紅龍
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「…孵化…?」
それは、あまりにも幻想的すぎる光景だった。
教壇の上に置いた卵が、赤いオーラを保ち。
ゆっくり、ヒビが卵の…宝玉に入っていく中、内側から光が迸るように充満していく。
この世界の真理を、目の当たりにしたような気がした。
それは結局気のせいなのだが。
特に問題はないだろう。
「順調すぎて、逆に怖いわ。」
「…龍卵の孵化は始めてみたな。…ドラゴンは、飼育しない限り巣で生まれるから。」
これって、俺本当に…。
珍しいことをみているんだな。
「しかも、カメラに写らないんだ。…光がカメラにあわないらしい。」
何年か前に、カメラに写そうとした研究者達がいたらしいが。
光しか写っていなかったんだと。
遮光レンズも役に立たないのだという。
カチッと、ひときわ大きな音がして卵が二つに割れた。
光はすでに、教室中を赤く染めるほどになっている。
教室の外から見れば、怪しげな魔法を発動しているようにしか見えないだろう。
『キュゥ。』
光が収まったとき、そこにあったのは小さな龍だった。
一般的に、俺が想像していたもの…だろうな。
一対の翼と、前足後足。
目はぱっちりしていて愛くるしさを感じさせる。
鱗は真っ赤だが、いくつかほかの色の…鱗も存在していた。
「…誕生、おめでとう。」
俺は、無意識にそう呟いて、頭を撫でていた。
その度に、可愛らしい鳴き声を発する。
おお、可愛い。
「…雌だな。種別は紅龍。」
「あれ? 幼少態は赤龍じゃないのか?」
自然に生まれたらな、と彼は笑う。
「だって、自分の彼女たちにも魔力流させたんだろう? …魔力が特に高い龍は亜種になる。それにしても、どれだけの魔力を与えたのやら。」
3ヶ月、ずっと俺のそばにいたから…。
プラス、リンセルとかアンセルとか?
多いね。
めちゃくちゃそそぎ込んだんじゃないかな。
「まあ、魔力を流し込んだだけ、この子は強いさ。…役所に行って、一度登録してきた方がいいだろう。」
異名つきが拒否られることはないと思うがな、とカレル。
…俺は、自分の手のひらに乗るほどの龍を見つめて、帰る支度をした。
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「生まれたんだぁ…。」
紅龍は、興味津々にのぞき込むリンセル達をみて、何とも思わないようだ。
…自分に魔力を流し込んでくれた人が分かるらしい。
「名前、どうするの?」
これはミレイ。
さすがに、名前が必要か。
「何がいいかね。」
「トマト!」
クリーゼがなんか言い出した。
「…食べるの?」
「じゃあ、ステーキ。」
…クリーゼは没。
何で食べ物なの?
「フォティアがいいです。女性名詞で炎焔です。」
「…言いにくいね。」
アンセルは本を読んでいるからか、難解な単語を言い出した。
…簡単にしてくれないかなあ。
「これ、赤龍の亜種らしいんだけどさ、アンセルとか俺とかみんなが魔力を流し込んだから、亜種の紅龍のなかでもなんかカラフルなんだよなぁ…。」
鱗が赤一色じゃないのだ。
カレルに帰り際聞いたが、分からないと言われた。
「明日、図書館に行って調べてきますね。グレイシアちゃんも協力をお願いします。」
「はい。」
アンセルとグレイシアが探してくれる…と。
「…エレメ。」
クインが呟いた。
「ん?」
「セリシトの言葉で、元素を表す【エレメント】から。…雄雌どっちにも使えるし、いいんじゃないか?」
エレメ…か。
俺的には悪くないけど。
「みんなは?」
「…いいと思うけど。…ステーキ…きゃう!」
クリーゼに軽くチョップをかまして、俺はみんなをみた。
うなずいているから、いいか。
「役所に明日、休んでいくけど。」
「あ、私も行く。」
リンセル…はあれか。
異名追加も一緒に行きたいのか。
「よし。」
明日は役所ですな。
ありがとうございました!