評価
最後まで読んでいただければ光栄です!
「なんていうか、クリーゼって魔法使わなくても十分勝てるような気がしたよ。」
クリーゼの戦い方を、決闘の仕方をみて。
俺は無意識につぶやいていた。
彼女の武器は腰につけていた大量の投げナイフだ。
その数、実に十数本。
しかもクリーゼは仕掛けをしてあり、ナイフの柄には細い紐が括りつけられている。
いつでも回収が可能、ということか。
ナイフで狙いを定めるクリーゼの顔は、狩人の顔だ。
いつもの無邪気な笑顔は、片鱗すら見せてくれなかった。
怖いぞ。
『くりねえ、かっこいい!』
「…あの目で見つめられたら?」
『…こ、こわい。』
エレメが円らな目を潤ませる。
…まったく、いつの間にそんな芸当を。
…リンセルの知識か、さすがリンセルあざとい。
でも、可愛いから許そう。
『…えれめも、らんにいたちみたいに…。』
「二足歩行?」
『んー。うん。』
【ヴルム】には、どのくらい成長すれば《人化》できるのか、今度カレルに聞いた方がいいかもしれない。
『できるとおもうけどなぁ…。』
「ここでやるのか?」
冗談じゃない、やめてくれ。
予想からすると、ペドかロリが裸で出てくるだろう。
…クラスの男子が野獣になってしまう可能性がある。
「家でこんど、試そうか?」
『んー。』
ここではさせてくれないのかと、エレメは目をこちらに向ける。
俺の気持ちも分かってくれたまえよ!
『うるうる。』
「ダメだダメだ。我慢しなさい。」
『しょぼん。』
あ゛ー、可愛いなこいつぅ!
さすがリンセルの娘である。…龍だけど。
「キュル。」
ちなみに、龍の鳴き声はダミーだ。
ほかの人は、エレメが人語を分かるなんて思っていない。
それを利用している。
少なくとも、エレメを危険な目に遭わせたくないからな。
それにしても…クリーゼは、魔法さえ使わなければ…。
あれか。
体力はほぼ無尽蔵なんだな。
あのときから、体力増強に努めていたのかもしれないけど。
「やぁっ!」
クリーゼのかけ声とともに、彼女の周りに投げナイフが乱舞する。
…え、あんなに多くのナイフを制御できるのか!?
クリーゼの知らないところ、一個発見。
…俺でも無理なのに…って、俺が驕っている訳じゃないんだぞ?
正直に言って難しすぎるんだ。
ほら、相手の生徒も目を白黒させて、開いた口がふさがらない状態になってるし。
…これからは、クリーゼの評価を改めないといけないみたいだな。
すこし下に評価していた部分もあるかもしれない。
これからは、ちゃんと見よう。
「ラン、高みの見物か?」
「クインもそうだろう…。…変な言い方をするんじゃない。」
後ろから声をかけられる。
…男勝りな口調はあきらかクレインクインだと断定し、俺は後ろを振り返ることもなく答えた。
「となり、構わないかな。」
「おう。」
横を向くと、やはりクインだった。
エレメが、クインの方に足をじたばたさせる。
「ほい。」
「いいのか?」
「…良くない理由がどこにある。」
エレメが、クインのふくよかな胸にダイブした。
…うらやましい。あとで俺もアンセルに頼もうか。
『くいねえ~。』
…別の意味に聞こえなくもないぜ。
しかし、クインは特に気にした様子もない。
「…可愛いな。」
「そりゃあそうだろう、クインの魔力も含まれているんだ、エレメには。」
その言葉に、クインが顔を赤くした。
…はて、何か変なことを言っただろうか。
「…ラン、不意打ちとは卑怯だ。」
「俺何もいってないけど?」
無意識はもっと卑怯だ、とクインは頬を膨らませる。
…はて?
「なあ、ラン。…今日の昼間は空いているか?」
「ああ、リンセルたちと飯を食うのが習慣になっているからな、特に何も指定はしていない。」
もしよければ、とクイン。
「一緒に昼食を食べてくれないか?」
「オッケー。構わないよ。」
クインから誘ってくれるなんて珍しい。
俺は、特に用事を思い出さなかったため承諾の意を示した。
「ありがとう。…なら、中庭で構わないか?」
「構わないよ。…学食じゃないんだな。」
「弁当を作ってみたんだ。…食べてもらいたくて。」
クインの手作りか。
…これは、期待できそうだ。
ありがとうございました!
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