けない状態でもお姉ちゃんは冷静だった。
…でも、その身体をさわられて、嫌悪感を露わにしていた。
『魔能力』は、なぜか使えない。
…おそらく、何らかの抑制が掛かっている…。
「つれないなぁ…。一緒に寝たこともあるのに。」
「あのときは貴方が無理矢理…っ!」
お姉ちゃんに絡んでいる男の名前は、ゼガイルだったと思う。
…でも、お姉ちゃんの純潔はまだ汚されていない…はず。
一緒に寝かされていたけど、あのときは何もされなかった。
「…リンセリスティア嬢は、もう初めてなくなっちゃったかな?」
「…下ネタ言ってる場合じゃないと思う。」
ラン君の生体反応が、どんどん近づいてくるから。
この前、ラン君を発見したのも、あながち嘘じゃないんだよ?
大好きな人だから。
…ふふ、ヤンデレの素質があるかも。
「君たちの第一の救世主は、呆気なく死んじゃったけど、2人目はいるの? …言っておくけど、3回目はないよ? …今回、相手を殺せたら君を貫くから。」
…沸き上がる嫌悪感。
…気持ち悪い。
…目も合わせたくないのに、彼は私の顎をつかんでくる。
「ほら、もっと俺を見て? …君のその美しい顔が、泣き顔に変わっていくのを見たいんだよ。」
…変態さんだから。
…ラン君…助けて…。
「んお、来たようだね。」
倉庫の外から喧噪。
ラン君の生体反応は、いっさいスピードを変えずにこっちに近づいてきた。
「…さて、君たちの王子様は誰かな?」
------------------【ラン視点】
「【闇】属性上級近距離創造魔法、《闇魔剣》。【光】属性上級近距離創造魔法、《光聖剣》。」
おお!
全く持って魔力を消費している感覚がない。
『いやー。だって、君の鎖骨の紋章がさ。かなり濃くなってるからね。』
一属性しか扱えないはずのこの世界で、2つの属性が扱えるのは、都合がいい。
《光聖剣》は、本当にアニメとかでも出てきそうな光輝く白い剣だ。
眩しい。…持っている本人が眩しいんだ。
逆に《闇魔剣》は、THE:闇の剣みたいな。
黒い靄が掛かっていて、その下には赤黒く、鈍く光るいかにも危険ですよ、みたいな剣が。
こちらに突進してきた男を薙ぎ、走ったまま切り伏せる。
次。
「【火】属性初級遠距離攻撃魔法、《赤球》っ!」
火の玉を射出してきたが、それの真ん中を切って霧散させる。
簡単に言えば、《光聖剣》が【火】の属性を、そのまま光に変えた。
さすが上級【浄化系】創造武器。
ちなみに《闇魔剣》は上級【汚染系】創造武器の部類らしい。
カレルに聞いた。
これ、豆知識ね!
「んなっ!」
「遅い。」
結局相手はウェイカーだから。
初級魔法しか使えないんだな。
火の玉をだしたツンツン頭の腹を蹴り上げ、吹き飛ばす。
「邪魔だ!」
本当に邪魔になったため、俺は一気に走り出した。
「おお、来たね。」
相手のボスらしい人が、ニヤリと笑った。
薄気味悪い、というのが第1の印象である。
目は見開いていて、髪の毛は黒くボサボサ。
「君は、この二人の救世主になれるかな?」
「さあな。」
リンセルもアンセルも…ちょっとやばいか。
「…お前ら、剥いておけ。手は出すな。」
男がわんさか、アンセルとリンセルに群がった。
…ああ、逆鱗が行きそう。
…逆鱗が行くってなんだ。
リンセルの泣き声が聞こえる。
アンセルの悲鳴が聞こえる。
リーダー思わしき男は、ニヤリと笑った。
だが、俺の紋章もいっそう強く光り始めている。
「どうだい? 何かするかい?」
「ああ、するよ。」
リュー。復讐といくか?
『肯定しよう。…行動は君に任せる。』
俺は、さっきは不可能だった事を、実行した。
一か八か。
二つの剣を霧散させ、唱える。
「【闇】属性禁術近距離創造魔法、《闇夜魔神剣》」




