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醒眼族の異世界学園覚醒譚  作者: 天御夜 釉
第2部、第6章 戦争に傭兵として雇われるらしいよ。
188/442

王宮にて

最後まで読んでいただければ光栄です

 『カエシウス聖王国』王宮。

 白い城に、今日は警備が多いような気がした。

 …多い。いつもより、4倍ほど多く…。

 レイカー家突入の、第一関門を連想させる。

 門衛の顔は険しく、中には鎧に身を包んで剣を持っている人も。


「…やはり、王都は緊急事態になっているのだろうな。」


 クレインクインが緊急速達を門衛に渡し、中に通してもらう。

 特に身体検査などはなかったが、大丈夫なのだろうか。


「緊急速達は、偽造が不可能だからな。」

「でも。俺とか。」

「【聖魔の牙】は、顔を公開していないのだぞ? …バレるにしても、どうせ後で…。」


 クインが後で何があるか言わないうちに、前から一人の男。

 …前代陛下だ。


「モノリストリシューラ・ゲイボルグ・クライノート様ですね。」

「フルネームで、【聖魔の牙バルデュバル・ケル】が覚えてくれるとは光栄だ。いかんせん長くてな、フルネームで覚えてくれる人は少ない。」


 だって長いもん。

 なんだろうな、この世界の地位の高い人はみんな長いんだよね、名前。


 裕福そうに蓄えた髭。

 …皺の目立つ顔。

 煌めきを少し失った髪。


 しかし、その姿は…。

 堂々とした老騎士を思わせる。


「クレインクイン。」

「はい、お父様。」


 …クインが、今まで聞いたこともないような声、口調で返事をする。

 …今まで俺が接してきた、男勝りな高めのハスキーボイスではない。

 …いつもよりも更に高く、妖艶さ、または可憐さ。

 その中に覗く自信を、同時に示すような声だった。


「【聖魔】一行を部屋に。その後は自由にしてもいい。…全員揃い次第、また連絡する。」

「わかりました。…ではご一行、こちらです。」


 …ビフォーアフターだよまったく。

 どうなってるんですか。










「ふぅ。あの声を出すのは疲れるな。」

「…ああ、クインはその状態の方がいい。」


 あっちもよかったのだが、俺はクインの素の態度の方がやはり好みらしい。

 俺が答えると、クインはわずかにニヤケた。

 それも気持ち悪いほどではなく、他の人が見たら微笑む程度に見える。


 しかし、…俺は無表情な人と前世は一緒にいたりしているからな。

 甘い。


「…むー。」

「むーぅ。」

「むむ…。」


 …順にアンセル、クリーゼ、リンセル。

 どうしたんだこの三人は。


「…クインさん、ラン君と一緒にいるときは楽しそうですよね?」

「僕たちと一緒にいても、どこかつまらなさそうな顔をしますが、ラン君と一緒にいるときはいっつも笑ってますよね。なにより、目が輝いてます。」

「ラン君とお話をしているとき、クインさんって顔を僅かに赤らめますよねー?」


 …俺が甘かった。

 この三人の方が、洞察力は高い。


「…いや、これはだな。」

「「「いいんですよ? 知っていますから。」」」


 お、三人の声が見事に重なったぞ?

 クインは戸惑っているようだ。


「な、何を知っているって?」

「クインさんが、ラン君にこ…」

「わー、わー! やめてくれ!」


 …いやはや、ここまでパニクって幼稚になっているクインを見るのは初めてかもしれない。

 これはこれで、可愛いと思うし…。


「…はは。」

「何笑ってるんですか? ラン君。」

「いや…微笑ましい光景だなって思ってさ。」


 …俺の周りは安泰、と。















「ああ、ラン君、リンセル、アンセル。」

「お久しぶり…でもないか。2ヶ月ぶりですルークさん。」


 クインに誘導された部屋に入る直前、呼び止められる。

 リンセルとアンセルの父親である、ルーク・レイカーさんである。


「…ラン君も傭兵要員かね?」

「も、ということはルークさんも?」


 ルークさんはうなずく。

 しかし、すぐに顔をゆるませた。


「心配するな、ラン君。…私はこれでも、三十数年…傭兵から騎士団を経て、今でも剣術の指導をしているのだぞ?」


 俺は、ルークさんの事情を知っているから、その部分はぜんぜん心配していないが。


「あれ? スピネルさんは?」

「ああ、妻は今休んでいるよ。【デルエクス】酔いをしてしまってね。」


 …はて、あの酔いの要因が一つも見つからないような乗り物を、どう運転すれば酔うんだろうか。

 ドリフトでも繰り返したのかな?


「なら、後で挨拶に行きます。」

「そうしてもらえるとありがたい。…スピネルも、君に期待を寄せているからな。」


 …正式な婚約者って、こんなにも待遇のいいものだったんだな。

 …関門試験の時とは大違いだ。


 それにしても…なんで。


「ルークさんは、戦いが近づくにつれて…、元気になる体質なんですか?」

「精神的にそうなるな。…騎士団にいたころは、カエシウスに進入しようとする盗賊団とよく戦ったものだ。」


 今の言葉でわかった。

 騎士団と傭兵の二種類の職業。

 そのおかげで、ルークさんは対人戦に特化している。


 ……恐らく、魔獣と戦うことはほとんどないんじゃ…。


「魔獣と戦ったことは?」

「そうだな。…伝説レジェンド級の巨大亀と、王都を守るために戦ったきりだな。」


 その亀の名前は玄武ゲンブ。体長100メーティラにも達する巨大な魔獣。

 …マジで伝説上の生き物だ。


「…そういうわけだ。…話しが長くなってしまったな。…疲れているだろう、少しは休んだ方がいい。」

「いえいえ、為になるお話をありがとうございました。」













 さて、ルークさんの言ったとおり、すこし休んだ方がいいだろう。



ありがとうございました。

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