住居
最後まで読んでいただければ光栄です!
「あれ、シルバもここか?」
「ん、ひとつだけ空き部屋があると聞いて。」
シルバは、俺たちと同じ寮らしいが…。
空き部屋なんてあったっけか?
俺の隣にいる龍の子は、物珍しい物をみるような目つきで寮の建物を見つめている。
「…ずっとレザール社会だったのか?」
「そうだな。ほとんどが石造り・木造の建物だったな、レザールの周りは。前の世界はもっと発展していたなーと思いながら。」
確かに、シルバの前の世界は…アルカディア王国だっけか? 日本を知っているということは、なかなかに発展したところにいたと思われるけど…。
「前のところはどんな感じで発展してた?」
「えっと、超音速の戦闘機かな。特に【AR-010】、通称【Hope】は、最高時速マッハ3を越える可変翼の特級戦闘機。補給なしで地球を4~5周でき、さらにミサイルは地空不問のもので最大64発積める…ていうのは。」
これは機密情報だったはずなんだけどな、とシルバ。
それをこの年で知っている、というのと。
さらには転生したのに完璧な記憶能力。
…シルバとは関係ないが、シルバの元いた国は…。
俺の知っている世界を遙かに凌駕するものだったのだろう。
…というより、なんだそのいかにも小説に出てきそうな世界は。
「まあ、あの世界は魔法っぽいこともできたしな。ここでいう…サイコル?」
「…なんだと…?」
…シルバ…まさか鍛冶経験済み?
はは、まさかな。
「お前の考えていたことで大体合ってる。…転生前も鍛冶をかじっていてね。3歳頃から…。」
…なん…だと…?
「この世界は魔法で武器を打ち、武器の品質を良くすることが出来る。もちろん、魔法で詠唱して魔法剣も作成可能だろう? もっとも後者というのは、一時的なものだけれども。」
「前の世界にもあったのか?」
シルバは首を縦に振る。
「…そうだな。前の世界では属性能力というものが存在していた。詠唱は不要で、本当にこの世界の『魔能力』に酷似したものだ。」
属性能力…魔法…『魔能力』。
…ほかの世界にも、そんな物があったのか。
「君の世界は? 日本は、こっちの見解としては世界最高水準の国で、全面ガラス張りの研究室があったり、地下に基地があったりしたんだが。」
「ないよ。…本当に近未来だなそっちは。」
…SF映画の設定を語られたみたいな気持ちだ。
ちょっと戸惑った。
そこで、割り込むようにイヴが話しかけてきた。
「あの…、私の部屋は?」
「イヴもここ?」
「はい。…あの、もしよかったら…。」
俺は持っていた炭酸飲料を口に含む。
と、その途端イヴが口を開いた。
「一緒に寝ます?」
噴いた。
盛大に噴いた。
…向かい側にいるシルバに被害がなかったことが幸いか。
「だ、大丈夫!?」
リンセルが、持っていたハンカチで拭いてくれた。
優しさに感謝しよう。
「ありがと。」
「いえいえ。」
ちなみにリンセル以外のアンセルたちは、イヴをにらみつけていた。
シルバは天を仰いでいる。
「ちょっとイヴ来い。」
「え? 兄様私何かしました…?」
問答無用。そういうようにシルバはイヴの首根っこを掴み、猫を取り上げるように俺たちから離れていった。
…凄い膂力だな。
思ったよりもレザールは力が強いらしい。
ウェイカーが運動能力全般を得意とする…。特に武器術に特化しているといえるが。
レザールは徒手格闘が得意だったりするのかな。
でも、鍛冶が得意なら武器もさすがに使うか…。
------------------【シルバ視点】
俺は、疑問顔になりながらも、僅かにテンションが下がっているイヴに目をやった。
「…あの場面で、あれを言うか普通?」
「…え…。」
イヴが上目遣いにこちらを見やる。
…目を合わせても、俺には耐性がついているためどうとも思わない。
妹として、かわいいと思うだけだ。
「…確かに、イヴの今の状況もわかる。」
「でも、…ランさんに悟られたくないです。」
…彼女は特別だ。
ランに彼女の状態を言ったら、ランはどんな顔をするだろうか。
…引く?
おびえる?
イヴを避ける?
それとも…、何も言わないのか?
イヴを気にかけてくれるのか?
「…大丈夫ですよ兄様。…ランさんには、時がきたらちゃんと私から話をします。」
イヴの顔が、少しひきつる。
…おそらく、ランの態度よりも、さっきのアンセルさんやクリーゼさん、クレインクイン陛下の目線が怖かったのだろう。
…たしかに、怖かったな。
俺もブルッたからな、一瞬。
「壁は厚そうだな。…かなり高そうだし。」
「どんな壁であっても、私はあきらめませんし…。兄様も、応援していただけますよね?」
「もちろん。」
…彼女には何年お世話になったことか。
…今、その恩返しをするべきじゃないか?
ありがとうございました。
…エレメかわいい…。
ちなみに、「FOYH」とは一応ハイパーリンクしてます。
評価など、お待ちしております!
では~。