禁術
俺は一週間しかない残り時間の中、リンセルやアンセルたちの力を借りて必死に訓練を積み重ねていた。
それにはカレルも協力してくれていた。
…本当に、有り難かった。
「…ウスギリ、今日は頼む。」
「わかった。」
ここは学園内の闘技場だ。
普段、授業で使うくらいで放課後は解放されているが、ほとんど利用されない。
…そりゃあ、ね。
学園内はお金がでないからねえ。
「3つか。OK。…行こうか!」
ケレイジがいきなり突進してきた…!
はやっ!
え、マジか!?
ええ!?
「遅いっ!」
ちなみに、考査で使われる【腕輪】は【肩代わりの腕輪】というもので、これは【犠牲の腕輪】のボーダーラインを低くしたものだ。
って、そんなこと考えている暇がない!
ボコッ!
危なっ!
間一髪でよける!
「【地】属性初級近接魔法っ! 《石拳ッッ!」
単発のパンチか!
って、おい!
地面が割れた。
…はぁっ!?
「いやー、《石拳はね…。重いから精一杯…。」
「怖えよ!」
武器を生成する暇もありゃあしないっ!
ここはサイコルの『魔能力』を…!
《闇夜、我が身を包め》
ちょっとイタいが、頭の中でそう反復し、自分の周りを陰で包むイメージ。
…サイコルの『魔能力』の起爆材は、イメージだからだ!
しかも、『魔能力』には魔法のような定義が存在しないのだ!
ふはは!
「油断大敵だと忠告しておこう!」
肩に一発入ったっ!?
…1ダメージか…。
てか痛いっっ!
『魔能力』が発動する前に…っ!?
「ぐおおおお…。」
「次行くぞ!」
ウスギリが一気に肩を落とした。
…ん?
「『雷迅速』、発動ッ!!」
何ですって!?
ケレイジの特殊アビリティーっ!?
速い、速いって…!
ジグザグに、残像も出来ようかというスピードで走り込んでくる…!
「【闇】属性禁術創造近接魔法、《闇夜魔神剣》…っ!」
魔力が、一気に吸い取られた。
恐ろしい。
怖い。
自分の魂が、吸われていきそうな感じがする。
これは俺が偶々図書館で読んだ本にあった。
胡散臭いなと思いつつ、俺は心のどこかにその言葉を、魔法の名前を記憶の中にとどめていたのだ。
邪悪、という感じは一切見受けられない。
この世界は善と悪だけでできているわけではない、という意味か。
この世界、俺の元いた世界とは違うことも特に多い中。
俺の常識が、覆されているような気がする。
「ランっ!」
ウスギリが俺を呼んでいる。
…しかし、それを認識し、振り返る前に。
俺は意識を失っていた。
------------------【カレル視点】
「アテラット先生ッ!」
突然の叫び声に、コーヒーを飲み込もうとしていた俺は慌てて自室のドアを開く。
一体どうした?
「アテラット先生…! ランが…!」
「…落ち着けウスギリ。…どうしたんだ?」
ウスギリが、ランを抱きかかえてかなり焦っていた。
…おい、落ち着けよ、本当にさ。
「…ランが、禁術魔法を唱えた。」
「…はぁ!?」
これは焦るのも当たり前か!
すぐに自室のベッドにランを寝かせる。
禁術魔法。
それは一般的な魔法とは違い、最悪死に至る凶悪な威力を誇る魔法だ。
それは【闇】属性に限らず、どの属性にもあるものだ。
…威力的には、???>禁術>最上級>上級>中級>初級となる。
禁術の上にもいくつかあるという噂があるが、俺はしらない。
「禁術なら…魔力の吸い取られ過ぎか!?」
「たぶん…。」
たぶん、か。
ラン…お前はがんばりすぎだよ。
…お前はリューか。
…転生者って、何で似てんのかね。
「お、俺、リンたち呼んできます。」
「ああ、頼む…。」
ウスギリが部屋を出ていった。
…さて、魔力を流し込むか。




