寝起き
「…ラン君?」
その声で、次の日は目覚めた。
幼いほうの声だ、きっとリンセルだろう。
目を開ける。
そこには、俺の手を握ったまま、戸惑った顔をしているリンセルがいた。
今日は太陽の日…つまりは日曜日である。
アンセルもリンもウスギリも遅い。
起きるのが昼前になるため、こういう時間も…。
「…布団、ありがとね。」
「ああ…。…リンセル。」
リンセルがこっちを向いて、小首を傾げた。
うん、今日も可愛い。
…唐突に、感情が押さえきれなくなった。
「君が愛しいよ。」
「…ふぇ…? え?」
パニック状態のリンセルも可愛い。
…我慢できなくなる。
「…まだ、気持ちの整理が着いていないのも確かだし、好きなのは本当にリンセルなのか、アンセルなのかも分からない。…でも、少なくとも今は、二人が愛しく思える。」
「…へ…? 本当…?」
リンセルが、強く俺の手を握った。
それこそ、痛いくらいに。
でも、何も言わない。
そっと抱き寄せる。
柔らかい。
小さくて、人形のようで。
しかし、確かな人の温もりがあった。
「…お付き合いはちょっと先だけど。…中途半端かもしれない気持ちだけど、いいか?」
「……。」
彼女は、何も言わない。
俺が彼女の体を離さない限り、彼女は俺の手を離そうとはしないだろう。
…そんな、気がしていた。
------------------【リンセル視点】
朝、起きたらラン君が目の前にいた。
「ひぁ…?」
奇声をあげかけて、自分の周りを確認した。
…布団、かかってる。
手…ラン君の手を握ってる。
…あ、これかな。原因。
ほっぺたをつんつんしてみた。
…起きない。
このままキスしよっかなーとも思ったけど、さすがに寝込みを襲うのはダメかな?
「…ラン君?」
昨日のことがあって、今日。
大好きな人の名前を呼んでみる。
…あ、起きた。
…なんて話しかけよう…?
とりあえず、お礼…。
「…布団、ありがとね。」
「ああ…。…リンセル。」
彼が、私の名前を唐突に。
頭が沸騰しそうです。
え、あまりパニクるなって言わないで…。
たぶん、学年の中では一番女子に人気があって、自分の一番好きな人に名前で呼ばれて…。
うん、大好きビームを目線でおくっとこ。
届くかな…。
「君が愛しいよ。」
「…ふぇ…? え?」
えへへ、ごめんなさい、パニクっちゃいましたっ☆
頭の中が真っ白です。どうしましょう。
マジマジとラン君を見つめてしまう。
冗談じゃないかって、思ってしまう。
…かっこいいなぁ…。って、そういう場合じゃなくて!
愛しい…?
ふぁーーーーー!
「…まだ、気持ちの整理が着いていないのも確かだし、好きなのは本当にリンセルなのか、アンセルなのかも分からない。…でも、少なくとも今は、二人が愛しく思える。」
「…へ…? 本当…?」
本当とかの前に、お姉ちゃんはついでに聞こえる。
ふふ、やった☆
やっとお姉ちゃんに勝てたよ!
夢じゃなかろうかと思って、手を強く握り込む。
…すこしだけ、実感がわいたような気がしたとき、抱き寄せられた。
「…お付き合いはちょっと先だけど。…中途半端かもしれない気持ちだけど、いいか?」
「……。」
彼は暖かかった。
筋肉質…だったけど、優しさを感じる。
本気なんだって、…改めて思った。
中途半端でも全然かまいません。
…今まで通りでかまわないけど…。
もっと一緒にいてくれるなら…。
私は、ずっと貴方のそばにいます。