天才
最後まで読んでいただけたら光栄です!
「今日、このクラスに転校生が来るんだって!」
名前も覚えていない少女が、クラスに向かって叫んだ。
とたん、教室の中は騒ぎだす。
「どんな人?」
「…すっごいイケメンと、すっごい美人! …美人の方は、3年飛び級だって…!」
一部の男が歓声を上げる。
………だからエレメの【ヴルム】を目の前でさらしたくなかったんだ。
ちなみに、エレメはまだ『人化』できないことが判明した。
『りゅうのこのにおい。』
「龍の子?」
リンセルの手に抱かれているエレメが、俺に話しかける。
俺が言葉を返すと、エレメは頭を縦に振ってクゥ、と鳴いた。
『れざーるの。』
「…シルバとイヴか。」
天才鍛冶師とその義妹。
おそらく、それで間違いないだろう。
…カレルの仕事が増えるのはちょっとな。
「はいはい、全員座れ。誰か玄関で転校生の姿を見たから騒いでいると思うが、座れ。」
カレルが入ってきた。
若手ナンバーワンの実力を持ち合わせる彼は、生徒からの信頼も厚い。
そのため、すぐに静かになった。
「詳しいことは転校生が話をしてくれるから、騒ぐなよ? …どうぞ?」
教室のドアが開いた瞬間、男子も女子も黄色い声を上げた。
…そこには、とびっきりのイケメン…シルバと、とびっきりの美人…イヴ。
…イヴ…そんなに頭良かったっけ?
「はい、静かにしろー。じゃあ、一人ずつ。」
最初に声を発したのは、シルバ。
「…【聖魔の翼】、シルバ・エクアトゥールです。…種族はレザール。よろしくな。」
…ああ、【聖魔】もらっちゃった系?
クラスの目線が俺に集まる中、彼は気にした素振りも見せずに俺に対して何かを投げた。
…剣だ。
鞘をつかんでキャッチし、俺はシルバをみる。
「…俺が作った中で最高級の剣だ。」
「おう、サンキュー。」
いったんこれは脇に置いて。
次はイヴだな。
「【断罪の大嵐】、イヴ・ウェヌス・クレタントと申します。よろしくお願いいたします。同じくレザールで、15歳です。」
イヴができるだけ、だれの眼を見つめないようにしてうつむく。
…まあ、見つめた者を虜にできる【龍眼】を持っていたら、その対応というのは当たり前か。
…なんか、俺と話をするときは意図的に切っているのかわからないけど、発動しない。
「…何か質問は?」
「エクアトゥールって、あのエクアトゥール?」
クラスの誰かが、シルバに対して質問。
シルバは、遠慮がちにつぶやいた。
「…ああ。」
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「【聖魔】の名前は許可もらったのか?」
「ああ、ランのそばで行動を共にするって誓ったからな。」
そのかわり得るアドバンテージが、予想以上に大きくてな。とシルバ。
しかし、恐らく本気だろうな、とおもう。
「イヴは? 許可もらえなかったのか?」
「申請していないんです…、…まだ…ですし。」
何がまだなのか…。
俺にはわかりかねるが、気にしないのが基地と判断。
「シルバ、この剣の名前は?」
「浄化の光剣【リディルクレール】。…天上級魔法並の武器を作ってみた。」
作ってみた、で作れるんだな…。
だから天才と呼ばれるんだ。
しかも、それを意図して作るから。
ありがとうございました。
ちなみにイヴが新キャラの中ではお気に入りです。
…に入るのはもう少し後ですが。